第3話:繁縷
第2章の第3話です。短めです。
「異世界と言えば?」
芹は2人に尋ねる。
「……えっと……?」
真也、思考。
「はい!美味しい料理!」
なずな、即答。
「よぉし、じゃあまずレストランに行こう!!」
芹、即答。
「おい……」
御形のつっこみ。
「お前の目的はレストランじゃないだろ……」
*
(あぁ、もう……だめだ……ミラはきっとあのアベレージ伯爵に…………そしてきっと……いつか私たちも……)
マイは買われるミラを見て、絶望する。
「ふふふぅん、ふ」
アベレージ伯爵は、ミラに奴隷紋を刻むために店の人と一緒に個室へと、向かっていった。
あと少しでミラは本当に伯爵の奴隷になるのだ。もう誰も止めることは……。
そして、僅か1分後─
「どうぞ、ごゆっくりと見て下さいませ」
「案内ありがとうございます」
私たちと他10名ほどの奴隷がいる部屋に、人が入ってきた。
「……!?」
(えっ……、ちょっとまって、あれってヘンサ商会長よね!?商会長がわざわざ案内するほどの客が来たってこと?)
突然現れたヘンサに、マイは戸惑いを隠せない。
それもそのはずで、ヘンサは絶大な権力を持つアベレージ『伯爵』が来たときですら案内などしなかったのだから。
(……どういうこと?まさか王族でも来たの?)
「──さて、みんなで手分けしていきましょう」
(……来たみたいね)
ん…………?
入ってきたのは5人だった。
3人は白衣を着ており、2人は変わった服装をしていた。
(あの服……研究者?)
この世界には、治癒魔法があるため医者という職業はない。そのため白衣といえば研究者だと思うのが普通だった。
(……王族直近の研究者とか?取り敢えず王族そのものではなさそうね)
そのように考えていると、1人の男が私たちのいる檻の方へとやってきていた。その男は特にこれといった特徴はない。普通の男だ。
男は私たちの檻の前へ来ると、私たちのことをじっと見つめてきた。私たちは思わず目を逸らしてしまったが、男はずっと私たちを観察していた。
そしてそのままの状態が3分ほど続くと、男は何かぶつぶつと言いながら考え始めた。
「うーん……、この子たちは……ぶつぶつ」
(一体何を考えて…………)
マイは、一つの可能性を導き出してしまった。
(そもそも何故研究者が奴隷を買いに来たの?もしかして……)
『人体実験』。
そんな言葉がマイの頭の中に現れた。
(まさか……人体実験のために……奴隷を買おうとしている!?)
実際のところ、この国では研究者が実験のために奴隷を買うことがある。大抵の場合買われた奴隷は使い潰され捨てられることになるわけだ。
そのため研究者は、奴隷にとって買われたくない買い手ランキングトップ3に入るだろう。それでもトップ3なのだが。
(──ってことは、買われたらほぼ間違いなく死ぬってことじゃない!?……しかも、楽になんか死なせてもらえない……。……絶対に買われないようにしないと……!)
─さらにその10分後─
「石山院長、大体終わりました!これからどうしますか?」
私たちが入れられている檻のすぐ近くにいた男が誰かに大声で話しかけた。
「あっ、分かりました。流石ですね繁縷くん。今行くから少し待っていてください」
「了解ですー!」
どうやら、私たちの目の前にいる男の名前は『はこべら』というらしい。
変わった名前だ。外国出身の人だろうか?
まぁ、そんなことどうでも良いんだけど……。
「さてと、石山院長が来るまで暇だな……、何してようかな」
―第3話 完―
お読みいただきありがとうございます。
pv、ブックマークありがとうございます!できるだけ更新していきたいと思いましたのでよろしくお願いします。