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世界の管理者は人間の生を追求する  作者: 水坂鍵
前章1(第5章):最高神の誕生
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第9話:第一段階としての地神

第9話です。


「さて御形(ごぎょう)くん。私たちは晴れて休みを手に入れたわけですが、行きたいところがあります。着いてきてください」

「はぁ……分かったよ」


 大学を卒業し研修医を経て、医者として活動し始めて2年が経ち、俺と(せり)は漸く纏まった時間を手にすることができた。そして俺も気付けば28歳、そこそこの歳になっていた。


「で、どこだ?」

「Bという島です」

「は?」

「その島は一部ではBと呼ばれているそうです。その由来は確かでありません」

「ん?」

「その島に、私の目的である地神(ちしん)がいるとされています」

「あぁ……その話か」

「旅行気分で行きましょう。色々と楽しい島のようですし」


 地神(ちしん)──それはこの世界の一部を支配している、『神』の一種だという。『友人』曰く、人類が狙って直接会うことができる『神』は地神(ちしん)くらいしかいないらしい。この世を支配する神はその何段階か上にいるらしいが、(せり)は今回の旅行をそこに辿り着くための第一段階と捉えているようだった。


「楽しい島……ねぇ」


 正直言って、嫌な予感はする。こいつの楽しいとは一体なんなのか。


「行くか。……何日に出発だ?」

 とは言えそんなことを言っていても仕方がないし、(せり)の目標は俺の目指したいものでもあるから、結局ついていく以外の選択肢などないのだが。




***




 船長1人と俺たちを除くと2人しか乗っていない小さな船に揺られ、俺たちは島を目指していた。

 既に都市部を出発して2時間ほどだろうか。未だ目当ての島は見えず、ただただ青い海のみが見えていた。


「………」

「………」


 (せり)はその瞳と同じくらい顔を青くして長椅子に横たわっている。こいつは誰がどう見ても酔っていた。長い船旅で暇なのだが、ここまで苦しそうな顔をしている人間に話しかけることはできない。

 どうしたものかと俺は周囲を見た。客がほとんどいないせいか皆バラバラに座っている。残念ながら交流が生まれそうな気配はなかった。


「はぁ……」


 仕方なく俺はバッグに入れていた本を取り出した。1冊目は先ほど読み終わってしまったから、これは2冊目だ。

 空きに空いている椅子に座って読書をして、時々海を見るのは悪くなかった。出発前に飲み物も買っていたし、船の中にトイレもあるから、思ったよりは快適だった。


「………お」

 そこからおそらくさらに2時間くらい経った頃、俺の視界に黒い塊が現れた。俺は一瞬見ただけではそれを島だと認識できなかった。その姿はまるで自然に現れた異物のようだった。


(せり)、そろそろ着くぞ」

「………ぇ?」

「死にそうだな。死なないのに」

「………ぁぁ、ぇぇ……」

「だめだな、これ」


 死にそうになっている(せり)のことを気にすることなく、船はゆらゆらと揺れながら島へと近づいていく。島はどんどん大きくなっていきその異質な姿が強調される。デコボコとした肌を露出させ、黒い大きな塊を複数無理やり繋いでしまったような姿をしていた。この島には元々数百人が住んでいるのだと聞いたが、見た目だけでは人が住んでいるようには思えない。


「………ん?」

 まじまじと島を見ていたら、一瞬だけ、島の一部が光ったように見えた。それは鏡に太陽光が反射したかのような光だった。もう一度光るのを少し待ってみたが、それ以降光ることはなかった。俺は仕方なく、船が島の端に辿り着くまで船を出る準備をすることにした。


「ほら、準備するぞ」

「ぁ……ぁぃ」


 俺は横になっていた(せり)の体を支え、起き上がらせた。

「……」

 その時、俺は(せり)の体が前に抱えた時よりもさらに軽くなっていることに気付いた。この人間は昔からあまり食事をしていなかったが、最近その傾向が強まっている。おそらく、自分が不死になったことを良いことに食事を疎かにしているのだろう。本当に良くない。


「大丈夫か?荷物は俺が持つから、降りるのは自分でやってくれ」

「……ぁぃ」

「行くぞ」


 大きく船が揺れると、少しして船は島へと到着した。芹の分も荷物を持った俺と、満身創痍の芹は島へと降り立った。

 この時の俺も、そして芹も、この島での出会いが人生を大きく左右することになることを知らなかった。なんとも使い古されたような表現ではあるが、俺の表現力ではこれが限界であったし、結局のところ、これが最善であると思う他なかった。




***




「大丈夫か?」

「ええ。なんとか。やはり陸は落ち着きます」

「そうか」


 島に降り立ったのは俺たちを含めて4人。その全員が同じ道を通り、同じ宿を目指していた。


「山ですねー」

「山だな」

「思ったよりも人がいませんね」

「そりゃそうだろ。こんな不気味な島」


 島には宿は1ヶ所しかないらしい。そしてその宿への道はやや険しい。

 そして何より空気が悪い。

 ここまで都市から離れている、大自然そのものであるにも関わらずだ。


「不気味ですか?私はそうは思いませんが」

「お前はそもそも物を不気味なんて思ったことがあるのか?」

「無いですね」

「そういうことだ」

「なるほど」


 宿までの道のりには事細かな案内があり、案外すぐに宿に到着した。船から降り立ってからざっと30分ほどだろうか。


「おや?これは……かなり新しいですね。木造では無いようですし」

「島の宿って感じでは無いな。偏見だが」

「面白いですね」


 宿はまだ築10年も経っていなそうなくらいに新しさを見せていた。そしてガラス張りの面があり、現代的なビルにも見える。


「入りましょうか」

「そうだな」

お読みいただきありがとうございます。

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