少年編その3(ローズ視点)
本日二話投稿しておりますため、前話も確認していただけると幸いです。
「くっ!」
少しずつだけど僕の中に焦りが膨らんできているのを感じる。
力では僕の方が上だ。それは間違いがない。
少なくとも鍔迫り合いに持ち込んだ際に押し切る事はあっても押し切られることは無い。そもそも鍔迫り合いでは不利だと理解しているエクスは、僕との鍔迫り合いは可能な限り避ける。
剣に角度をつけて僕の剣を受け流すのだ。
「はっ!」
「っ!」
速さに関しても僕の方が上だ。剣の速度も動きもそこまで大きな差があるわけではないが、少なくとも僕の方が速いと断言できる程度には差がある。
では、なぜ僕はエクスに押し切られているのか―――。
「っ―――しまっ!?」
「今だ!」
ほんの一瞬生まれた気持ちの緩みをついた一閃が私の体を薙ぎ払う。
「っし。これで千十二勝千十二敗三百二十六分! 追いついたぜ!」
「くっ!」
遂に追いつかれてしまった。しかし、理由は解った。エクスは恐らく目が良いのだ。恐らく私の攻撃のどこかにある癖みたいなものを読み取って最短の動きで防ぎに来る。
お互いに剣は一本しかないんだから、確かに理論上はそれで防げるとはいえ、実際にできるかというとどうなのだろうか?
―――うん、少なくとも僕には無理だろう。
「へっ、この調子なら俺が大きく勝ち越すのも時間の問題だな」
「ふん! 次僕が勝ってまた差をつけてやるさ!」
強がりだ。僕は理解している。このままだとエクスが大きく勝ち越してしまうのは理解している。
―――対策を立てる方法は理解している。要するに初動から実行までのスピードを反応しても関係ない速度にまで高める。もしくは、初動そのものをなくしてしまう。
前者は流石に無理があるだろうし、現実的に考えるなら後者だろうか?
しかし、それでも途方もない時間がかかってしまうだろう。その間に僕とエクスとの間には途方もない差がついてしまうだろう。
だが、僕はそれを許容できない。だから僕は―――。
「ん? ローズか。どうしたんだ?」
「先生。僕に次の連撃―――十文字を教えて下さい」
先生に次の連撃を教えてもらいに行った。
連撃は連撃でしか返せない。だが、今のエクスは一閃しか使えない。次の連撃である二連撃『十文字』はすかされない限りは切り札になるだろう。
「ふむ―――本来ならばまだ早いと一周するところではあるが………お前とエクスなら大丈夫だろう」
そう言って剣を持ち出す先生。
一閃を除いた連撃の習得方法は簡単に言えば素振りである。
その連撃と同じ軌道の素振りを何度も行い、体にその動きを染み込ませる。ただそれを繰り返すだけなのだ。
それを何度も行うことでそれは連撃に至る。
しかし、ただ剣を振ればいいだけではない。
決まった軌道を何度も反復して行わなければならない。少しの角度がずれてもならないのだ。
「では、よく見ておけよ―――十文字!」
先生の言霊と同時に先生の体がブレる。
一閃が振り抜いた後で体が開ききるのに比べて、十文字は途中から体をコンパクトにたたみ、一閃の遠心力を回転力に変換し、袈裟斬りを放つという動きだ。
………これを習得さえすれば恐らくエクスにもそうそう遅れを取ることは無いだろう。
少なくとも、エクスの意識にない一回目には切り札となりうるだろう。
「連撃を扱うにはそもそもそれなりの下地が必要となる。―――まぁ、そんなこと今更言わずとも問題ないだろうが」
連撃はある一定以上の力が無いと発動すらしない。それが筋力なのか、他の条件なのか、実は判明していない。
だが、小さな子供には絶対にできない(そもそも試そうとする人自体少なく、僕の知る限り、僕やエクスくらいのものだ)為筋肉量とかが関係しているのではないかとか言われてたりもする。
「ありがとうございました」
先生にお礼をいい、連撃の習得の為に剣を振る。
そして、次の模擬戦の授業で
「ぐぁぁぁぁぁぁあ!?」
「―――えっ!?」
僕が放った『十文字』がエクスの肩を砕いた。