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世界の管理者は人間の生を追求する  作者: 水坂鍵
前章1(第5章):最高神の誕生
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第19話:倫理観の欠如

第19話です。島編は完結です。


「……だから……その戯言を辞めんかぁぁ!!!!!!!」

 爆発したように、ついに男は(せり)さんに近づき、胸ぐらを掴んだ。

 それを見て嫌な想像をした私は、思わず目を瞑ってしまう。


「落ち着いてください。大人でしょう?」

 しかし、落ち着いた(せり)さんの声を聞いて再びそっと目を開けた。

 対峙する2人は、身長差と雰囲気のせいでまるで保護者と子のようだった。


「貴様………」

「もう一度言います。落ち着いて下さい」

 男の目は充血し、今この瞬間に(せり)さんに殴りかかってもおかしくなかった。

 彼の中でかなりの感情が渦巻いていることが私にも分かる。

「私があの地神(ちしん)を殺したという証拠をお見せしましょう」


 (せり)さんは男の腕を掴み、少しだけ自分から離させた。

 そして次の瞬間には、(せり)さんの頭が、忘れたくても忘れられないあの化け物の姿になった。


「…………っ!?」

「どうでしょうか。私はこの地神(ちしん)を捕食しましたから、それを再現することができます。普段は何の役にもたちませんが。こちらにも姿を変えることができますよ」


 そして今度は女性の姿に変身した。こちらは先ほどとは違って人間のように見える。私はこの人を見たことがないが、会話の流れ的にこの人も地神(ちしん)なのだろうか。


「捕食して分かりましたが、貴方たちはどうやら、男性の旅行客はこの人間に似た地神(ちしん)に、そして女性の旅行客は虫のような見た目の地神(ちしん)に捧げていたようですね」

「それは……」

「その理由はもう分かっています。単純にこの地神(ちしん)たちの好みでしょう。理解したくはありませんでしたが、この2体を体内に入れることによって、この2体がどんな風に餌を見ていたのかを無理やり理解させられました」


 男の力が抜けた。

 男はその場に崩れ落ち、少しの間全く動かなくなった。




***




 ──事実というのは、基本的につまらないものだ。何かドラマチックなことが起こることはほとんどない。今回でいえばそもそも神がいることが不思議であることは別として、宿の従業員たちの行動は実に単純で、予想通りのものであった。


 この島は私たちの国が今の形をとるよりもはるか昔から秩序が存在した集落であった。

 そしてその秩序を支えていたのは、この島やこの地域一体を守るという名目で人間や他の生物を支配していた土地の神、地神(ちしん)の存在だった。


 さて、この地域の地神(ちしん)は人間と似た姿をした女と虫のような姿をした男で、2つで1つの神である。

 この2人(仮に人と呼ぶ)は『保護』という名の支配の代わりにそれぞれ男と女の生贄を要求した。

 初め人間たちは戸惑っていた。しかしそれを見た神を語る傲慢な2人は自らの権限を悪用し、島をはじめとする一地域に自然災害をもたらした。


 初めは雨を降らせ、洪水と土砂災害によりこの島と、そして()()()()()()()()()()()()()()()()()の住民を脅した。

 そして結果として、その脅しに対して当然ながら屈した者と屈しなかった者がいたわけだが、屈しなかった者たちが住んでいた島を、見せしめとして2人の神は沈ませることにした。

 簡単な地形の変動によって、小さな島は軽々と人々が生きたまま海に沈んだ。それを遠くから見ていた他の島の住民は恐れた。昔からある程度の交流があった島の集まりであっただけに、非常にインパクトがあった。


 多くの島の住民が恐れたタイミングで、神2人は再び人々に生贄を要求した。

 今度は人々はまるで人が変わったかのように喜んで子供や美しい見た目をした大人を提供した。捧げられた生贄は神2人が言った数を遥かに超えていた。


『良いだろう。島を守ってやろう』


 そう言って2人は喜んだ。

 そして今度は祈るための場所を作るように要求した。

 人々は仕事を忘れ、喜んでそれを作った。


 祭壇が完成すると、毎日人々は祈りを捧げた。

 気付けば100年が経過し、それが島の伝統になっていった。

 捧げられる生贄も、神が言う前にどんどん捧げられるようになっていく。こんなことをしていたら、人口が減少するように思えるが、人々はとにかく子供を産み、地神(ちしん)が一応災害をためにそれを利用して繁栄していった。


 途中でいくつかの島がそれを止め、沈められた。そして最終的に残ったのは、この島だけだった。


「しかし、もう一度文字に起こしてみると、随分と倫理観が欠如した地神(ちしん)ですねー」

「まぁ、そうだな。聞いていて気分は良くなかった」


 文明が発達し、観光という概念が広まった。

 それがこの島の転換点となる。

 島の住民の1人が、『そうだ、これなら、この島の人間以外も生贄に捧げられるじゃないか』と、人口減少問題が社会問題になる中で思いつく。ある意味でそれは必然だった。


 当然だがやり過ぎるとバレることになる。難しいバランスの中で、途中島は権力も巻き込む形で生贄を集めていった。現在ではオカルト的要素によって島への観光は以前ほどない一方で確実に少しずつ人を集めることに成功していた。

 もちろんこんなことをしていて何故本土で行方不明者問題が起こらないのかと思うだろうが、流石に多くの行方不明者が出てしまったら権力だけではどうにもならないため、時期を見定めることは欠かさなかったという。

 情報社会が突入してからはやりづらくはなっただろうし、もしも俺たちがこの島にやってこず、このまま後何年も続けていたらもたなかったかもしれない。そのくらいに綱渡り状態を続けていたということだ。


 どうだろうか?本当につまらない、ただただ不幸な人間が狂い、そして罪のない人間が死んでいくだけの真実だった。


「まぁ、これからは色々とできそうですから、面白いことになりますよ」


 そして今日より、島の住民はまた別の意味で倫理観が欠如した、神に対してのみ攻撃的な1人の人間に支配されることになる。

お読みいただきありがとうございます。

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