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世界の管理者は人間の生を追求する  作者: 水坂鍵
第2章:異世界と神
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第8話:自由

 だいぶ遅くなりましたが、第8話です。




「──なんで……!?」


 二人が気づいたときには既に、通常であれば永遠に自身の肌から剥がれ落ちることのない奴隷紋が、その手から完全に消え去っていた。


「──これで皆さんは晴れて、普通の人間、エルフ、獣人として暮らすことができるでしょう」


 (せり)は相変わらず、微笑を浮かべていた。




***




 (せり)によって謎の解放を遂げたミラたち元奴隷たちは、しばらく困惑していた。


「……私たち、もしかして……本当に……もう奴隷じゃない……?」


(……奴隷紋を完全に消し去る魔法……?そんなものがあるなんて……)


 この世界における理として、奴隷として奴隷紋を刻まれた場合はその身分が変わることがない、というものがある。それはそもそも主がわざわざ奴隷を解放する理由がない、ということが一つの理由だが、他にも理由がある。


 その他の理由と言うのは、簡単に言えば『体の奥深くまで刻み込まれた奴隷紋は、簡単には剥がせない』というものだ。例え超一流の魔法使いであっても、一度刻まれた奴隷紋を見て分からなくなるレベルまで完全に消すことは普通できない。それは、魔法が得意とされているエルフ属なども同様である。

 そして、仮に紋章を完全に消すことができたとしても、今度は奴隷契約の破棄が不可能であり、やはり奴隷という身分から真に解放されることはない。


 だが現に、元奴隷たちの奴隷紋は完全に消え去っている。隠蔽されているわけでもない。

 そしてなりよりも、ミラが真実の目によってそれを理解していた。


(……私の職業欄から、『奴隷』が、消えた……)



「──ねえ、マイ。あの人たち、何者なのかな?」

 ミラは、少しの恐怖と、少しの興味を抱いた。


「え?」

 だがマイは、奴隷紋が消えたことにより高揚していて、それどころではないらしい。


「……あ」

(そう言えば……私たち、この後どうするんだろう……?)


「……あ、あの!」

「はい、何でしょうか?」

 ミラは芹に話しかける。


「……私たちを、本当に、解放してくれるのですか?」

 ミラは真剣な眼差しで芹を見つめた。どうしてもそれだけは聞いておきたかったのであろう。


 しかし、(せり)の答えは常にミラにとっては予想外のものである。


「──おや?解放するも何も、あなたたちは誰のものでもないでしょう?」

「……?」

「奴隷という身分自体が『異常』だと、()()思います。いや、むしろ、身分という言葉自体、()()好きではありません」

「……」

「これはあくまで数少ない私の考えに過ぎません。ですから、最終的にどうするかはあなたたち本人次第です」

「……」

「あなた達の()は、あなた達のものですよ」



 ──その後。

 全員がそれぞれがこれからどうするべきか、どうしたいのか考えた。

 ミラも、マイも、シンも。他の元奴隷たちも。

 そして決断したようだ。

 それぞれが望む未来のために。





***





「で、結論は、「貴方達の所で働かせて下さい」なのか……なんというか、なんだろうな……」

「そうみたいですね」

 (せり)は病院に帰って御形(ごぎょう)に結果を説明する。


「……まぁ、しばらくは、自由とはいかないだろうからな」

 御形(ごぎょう)は複雑な心境だった。本当ならば全員、誰であっても自分の人生を歩めるはずなのに、何故個人によってここまで差が出てしまうのか。


「ふふっ。別にあの子たちにただ養ってくれと言われたって、いくらでも養ってあげるんですがね。なにせあの子たちはまだ子供です。教育やお金くらいちゃんと用意してあげるのが大人の役目でしょう?養ってと言われなくても養いますよ?」

「……はぁ」

 (せり)の言葉に、御形(ごぎょう)は長い付き合いであるため特に何も思わない。


「でも、本人たちは自立したいようですから、それを否定はしません。もちろん『最大の補助』はするつもりですが。家族とも会いたいでしょうし」


「……お、おう。よし、じゃあ、予定通り()()()()()()

「ええ、そのつもりですよ」

「管理者は誰にするんだ?結局決まってないが……」


「それなんですが、いろいろ考えましたが、『彼女』にしましょう」

 (せり)は真っ直ぐな目でそう答える。

「……まじか」

 しかし、爽やかな芹とは対照的に、御形(ごぎょう)は少し嫌そうな顔をした。

 彼がそのような感情を表に出すのは珍しい。


「何かありましたか?」

「……いや、何でもない。ちょっとな」

「じゃあ早速、神崎(こうざき)さんを呼びましょうか」




***




「お呼びでしょうか、(せり)様」

「その様っていうのやめませんか?」

「……」


 (せり)の前で、一人の女性が首を垂れる。

 彼女の名前は神崎蘿蔔(こうざきすずしろ)。彼女は石山病院の職員であり、(せり)が最も信頼する人物の一人だ。


「まぁ。それはともかくとして。この世界の『支部』の管理を任せても良いですか?」

「はい、謹んでお受けいたします。(せり)様」

「そうですか。では任せました」

「お任せください」


 あっという間に物事が進んでいく。

 蘿蔔(すずしろ)にとって、(せり)は絶対的な存在であり、何も疑うことなど存在しなかった。


「では建設に取り掛かりましょうかね!」


 そして──この日、この世界に、石山病院異世界支部が誕生した。

 お読みいただきありがとうございます。

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