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世界の管理者は人間の生を追求する  作者: 水坂鍵
第3章:さらなる救済を求めて
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第18話:戦闘科①

第18話です。


「──芹様、ご無事ですか!?」

「蘿蔔(すずしろ)くん。私があっけなく殺されるとでも思いますか?」

「い、いえ……そんなことはないですが……」

「いつも心配してくださってありがとうございます」


 スナイパーから奪ったであろう銃を持って、芹(せり)様が戻ってきた。このお方は相変わらず涼しい顔をしていた。


「色々と分かりました。収穫ですね。後でまとめて皆さんにも報告します」

「わ、分かりました」

「ひとまず病院に戻りましょう。ああ、それとですね、あの騎士団長の方も連れて行きましょう」

「エレンをですか?」

「ええ。おそらく彼女の身が危ないですから」

「……!承知いたしました!」


 私は芹様と共に、話しながら街の中央広場へと歩いていった。

 そうしたら、芹様の予想通りベンチに腰掛けて俯いているエレンの姿があった。


「少々お時間いただけますか、エレンさん」

「………?…………っひ!?」

「おっと」


 芹様がエレンに声をかけると、エレンは飛び起きたようにベンチから崩れ落ちそうになった。

 しかし、芹様がエレンの体を支えたことで擦り剥かずに済んだようだ。


「エレンさん、貴女は今あまり良い状況ではありません。ですから、私と共に来ていただきたいのです」

「………は……は………ひ」

「おや……少し脅かし過ぎてしまったようですね。申し訳ない。失礼」


 芹様はエレンの額に手を当てた。

 エレンは恐怖でぴくりともしなかったが、数秒経って顔色が良くなってきた。


「………は………はぁ………はぁ………私……は」

「少し落ち着くように調整しました。蘿蔔(すずしろ)くん。申し訳ないのですが、私では円滑に進められないかもしれませんので、後は頼みました」

「承知いたしました」


 私は芹様の代わりにエレンに近づいた。幸い、エレンは私には大した脅威を感じていないらしい。そしてそれは正しい。私ではいざ戦うとなれば殺す以外の方法がとれなくなってしまうだろう。


「エレンさん、貴女は危険な状況にあります。命を狙われるかもしれないのです。ですから、私と共に安全な場所に避難してください」

「避難……?」

「そうです」

「……い、いや……私は……国民を守るき、騎士だ。そんな私が……逃げてはダメだ。あ……ああ……なんで……私……こんなに心が弱く……」


 これは……相当だ。芹様の善意と騎士団長としての誇りが混ざって最悪の状態になってしまっている。いや、それに無理やり洗脳を解除された副作用も合わさって余計ひどいことになっているのか。

 しかし、そんなことは今は関係ない。


「貴女が『いいえ』と言おうが、無理やり連れていくことには変わりありません。さぁ、肩を貸して差し上げますから行きましょう」

「……っ」


 私はエレンの手を引いた。

 彼女の手は驚くほどに白く、汗ばみ、冷たくなっていた。




     ***




「とりあえず、寝室で寝かせました」

「ありがとうございます、蘿蔔(すずしろ)くん。……私はどうも、人の心が理解できませんね」


 この世界に降り立った際に芹様が1人で建てたあの病院に、エレンを抱き抱えて私たちはたどり着いた。

 着いてすぐに病院内にある寝室に彼女を寝かせると、私たちは会議室へと集まった。


 会議室には、荒神(あらがみ)・平井(ひらい)の2名もいた。あとは芹様から仮に分離しているご友人もいる。


「皆さん集まりましたね。まず話さないといけないこととして、大きく2つほどあります。1つは、おそらくですが近々私が狙われます」

「……またあの組織関係か?」

「はい。やはりあの人たちは私のことをよく思っていらっしゃらないようですから。そして2つ目は、この国の教育・医療を拡充する準備ができたことでしょうかね」


 ……あの組織?何の話だろうか。


「芹様、あの組織というのは……」

「た、大変です!寝室にいらっしゃった方がいなくなりました!」

「おや?」


 私の話が遮られたが、どうやらそれどころではないようだった。


「お手洗いではなくて、ですか?」

「それが……点滴を無理やり引きちぎってどこかへ……」

「そうでしたか」


 芹様は手元の時計をいじり出した。すると、モニターのようなものが芹様の前に現れた。


「えーと……ああ、なるほど。どうやら『戦闘科』の方へ行ったみたいですね」

「は?何の用があるんだ?」

「多分ですが御形(ごぎょう)くん、彼女まだ勘違いしたままです」

「…………はぁ」

「人間というのは、簡単ではありませんね、御形くん。せっかくですから、行ってみましょう」


 私たち4人は、『戦闘科』のある3階東棟へと向かった。

 この石山病院には、他には普通ないであろう科がいくつか存在する。そのうちの一つが『戦闘科』だ。


 ただ、『戦闘科』とはいっても物騒な科というわけではない。基本的には何かあった場合に備えて戦(・)闘(・)力(・)の(・)あ(・)る(・)人(・)材(・)を配置しているだけだ。

 今回の場合、それが裏目に出たのだろう。


「……エレン、また心を折られていないと良いが……」


 ―第18話 完―

お読みいただきありがとうございます。

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