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『七行詩集』

七行詩 771.~780.

作者: s.h.n



『七行詩』


771.


風邪をひいてしまったとき


また何か 悪いことでもしてしまったのではないかと


横になる度 自分を見つめ返すけれど


どうやっても 自分の目では 全ては見えず


完璧な姿にはなれない


少し休ませ 一度は失いかけた体に


もう一度鞭を打っていくしかないのです



772.


心の隙間を 他で埋めるのではなくて


埋めようと藻掻く その力こそが


今の私には 必要なのです


三日月が 円に戻ろうとするように


欠けた者だけの 強さがある


最も遠く 最も眩しい星である貴方


私には 貴方に向かう力があります



773.


余裕なんてどこにもなかった


今より 若かったあの頃は


迫る別れが怖くて


別れの歌ばかり 書いていたので


出会いも 別れも 再会も


私のための 贈り物だった


私に必要な全てが 今揃いました



774.


通りのカフェの店内から


潔く歩く 貴方を見かけた


こちらに気づかず 足早に過ぎ去ってゆく


貴方は私に 興味もなかった


だからこそ 見つめることが許されたのでしょう


貴方は気づかなかったから


透明傘の内側から 私は空を覗くように



775.


理解させようと 押しつけるのは


まるで暴力のようなことだった


私は自らに手錠をかけ


窮屈な手に 筆を握り


壁に何を描くでしょうか


ある晴れた日に ある雨の日に


こちらに振り向く 笑顔が見たかっただけなのに



776.


指先に怪我をしてしまった


鍵を叩く度 少し痛むようです


これが貴方の手でなくて良かった


貴方が紡ぐ音楽は


いつの日も 途絶えることがないように


窓の向こうの 空に祈っては


痛みをこらえ 私も音楽を始めるのです



777.


来るべき日に 貴方が身に纏うドレスは


誰の手により編まれたのか


誰であれ 最も輝ける 舞台に上る貴方の姿を


思い浮かべたことでしょう


誰もが祝福している 貴方を誇りに思っている


最後の和音を弾き終えた後


貴方はきっと 止まない拍手を聴くでしょう



778.


空を見上げ 大志を抱えた雛鳥にも


ついに訪れる 飛躍の時


いつか私の耳が聞こえなくなっても


天を翔けるような旋律が


貴方の手により 紡がれたのを 忘れないでしょう


その音が 私のもとまで 届いたのを


決して忘れはしないでしょう



779.


君が道端で 泣きじゃくっても


世界は立ち止まらなかった


君は時々 考えすぎてしまうけど


私は見つめることで知った


君は本当に強い人で


世界が雨とともに 泣き叫んでも


君は立ち止まらなかった



780.


たとえば 今日何も起こらなかったとして


明日何も起こらなかったとして


昨日までに起こったことが


変わらぬ距離に 在り続けるなら


何よりその事が大切で


君の影響下での 一日を数えてゆけることが


私の特別な生涯となる





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