第25話:力を持つ者の最期
第25話です。
「さて、御形くん。ちょっと相談が」
「何だ?」
「今回、私たちは緑の地神と戦いましたね」
「そうだな」
「その際予想よりも割と簡単に勝ててしまい、しかも聞いていたよりは彼は好戦的ではなく、積極的にこちらに向かってくることもなかったわけですね」
「まぁ、そうだな」
「あの後いろいろ『友人』と話し合っていたのですが、どうやら少しまずいことが起きたかもしれません」
「何?」
休憩中、芹は俺にコーヒー缶を渡すと、割と真剣な顔で話し始める。
「あの緑の地神は、『友人』が知っていた地神ではありませんでした」
そして、割と計画に支障が出そうなことを言った。
「おそらくですが、『友人』が認識した時に地神であったその神は、今はより上位の存在となっています。それも、世界全体を管理する地神、もしくは──地神を超えた神です」
「昇格したってことか?」
「ええ。これを見てください」
「……なんだこれ」
芹は俺によく分からない20cmほどの直方体を手渡した。直方体は白色で、上部に黒いスイッチのようなものと4つあった。
「この前の緑の地神と協力して作成しました。これの電源を入れると……」
『…………あ、どうも』
「これは…」
「このように、機械の上に話している人物の姿がリアルタイムで映し出されます。まるでその場にいるかのように映像通話ができるわけです」
「すごいな」
普通に考えて、光を映す壁のようなものが必要に思えるが、この機械は映す壁も必要ないらしい。どうやって空中に映像を留めているのか、非常に気になるところではある。
『凄いでしょう。私の技術力の高さをもっと讃えてください』
緑の地神は、少し自慢げな表情をしていた。
「彼は移動が嫌いだそうで、『基本何かあれば全部この映像通話でやってくれ』と言われました」
「……なるほど」
確かに、あの地神がバスと電車に乗って移動する姿はあまり想像できない。
いや、地神ならばもっと簡単に移動できるか。
『それでさ。その友人ってやつが言ってる神は、多分特徴的に、私の前に地神をやってた神だね。地神はその支配領域は基本的に変わらないんだけど、まぁ偉くなることはたまにあるよ。今回の場合は、枠が空いたのが原因だね』
「枠?」
『うん。地神の最高到達点は世界全体を上から管理する地神なわけだけど、確かね、前にその地神が消えたんだよね。それで一部に繰り上げが起こった』
「待て。神が消えることなんてあり得るのか?」
『あるんじゃない?神だって嫌になることはあると思うよ』
「……嫌になる?そんな出家したい神みたいな」
『色々あるんだよ。永遠の命、絶対的な力を持った時、普通はだんだんとおかしくなっていくものだから。御形くんもこれからおかしくなっていくんじゃない?不死になったんでしょ?』
なるほど、と俺は少し考えた。
きっと、もしも俺がただ1人で、力のためだけに不死になったとしたならば、もしかしたら寂しさで心を壊してしまうかもしれない。あるいは、何故自分が不死になったのか分からなくなってしまうかもしれない。
「確かにな。芹が先に不死になってなかったら、きっと俺も壊れていただろうな」
『へー。君本当に彼のこと好きだねー』
「まぁ、そうだな」
『弄りがいがないよね、君』
こいつが言っていることはさておき。
結局のところ、俺たちはやはり高いハードルを超えなければならない。
「ちなみにだが、俺たちはその昇格した地神に勝てると思うか?」
『無理じゃない?』
「その根拠を聞いても?」
『根拠、というか。普通は勝てないから。最下層の地神でも普通人間は勝てないし、ましてや今世界全体をを支配する最上位の神になんて勝てるわけないだろ。『勝つ』っていうものじゃないんだよそもそも』
緑の地神は少し呆れたように俺たちを見ていた。
『正直、私だっていつ消されるか分からないね。あの神は多分いつだって全員を見ているよ。そしていつだって消すことができるんだ。消されていないのは、神様の優しさだね』
「弱気だな」
『流石に力が違いすぎるからね。無条件で存在を消すことができるのは最上位の神だけだよ。私も一応国単位で管理する立場ではあったけど、それでも大体国の数くらいはいるわけだから、私たちがそれぞれ好き勝手やってたら世界が滅んじゃうだろ?』
「そうか。意外と神も縛りがあるものなんだな」
この活動を始めてから薄々気付いてはいたが、少なくともこの世界の神たちは、その多くは人々が思い描くような超越的な存在ではないのかもしれない。
俺たちが求めるような、所謂究極の存在は、これから戦うことになる最上位の地神か、もしくは──神か。
***
「さて、夜ご飯にしましょうか」
「おう」
緑の地神との会議を終えた俺たちは、芹の家で夕飯を作っていた。今日のメニューはご飯、味噌汁、サラダ、白身魚だった。ここ最近は俺が料理することが多い。なぜならば、こいつ1人だとほとんど何も食べないからだ。いくら不死だとは言っても、以前のように心配になる程痩せ細っている芹の姿は見たくない。
「……………ん?」
「何かありましたか?」
「いや………何か………ぐっ!?」
その痛みは突然のものだった。一瞬で何も考えられなくなるほどの激痛。俺はしゃがみ込んで頭を抑えるが、普通ではない痛みに耐えきれずそのまま床に倒れた。
「……御形くん?」
「…………ぁ」
(なんだ……体調を崩したか?栄養バランスは気にしていたし……ここ最近はそこまで残業もしていなかったはずだが……。そもそも俺は今、不死になっているはずだが………)
俺は不死になった後、それを確認するために色々と実験を行い、それをしっかりと確かめた。ただ、それが病気に効果があるのかどうかだけはあまり検証できていなかった。
(……いや……だが……これは……おかしい。明らかに……体調不良ではない)
これはただの体の不調ではないと、俺の体が叫んでいた。この不快感は、内からのものではなく………外からのものだ。
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