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世界の管理者は人間の生を追求する  作者: 水坂鍵
第3章:さらなる救済
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第4話:アルバイト再び③

 第4話です。



「──こんにちは!盗賊退治に来ました、院長兼冒険者の(せり)と申します!」


 あまりに呑気な声が響く。

 盗賊が今まさに村人を襲っているというのに、緊張感という概念が声の主には存在しなかった。


「…………あ?」

 盗賊のリーダーは急な出来事にやや困惑気味だったが、ひとまずとばかりに声のする方を見ると、そこには合計5人の怪しい恰好をした人間たちがいた。

 そのうち2人は高身長で、特に1人はかなり体格が良い。一方、残り3人は女子供で見た目上は強そうには見えなかった。

 そして何よりも気になるのは、冒険者と名乗っているにも関わらず、5人がまともな武器を持っていないということだろう。


「イテラの村の皆様と、盗賊の皆様で間違い無いでしょうか!」

 しばらく辺りは静かになった。

 だが、少しすると盗賊のリーダーは怪しげな集団に近づく。


「いやー、なんのことでしょう?私たちは別に盗賊なんかじゃありませんよー」

「おや、そうでしたか?御形(ごぎょう)くん、どう思います?」

「……っ!!!」


 男が仲間の方を向いた隙に、盗賊は隠し持っていたナイフを男の首元に突き刺した。

 だが──


「………は?」

 ナイフは刺さらなかった。ただし、当たらなかったのではない。

 首に当たったナイフが、()()()のである。


「あ、今攻撃しましたね。これで私たちがあなたたちを退治するには十分な理由ができました。ありがとうございます」

「……っ!?」


 盗賊は慌てて後ろに下がる。

 だが、その手には銀色に輝く刃物が刺さっていた。

「あ゛あっ!?」


「とまあ、『冗談』はこのくらいにしてですね。早速本題の方に移ります。御形(ごぎょう)くん、蘿蔔(すずしろ)くん、お願いできますか」

「おう」

「承知いたしました。芹様」


 5人のうち2人が飛び出したかと思うと、一瞬のうちに盗賊全員の視界が奪われた。




     ***




「……すごい」


 白い服の人間の集団の一人は、ナイフで首を思い切り刺されたように見えた。私は血が吹き出るのを想像して一瞬目を背けた。

 でも、目を細めて恐る恐る確認したら、彼(?)から血は一切出ていなかった。

 そして、その人が他の二人に何かを言った後、二人は目で追えない速さで30人はいたはずの盗賊を全員拘束してしまったのだ。


「…………あ」

 気付けば、私は自由になっていた。

 私の後ろにいた盗賊は光る縄のようなもので縛られている。

 それに、先ほどまで蹴られた痛みで動けなかったのに、なぜか動けるようになっている。


「災難でしたね。盗賊たちはこれで全部でしょうか?」

「……っ!?」

 振り向くと、先ほどナイフを地肌で弾いた男(?)の人が私に話しかけてきた。突然のことで驚いてしまった。


「……あ…………そういえばメルたちは……」

 メルたちは、多分盗賊に襲われた。

 でも、今この場には狩猟に出ていたみんなの姿はない。


「あ、あの……」

「おや。なんでしょうか?」

「私の……友達がもしかしたら盗賊に襲われたかもしれなくて……ここに今いないんです」

「そうでしたか。聞いていたよりも盗賊たちは活発に動いているのでしょうか?それならば少し"探索"をしましょう」

「は、はい……?」

 目の前の人の言っていることはあまりよく分からなかった。

 だけど、この後の言葉で、私は顔から血が引いたような感覚に陥った。


「あ。それと。現時点で犠牲者のかたが十名弱いらっしゃるのですが、その中にリーハさんの関係者はいますか?」

「………………………っ………ぅ………う゛…………ぁぁ゛」

 これは私の声?

 心臓が痛い。苦しい。うまく息ができない。


 お父さんは、死んだ。

 この目で見た。

 お父さんから、大量の血が流れていた。

 鉄の臭いが、頭の中に溢れてくる。



「──おっと。これはいけない。どうしても、私は感情だけは上手く扱えないものです……」

「………っ」


 目の前の男性が私のでこに手を当てる。

 そうすると、何故か激情がおさまってきた。


「落ち着きましたか?デリカシーがないもので、申し訳ありません。よろしければ、リーハさんのお父さんがどの方か教えていただけますか」

「……え……?」

「この世には、奇跡も魔法もありますから」




     ***




 私としたことが、またやってしまった。私にはどうしても、人の感情が予測できないらしい。

 ひとまず彼女を私は落ち着かせた。心を安定させるのは得意なのである。


「リーハさんのお父さんがいる場所へ、一緒に行ってもらえますか?」


 私がそう言うと、彼女はやや困惑した表情をしていた。おそらく彼女からしてみれば、なぜ父親の無惨な姿を私と見に行かなければならないのか訳が分からないのではないだろうか?

 だが、今回はそれが必要だった。彼女が、()()()()()()()父親が生き返るところを見なければならない。


 子供達にとって必要なのは、得体の知れない男が連れてきた親ではなく、やはり自分が心から信頼する親なのだ。『()()()()()()()()()()()()』と、子供が思って生きていくことになっては、真の救済とはならない。



 ──遺体はすぐ近くのものだった。鑑定した結果、この人がリーハという少女の父親で間違いない。


「良いですか、リーハさん。この世には、奇跡というものが存在します。まぁ、私はこの呼び方は好きではありませんが」

「…………?…………っ」

 少女は、父親の遺体から目を逸らした。


「私の言うことを信じてください、リーハさん。私は、人を生き返らせることができます」

「………………え?」

「貴女のお父上は、私がこの場で生き返らせます。もちろん、これは死霊術の類ではありません」

「……なにを言ってるの……」

「まぁ、見ていてください」


 私はそっと少女の視線をこちらに誘導した。

 そして、父親の蘇生を開始した。



第4話 完

 お読みいただきありがとうございます。

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