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世界の管理者は人間の生を追求する  作者: 水坂鍵
前章1(第5章):最高神の誕生
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第12話:湿

第12話です。


「ああ、これは良い」

「……何か変わったのか?」

「私の権限が少しですが増えたようです。詳細は後で纏めます」

「そうか。体調は問題ないか?」

「ええ。思っていたよりも体に負担はありませんでしたね。『友人』が中にいるのも関係しているかもしれません」


 無事に地神(ちしん)を体に取り込んだ(せり)は少しよろよろとしながら「一旦この祭壇を観察してみましょう」と言ってトコトコと歩き出した。


「……ん?」

 俺もそれに同行し、壁に埋め込まれた祭壇の左右を何度も行き来した。

 すると、祭壇の中央部にある俺たちが一瞬寝かせられた直方体の下部にほんの少しだけ異なるタイルが張られていることを発見する。


「ボタンでしょうか?」

「そうかもしれないな」

「押してみましょうか、せっかくですから」

「嘘だろ?」


 (せり)はなんの躊躇いもなくその部分を指で押し込んだ。


「お、やりましたね」

「こんな古典的な仕掛けって存在するのか」

「奥へ行ってみましょう」


 ボタンを押したことで何か信号が送られたのか、綺麗に壁に亀裂が入り、壁の奥に通路が出現した。

 俺たちは少し早足でその通路を歩いた。通路は思っていたよりも長く、通路の先に辿り着くまでまあまあの時間がかかった。


「……おや」


 そして現れたのは、先ほどまでの豪華な空間とは違ってかなり老朽化に老朽化を重ねた木質の巨大な空間だった。

 空間はじめじめとしており、臭いも良くない。

 まともに管理されていないことは明白だった。


御形(ごぎょう)くん、ここにもありますね」

「埃被ってるな」


 この巨大な部屋にもまた、先ほどの部屋と同じように祭壇があった。そして同じく中央には直方体がある。

 その祭壇は埃を被っており、使用されているようには見えない。元は先程の部屋の祭壇と同じに見えるが、管理状態は部屋そのものと同様に大きく異なっていた。


「タイルを張っているようですが、汚水が染み込んでいますね」


 (せり)がさっと指で祭壇の中央にある直方体をなぞると、指にぬめっとした黒い液体が張り付いた。

 正直、もしもこの上に寝かせられそうになったとしたら、俺は寝たふりをやめていただろう。


「これは……なるほど。興味深い」

「……本当に気持ち悪い空間だな」


 俺も何ヶ所か触ったり、撮ったり、色々としたが、この空間にいたくないということだけしか分からなかった。


御形(ごぎょう)くん、これを見てください」

「ん?」


 (せり)が指差したのは、直方体の左横の地面。そこには緑色の乾燥した何かがくっついていた。


「これはおそらく、生者の跡と、それを食した者の跡が混ざったものです」

「……は?」

「この場所で、おそらく攫われた誰かが、この場所の主……そう、地神(ちしん)にやられたのでしょう」

「……根拠はあるのか?」

「ええ。いくつか。しかし、一番の証拠は、私が新しく獲得した権限が、この地に地神(ちしん)がいることを訴えかけていることです」


 (せり)がそう言い終わったその瞬間くらいのこと。

 俺は嫌な感じがして、咄嗟に前にいた(せり)を押し倒すようにしてその場に伏せた。


 シュッと、聞き慣れない音が鳴り響く。

 俺たちがさっきまで立っていた場所を、変わった形をした矢のようなものが通り過ぎるのが見えた。


「……おや」

「誰だ!」


「お前、何で生きている?」


 男はこちらへ小さな弓のようなものを向けていた。

 矢を放ったのは、どうやら先程俺たちを攫った男の1人らしい。


「『何で生きている?』ね。そもそも何でそんな質問が出るのか。何か心当たりでもあるのか?」

「…………………」


 男は目を限界まで開き、その目は充血している。

 歯をカチカチと常に鳴らし、弓を握りしめる拳にはかなりの力がかかっている。


(せり)、どうする?」

「そうですね。もしかしたらこの人は悪い人ではないかもしれませんから、御形(ごぎょう)くんに任せても良いでしょうか?」

「分かった。なら話は早い」


「……………あっ!!!!?」

「少し寝てろ」


 俺は自分なりに自由に動き、男の意識を飛ばした。(せり)が俺に任せたということは、手加減をしてほしいということだ。

 芹は強いし、ほとんどの相手に勝つことができるだろうが、戦闘においての手加減は苦手だ。


「ありがとうございます」

「で、これ、どうするんだ?」

「そうですね、この人も連れて行かないといけませんし、そもそも私たちが今戻っても居場所はなさそうですからね。まぁ、荷物は取りに行きますが」

「捨てられてたりしてな」

「その可能性もありますね……………おっと」


 ──────。

 俺たちの会話に、どこか不気味な音が紛れ込んだ。

 それは声にも聞こえるが、少なくとも俺はそれを言語としては認識できなかった。


御形(ごぎょう)くん、例の存在がきますよ」

「分かってる」


 それは突然現れた。

 空間を切り裂くようにジメジメとした部屋の一部が割れ、そこから3mほどの大きな化け物が這い出てきた。

 化け物は見た目で言えば虫に近いのだろうか。この世のものとは異なる姿に思える。


「───疎かな人間共よ。何をしにここへ来た?」

 そして化け物は俺たちに語りかける。その口調は俺の想像よりはゆったりと、堂々としていた。


「始めまして、私は石山芹(いしやませり)と申します。貴方は地神(ちしん)で間違いありませんか?」

 そしてまた、こちらのリーダーの口調も穏やかなものだった。


「私の存在を聞くか。そうか。確かに、私はこの世を治める神である。こちらの質問に答えずに質問をこちらへ投げてくるその命知らずな行動は賞賛に値する」

「それはどうもありがとうございます」


 (せり)は無防備に一礼をする。彼には恐怖心というものがなかった。


「よく分からない人間だな。まぁそれは良い。人間よ、ここに来たからには、お前は覚悟ができているということか?」

「覚悟?ええ、そうですね。覚悟ならば最初から」

「そうか、ならば、ただの塵になって死んでもらおう」

お読みいただきありがとうございます。

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