少年編その5
今回めちゃぶつ切りに分けて書いてたので少し話がごちゃってるかもです…。
申し訳ないです。
「ん………?」
「エクス!」
目を覚ますと同時にローズに抱きしめられる。
「―――っ!?」
瞬間、走る激痛に声にならない悲鳴を上げる。
「あっ!? ごめん! エクス」
俺の様子を見て俺の体を走った激痛に気づいたのか、ローズが俺の体を離した。
「痛つつつつ………。何だこの痛み………?」
「エクス。覚えてないの?」
覚えてない? なんの事だ? いや、少しずつだけど意識を失う前の事を思い出してきた。確か、ローズに隙ができたと思って一閃を打ち込んだら予想外の二連撃十文字を喰らって………。
「………そうか。俺は負けたのか」
これでイーブンまで持ち込んでいた勝負もまた勝ち越されてしまった。だが、このままに甘んじているつもりは毛頭ない。今回の負けにしたって、俺が見え見えの誘いにわざわざ乗ったりしなければまだ勝機はあったはずなのだ。
「この肩が治り次第今度こそ勝つからな。首を洗って待ってろよ」
今回の模擬戦でローズが十文字を使えるようになったということはわかったのだ。昨日の模擬戦では使ってこなかったということは、俺と別れてからの短い時間で修得したということ。ならば俺にできない道理はない。
「―――?」
そこまで考えて、周りの俺を見る視線に何だか違和感をかんじる………? ローズ? なんでそんな悲しそうな顔を………?
「大変言いにくいことですが………。エクス、あなたの左肩はローズさんの一撃により酷く傷ついています。二ヶ月間は絶対に安静ですし、それが明けてもまともに剣を振れるかどうか………。少なくとも左手を肩以上の高さに上げることはもうできないでしょう」
保険の先生の言葉に一瞬頭が真っ白になる。
今、保険の先生はなんと言った? 俺がもう二度と剣を振れなくなるかもしれない? 振れたとしても肩以上には手が上がらない………?
「ごめん………。本当にごめん………」
ローズの言葉と同時に思い出す。一閃に次ぐ二つ目の連撃である十文字は、一閃の勢いを利用した左冗談部からの袈裟斬り―――つまり、左肩より上に手を上げれなくなった俺には十文字は放てない。
そして―――連撃は全て連動する。
連撃は一撃一撃増えていく度に厳選が一つ増えていくだけ、つまりは二連撃目である十文字を放てない俺は剣王の十連撃どころか、三連撃すら放つことは出来ないのだ。
だが、さっきから一つだけ気になることがある。
「なぁ、ローズさっきから何を謝ってんだ?」
「………エクス?」
「お前が俺に謝ることなんて何かあるのか?」
「だって、僕が十文字を打たなかったらエクスはこんな痛い思いをする事は無かったんだ!」
「は? んなもん避けれなかった俺が悪いに決まってんだろ! あんな見え見えの誘いにホイホイ乗った馬鹿が叩き潰された。それだけの話だ」
「でも、僕が―――」
「ごちゃごちゃうるせぇよ。十文字以降の連撃が使えない? 知るか! 関係ねえ。その程度で剣聖になるのを諦めてたまるかよ!」
「――――っ!」
俺の言葉にローズが目を見開く。
「痛みが引いてある程度動ける様になったら今度こそ勝つからな。首洗って待ってろよ」
俺の言葉にローズはただ頷いた。
「ちっ! 十文字!」
「一閃! ―――ぐっ!」
「そこまで!」
あんなタンカをきっておきながら、俺は現在負け続けている。それも、ローズになら兎も角ローズに手も足も出なかったクラスの奴らにだ。
怪我をしてから二週間が経った頃、保険の先生の治療のお陰もあってか、腕を動かしても痛みを感じることも無くなり、まだ完全に感覚を取り戻せていないものの、剣を振ることは出来るようになった。
しかしながら保険の先生の言うとおり、左手に関しては決して肩より上に上がろうとせずに、十文字を習得するどころか、以前の様に剣を動かせないこともあり、以前では相手にならなかった奴らにさえ苦戦。その上何とか連撃を打ちにくい間合いで戦っても体制を崩し、トドメを刺そうとした瞬間に十文字を打たれて敗北する。
当たり前の話ではあるが、十文字に対して一閃では受けきれていないのだ。
しかしながら十文字をすかそうとしても、俺にはそれしか勝ち筋がないのは奴らも理解している。だから俺がトドメをさそうと動かない限りは奴らも動かない。
しかし、俺から一閃を打っても相手はそれを見てから十文字を打てばいいだけなのだ。
放課後になってただがむしゃらに一閃を振るう。
「くそっ! くそっ! くそぉ―――!」
別に読み合いで負けてるわけではない。
俺の剣は何度も相手の体制を崩している。
身体能力で負けてるわけでもない。
奴等相手にローズを相手にしたときの様な、一瞬でもミスれば負けるような圧がある訳でも無い。
―――なら、なぜ負けるのか。
………簡単な話だ。相手には二連撃があり、俺には一連撃しか無いからだ。
俺が一閃を硬直無しで何度も打つことができない限りは………。
「待てよ? 一閃を連続で?」
馬鹿な話ではある。通常連撃と連撃の間には硬直の時間がある為、普通に一閃を二回撃つ前に十文字のニ撃目が当たり負ける。
だが、もし一閃が硬直無しで二回連続打てるなら一撃目を一回目の一閃でしのぎ、ニ撃目を二回目の一閃で凌げるだろう。
現実的にできるかどうかは別として。
「はっ………! そんなのは今更だろ」
どうせ左肩が壊れていて十文字は使えないのだ。なら、俺にできることは出来ることをやる。ただそれだけなのだ。だけど、そんな簡単にできる事ならば今まで誰かがやってきているはず。生半可な努力ではできないだろう。成功させられるかは別として、訓練には途方もない時間が必要になるだろう。
「は? これからは授業を受けない? 学校を辞めるつもりか?」
少しでも練習の時間を増やす為に授業に出ないと先生に告げたら、こう言われた。まぁ、そりゃあ学校に来ておいて授業を受けないって言われたらそんな答えになるだろう。
だが、俺は別に学校を辞めるつもりはない。折角ある設備を使わないなんてありえないし、親が学校に通うためのお金も支払ってくれている。今ここで辞めてもそのお金は戻ってこないのだ。
ならば、卒業までは利用するに限る。
「正直俺はこの体なので、連撃を前提としたこの授業には現時点ではついていけないでしょう。なので、一人で特訓をしようかと思いまして」
「………確かにエクス以外は皆十文字を使えるようになっている。これではどんなに強かろうと最後にひっくり返されてしまう………か。良いだろう」
先生に許可を得て授業の時間も全て特訓に費やす事が出来るようになった。
取り敢えず次回かその次辺りにご都合主義さんのお世話になろうかなぁとか考えてたり?