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世界の管理者は人間の生を追求する  作者: 水坂鍵
前章1(第5章):最高神の誕生
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番外編6:第12神世界の端で

番外編6です。


「……おや」

「何かあったか?」

「どうやら、物語が紡がれているようです」

「は?」


 今日も、病院内のとあるモニターを確認していた(せり)が何かを見つけたらしい。

 物語が紡がれているとは?


「12神世界に行きましょう、御形(ごぎょう)くん」


 芹は早速荷物の用意を始めていた。

 いつの間にか俺も行くことになっているらしい。


「12神世界?……ああ、そういえばお前と12神は割と仲が良かったな」

「別に仲は良くないと思いますが」

「お前神たちと話すことほぼないだろ。少しでも話すことがあるだけで神の中では仲が良い方だ」

「確かにそうかもしれませんね。彼女は比較的きちんと世界を管理していますから。報連相ができる神は本当に少ないですからね」


 少し納得したように芹は頷いた。

 実際芹は、多くの神がいるにも関わらずその殆どとは基本的に話すことがない。芹の言うとおり報連相ができない神が多いことも理由の一つだが、その他にも理由は数多くある。

 例えば、神たちの中には芹に敵対する勢力がいる。芹の前の最高神を慕っていた者たちは、基本的に芹を憎んでいる。ある意味ではそれは正しいのかもしれない。その者たちからすれば、ある日突然信仰の対象を殺されたようなものだからだ。一応芹にある程度従っているのは、その者たちに全く勝ち目がないほどに芹が強いからでしかない。

 その他の理由で言えば、「基本的に報告書を使ってやり取りするだけで済むから」というものや「そもそも芹本人が『神』という存在が嫌いだから」というものがある。どんな者も救おうとする心優しき神である芹は、『神』の前でのみその姿を変え、刺すほどの冷たい目で彼ら彼女らを見る。まずその視線に耐えられる者しか、芹と一対一で話す気になどならないだろう。


「準備できました?」

「まだ1分くらいしか経ってないだろ。待ってろ」

 俺は芹の無茶振りに答え、3分で用意を終えた。


「で、今回は何があるんだ?」

 ゲートを抜けると、すぐに12神の世界が目の前に現れた。ああ、そういえば、この世界は俺たちが元々いる世界とは少し構造が異なっている。しかもこの世界の元ネタはゲームだったか。12神が今の12神になってから、随分と変わったものだ。


「英雄様が、大虐殺をしてしまったようです」

「何?」

「困ったものです」


 芹が説明するに、最近この12神世界に、異世界からの英雄が召喚されたという。全員癖がとても強いようで扱いが難しそうだ。まぁ、召喚した側にも色々と問題がありそうだが。


「そのうちの1人が、面白い能力を持っているようです。『ゲーム感覚』というものらしいです」

「ほう」

「なんでも、殺した相手がゲーム内のように光となって消えるらしいですよ」

「なんだそりゃ」

「まぁ、本人の中で、だけですが」


 それを聞いただけで、今回俺たちがこの世界に来た理由が分かった気がした。


「本来であれば、もう少し経ってから来るところでしたが、この世界のレポートを書くついでです」

「なるほど……」


 俺は大人しく芹についていった。そしてたどり着いたのは、ケース帝国という名前の国の都から少し離れた山。

 その比較的開けている山道には、あまり良い気分のしない環境が広がっていた。


「……これは」

 ぱっと見ではゴミも特になく整備されているように見えるが、少しだけ道から外れると、既にこの世のものではないものたちが隠されていた。

 その者たちは、全員同じ仮面を被っていた。

 そして、その者たちのほとんどは元の体の形を保っていなかった。


「ざっと100人でしょうか。見てください。この子なんて、奴隷身分です。私はもう随分と各世界から奴隷身分を抹消するように各世界神に言っていますが、未だ改善されない。12神に関しては多くの神とは違って話はできますが、彼女はゲームが好きすぎるようだ」


 神のことを語っているときの芹には、いつもの穏やかさがない。彼の理性の全てが神たちを軽蔑しているのかもしれない。


 芹は昔、「やはり私が全てやってしまった方が良いのでしょうか。少なくとも、仕組みくらいは。神と人間に任せるべきではないのでしょうか」と何度か俺にぼやいていた。

 芹は芹なりに悩んでいるのだろう。自分がどこまで世界に干渉するべきなのかを。個を尊重しようとするからこそ、時に個を尊重できなくなることもある。


「とりあえず御形くん、この人たちを救います」

「おう」

 道からどけられ土の中に雑に捨てられている者たちを、俺たちは丁寧に元の姿へ戻していく。幸いなことに、この世界の存在たちは割と簡単に蘇生することができる。わざわざあの世まで深く潜る必要はない。


「これで全員でしょうかね。開いているのは……これですね。『68室のベッドお願いします』」

 5分ほどで全員を蘇生することに成功した。

 この人たちはまだ全員寝かせている。俺たちは病院のベッドへ全員を転送した。


「とりあえず、これが仕事の1つでした。次に、12神に会いに行きます」

「そうか」

 特に何も言うことはないため、俺はそのまま芹と共に12神がいる神の部屋へと向かった。




***




「ふふふふふー!これが!」

「──お邪魔しますよ」

「……ほぇ!?」


 12神は神の部屋でごろごろとしながら楽しく本を読んでいたところ、急に後ろから芹に話しかけられてぎょっとしたようだった。


「…変な声を出さないでください。貴女は神でしょう」

「いや、でも、ここ私の部屋ですし……勝手に入られたら驚きますよ!私にプライバシーはないんですか?鍵もかけておいたはずなのに」

「神にプライバシーが必要ですか?」

「真顔でやばいことを言わないでください!」

「そうでしたか」

「典型的なパワハラ上司みたいになってますよ!」

「パワハラと感じたのなら謝罪しますが、私はそもそも上司ではありません」

「…………」


 2人のやり取りを見て、俺は内心少し笑った。

 芹に対して『パワハラ上司』などと言えるのは12神くらいだろう。そしてそれはあながち間違ってはいない。多少のことではどうにもならないからこそ、芹は神に対して遠慮を全くしない。芹のペースでひたすらにモノを進めようとするから、神たちも大変だろう。


「あ……それで、何のご用で……?」

 12神はやや不安そうな顔で芹を見つめた。彼女的には怒られることを恐れているのだろう。


「質問したいことがあります。主に定期レポートの内容について」

「あ、ちょ、ちょっと待っててくださいー」


 彼女は部屋をささっと片付けた。

 その間、芹はなんとも言えない顔でただ黙って待っていた。


「もう大丈夫です」

「そうですか。では早速。貴方の世界に、最近英雄が召喚されたようですね。その管理はできていますか。それと、世界のあり方について、疑問に思う点が非常に多いのですが、貴女はこのままで続けようとしているのですか?」

「えーと……最高神様?それは、えー、まぁ、この方が面白いかなぁ、と思いまして……」

「面白い?この世界の仕組みでは、()()()()()()()()()()()()ようですが?」

「いやー、えーと。実はそろそろ状況を英雄くんが変えてくれそうなんですよ。人間たちが自分たちで未来を作っていくのは面白いでしょう?」

「英雄………そうですね。ああ。なるほど、おそらく彼ですか?」


 芹はモニターに1人の英雄の顔写真を写した。俺にはこの少年はだいぶ苦労人に見えた。


「ああ、そうです!私、この間彼に『蘇生』の能力を授けたんですよ。彼のお願いで」

「そうでしたか。貴女が言いたいことは分かりました」

「あ、分かってもらえました?彼、最高神様に少し似てませんか?」

「……私に似ている?それは少年に失礼ですから、そのような発言は控えてください」

「あ……すみません」

「まぁ、一応承諾しておきましょう。12神世界を貶めている愚かな地神(ちしん)をなぜ早く消さないのかと思っていましたが、暫く猶予を与えることにします。少ししたら、私はこの世界にまたやってきますから、この時までに世界が改善していることを願います」

「あ、ありがとうございます!」

「じゃあ、また来ますから。今度は油断していないでください。いきましょう、御形(ごぎょう)くん」


 芹はもう用はないとばかりに部屋から出ていく。俺もそれに続いた。


「本当に、彼女はゲームのような世界が好きなのですね。私はそもそもゲームはほとんどやったことがありませんから、何が彼女をそこまで熱中させているのかは分かりません。あんな世界、住んでいる者たちからすれば住みづらい世界でしかないと思ってしまいますがね」

「神なんてみんなそんなもんだろ。自分の好きな世界を作って、その中で小さな存在を観察して楽しんでいるだけのやつらなんだから」


 確かに世界たちを見てみれば、ゲームテイストだったり、ファンタジーテイストだったり、ディストピアだったりと、物語の中にしか登場しないような過酷で生きづらい世界ばかりだ。

 世界は神が望むものになりやすい。それを芹は良くは思っていない。しかしながら、芹が望むような平和な世界もまた、ある意味ではディストピアなのかもしれない。

お読みいただきありがとうございます。

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