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世界の管理者は人間の生を追求する  作者: 水坂鍵
前章1(第5章):最高神の誕生
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第21話:「電車」

第21話です。


 あっという間に時間は過ぎて、気付けば時は計画がスタートする連休の5日前。俺と(せり)は珍しくカフェで会議をしていた。少しお金に余裕が出てきて、比較的高いコーヒーを飲んでいた。


「それでですね。もう旅行のチケットは確保しましたので、支度だけはしっかりしておきましょうね」

「……そうだな。まぁ、俺も色々と準備はやり終わったから、後は祈るだけだ」


 次に芹が戦う相手は、今までの地神(ちしん)とは一段階格が違う存在らしい。『友人』が言うには、正直勝てるものなのかは分からないという。

 ギャンブルをしているようだが、勝てる可能性が少しでもあるだけで凄いことなのかもしれない。


「あの世の力を手に入れた私は基本的には死にませんが、何かあるかもしれません。それに、御形(ごぎょう)くんは不死ではない」

「ああ。それはそうだ」


 少し不思議な話だが、芹はあの世の存在である『友人』と、地域を治める程度の地神しか吸収していないがかなり能力を得ている。特に不死の能力は、『友人』を吸収するだけで獲得した。『友人』曰く、そもそも普通の人はそんなことはできない、らしいが、それでもそこそこ強く見えた地神(ちしん)たちですら不死ではなかったのである。

 これから芹が戦う相手は人の蘇生の権限を持っているかもしれない。となると、そもそもそんな存在を芹は倒すことができるのだろうか?ただの人間が、そんな絵に描いたような道を進んでいけると言うのだろうか?


「おそらく、私の権限がもう少し強くなれば、御形(ごぎょう)くんも不死にすることができます。その時は、御形くんの意思次第で、私は動くつもりです」

「ああ。頼んだ」


 実際のところ不死というのもよく分からないものだ。確かに芹は普通のことでは死ななくなったが、それでも不老なのか、寿命はあるのかなど、疑問は残る。病気も気になるところか。

 そんな曖昧な状況に、親友1人だけを置いておくというのは変な話だ。


「祈る相手がいないのに、何故か誰かに祈ってしまいそうになるのは皮肉だな」

「そうでしょうか?祈るということは私は悪いことではないと思いますよ。どんな人でも、時に何かに祈っていますよ。きっとね」




***




「……大丈夫か?」

「ダメそうなので、秘策を使います」


 例の地神(ちしん)を求めて俺たちは歩みを進めているわけだが、当然の如く行きの電車で酔っている(せり)は死にそうな顔をしながら「秘策」を披露した。


「……こんにちは。御形(ごぎょう)さん」

「お前……『友人』か?」

「ええ。いろいろ練習していたらこうして完全に人格を入れ替えることに成功したのですが、どうもこれをやると乗り物酔いにならないようで。私は元々酔いませんから、今は奥で待機している芹は無事というわけです」

「なるほど」


 電車の中で急に目の色が変わったり雰囲気が豹変したりしているわけだが、意外と周りには気付かれなかった。


「そういえば、あんたとこんなに面と向かって話すのは初めてか?」

「そうですね。ここまで完全に分離できるようになったのは最近ですから。改めてよろしくお願いします」

「こちらこそ」


 目的の駅に着くまでの35分、会話が弾むわけではないし、電車内だから大声を出すこともないが、思っていたよりは面白い時間を過ごすことができた。


「はい、戻りました。おはようございます、御形(ごぎょう)くん」

「元気そうだな」

「ええ。こうすれば酔わないことに気づいたのは革命ですね」


 駅のホームを出て、階段を登り、俺たちはまた別のホームへと降り立つ。作業のようだったが、目的があるからか心を殺すわけでもない。


「じゃあ、また入れ替わりますね」

「おう」


 ここからは長期離移動だ。高速鉄道に乗ることになる。停車駅も3駅ほどしかなく、芹ではこの3時間を耐えることはできないだろう。


「駅弁買ったのに食べられないのも可哀想だな」

「そうですね。(せり)は旅行自体は好きそうなのに、可哀想ですね」

「まぁ、酔うよりはマシなのか……」


 指定席を購入していたので、俺たちは快適に高速鉄道に乗ることができた。時期的にもあまり混んでいなかったので広々としている。


「ああ、そういえば」

「ん?」

「人もあまりいないですし、面と向かって会ったのも久しぶりです。せっかくですから、『あの世』について語りましょうか」

「お?良いかもな」

「では」


 『友人』は俺に電子端末を渡してきた。俺が受け取ると、自動的に画面がついた。


「『あの世VRツアー?』」

「この前暇だったので作りました。どうせこのようなタイミングはあるでしょうから。画面の指示に従ってください」

「ああ……」


 画面にはいくつかの注意事項と、簡単な操作説明が書かれていた。一通り読むと、俺は画面をタッチして次の画面に移行した。



───

『あの世について』

 私は所謂死後の世界を表すために、あの世という単語を用いた。これはこの世界に存在する単語の中で、比較的意味が高い言葉を選んだということであり、場合によっては別の単語で表す者もいるかもしれないということは予め記す。

 その上で話を進める。

 まず前提として、この世で死んだ人間は、まず「水」という場所に送られ、そしてその後死神が「あの世」へと送ることになる。

───



「……『水』?」

「『水』というのは、簡単に言えば死んだ直後に一時的に送られる、魂が浮かぶ空間、とでも言えば良いでしょうか。なんとなく水中にいるような感覚があることから、『水』と名付けられました」

「……」



───

 さて。

 では送られた先、「あの世」というのはどのような世界なのか。

 私も全てを理解しているわけではない。

 ただ、私なりに解釈するならば、それは「地獄」にも近いものだろう。

 「あの世」には「王」と呼ばれる最高権力者、最高権限者が存在し、実質的に「あの世」の他の存在というのは「王」に従うだけの歯車でしかない。

 「王」は「この世」における「神」に相当する。「この世」の権限は「王」は持たず、「あの世」の権限は「神」は持たない。

 世界は「この世」と「あの世」の権限バランスによって成り立っている。

 以上が基礎である。

───



(せり)から聞いていた内容の補完になってるな、助かる」

「それは良かったです」

「それで、ここからは画面で実際の景色をお見せします。まぁ、あくまで私の記憶の中にある風景を写しただけに過ぎませんから、今は少し何かが変わっている可能性はありますが」


 『友人』が電子端末を少し操作すると、画面上に3d表示の風景が映し出された。電子端末を指で操作することで、視点を移動することができる。


「駅?」

「はい。あの世には駅があります。それからバス停もありますよ」

「なるほど……」

「不吉の象徴ですがね」

「何?」

「何でもありません。そして、その先にあるのがただの荒野です。驚くことに、本当にあの世というのは退屈で、何の希望もない場所です。私は芹を介してこの世に降り立ってから、もうあの世には戻りたくないと思いました」


 ふふふ、と『友人』は笑った。その顔は少しだけ(せり)に似ていた。

お読みいただきありがとうございます。

忙しすぎて文章を丁寧に書く時間がなかったため、これから書き直すかもしれません。

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