5/11
皇太子の興味
意表を付かれた。
本当は、挨拶だけ済ませて公務に戻るつもりだった。
書類の山がその言い訳として十分機能してくれるだろう。
侍女に紅茶の用意をさせ、着席を進める。
彼女は、本と自分を見比べ、残念そうに読書中の本を閉じようと手をかける。
「こちらをお使いください」
慌てた執事が付箋代わりの紙を渡す。
「・・・ありがとうございます。」
「本に挟まれて栞になさってください。」
困ったように執事と紙を見比べる彼女に知って執事が助言する。
「ありがとうございます。こうしておけばページがわからなくならないですものね」
にっこり笑って再度お礼を言う彼女に執事も釣られる。