表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
世界の管理者は人間の生を追求する  作者: 水坂鍵
第4章: 学校と戦争と宗教と
67/110

第16話:すれ違い

第16話です。


「私からも質問させてもらおう。戦いを望まないというのならば、なぜお前たちは、私たち人類側の調査員たちが最初にあの星に降り立った時、その全員を虐殺したというのだ」


「…………え?」


「とぼけるか。そうか。やはりお前らは交渉するに値しない。命を尊ぶ振りをして、命を弄ぶ、お前らのような生物が下等生物でなくて何というのか」


「そ、そんな……待ってください」


 キキョウ様の使者様に会談の用意をしてもらった私たちは、やっと直接話ができると喜び、意気込んだ。

 しかし、相手の代表から言葉は、私たちにとって到底納得できるものではなかった。


「私たちがあなた達を虐殺した?そんなことがあるわけが」

「黙れ。証拠はある。映像も残っている。これ以上私たちを苛立たせるな」

「……っ」


 相手の代表は、私たちが最初に人類を虐殺したのだと言った。

 しかし、そんなはずはない。私は最初からあの星で発掘作業を手伝っていたが、そんなことは起こっていない。そもそも、私たちを一方的に殺し始めたのは人類側のはずだ。


 おかしい。何か違和感がある。

 この人は、嘘をついているようには見えない。本当に私たちがそんなことをしたと思っている。

 それに、証拠がある?どういうこと?


「何か勘違いをしていませんか?そもそも……」

「まだ言うのか。本当に愚かだな」

「……」

 私は、部隊長の男の気迫に圧倒されてしまった。少しの間黙り込んだ私の姿を見て、彼はまた誤解を重ねたに違いない。


 私は司会として立っていたセリ様に助けを求めようとして目を泳がせた。

 しかし、それを見たセリ様は少し微笑むだけで、声をかけてもくれなかった。

「……あ……あ」

 私は余計に焦り、嫌な汗を流していた。マイクを通して伝わる声も、情けないものになっていた。

「…………」

 そして、ついに何も言うことができなくなった。この時点で私たちの命運は尽きたのかもしれない。


「スミレ部隊長、大丈夫ですか?」

「……あ……うん」

 そんな中でも、部下の1人が声をかけてくれた。これはマイクを通していないから、多分人類側には伝わっていない。

「落ち着いていきましょう。相手のペースに飲まれてはだめです」

「そう……ですね」

「少し、私も質問しても良いですか?」

「分かりました」


「──マイク変わりました。私からも質問させてください。先ほど、私たちが人類側を虐殺したという発言がありましたが、それは私たちの認識とは異なります。私たちがあの星で作業していたときに、確かに人類側の船が到着しましたが、そもそもそのとき降り立ったのは人間ではなくロボットでした」

「……何?」

 部下の1人が人類側の隊長に真正面から立ち向かった。とてもじゃないが、私には怖くてこんなことはできなかった。


「ロボットたちが、私たちに向かって一方的に攻撃を開始したのです。その間、人間は私たちの前にいませんでした」

「なんだと?そんなはずはない。……良いだろう、そこまで言うなら、『証拠』を見せてやろう」

 彼女が自信を持って主張したことによって、場が少し動いた。人類側の隊長が、後ろから電子端末のようなものを持ってきたのだ。


「これを見ろ」

「あ、映しますね」

「ふん」

 セリ様は男から電子端末を受け取ると、背後にあるスクリーンとそれを接続したようだった。そして数秒後に映像がスクリーンの一部に映し出された。


「そんな………」

 思わず声が漏れる。

 映し出された映像には、私たちビオラ族が、宇宙船から降りてきた人間族たちを拘束し、槍のようなもので1人ずつ串刺しにしていく様子が色までも鮮明に記録されていた。


「………っ」

 私は思わず口を押さえた。映像はあまりにもショッキングであり、戦闘による命の取り合い以上に残酷なものであった。

「これは……?」

 もちろん、私の部下も顔を顰めていた。その映像は、当事者である私たちであっても、本物としか思えないようなものであった。


「これが真実でなくて、他に何が真実であるというのだ?私には、これが捏造されたものには見えないし、そうでないことは検証済みだ」

「こんなことは……ありえない」

「それに、まだ根拠はある」


 男はセリ様に何かを手渡した。彼はそれを一瞥すると、今度はそれを別の機械に通した。


「これは調査員たちの移動データだ。これからも、お前らの行動がよく分かる」


 スクリーンには、調査員たちがどのように動いたかのデータ、そしてその時の健康データなど、動きを完全に捉えるためのデータが揃っていた。

 もはや私たちの言葉など、誰にも響くことはない。事実ではないはずのものが、私たちにすら見れば見るほど事実であったと思えてくる。

 私たちはもう何も言うことができなかった。調査員たちの苦しみが、まるで自分のことのように思えた。


 少しの間、場が沈黙する。

 私は少しでも何か言い返せないか、考えて、考えて、考えて。


 少し脳内で、私たちは話し合った。部下たちの中には、本当にあんなことがあったのではないかと、自分たちを疑う者もいた。


「では、私から少し良いでしょうか?」


 だけれど、最初に声を発したのは私たちではなく、人類でもなかった。


 ―第16話 完―

お読みいただきありがとうございます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ