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革命のエチュード  作者: 佐藤あきら
12/17

エピローグ 翌日・食堂にて

「なんだ、まだいるのか。どこまで身の程知らずなのやら」


 これ見よがしに溜め息を吐く重春しげはるに、大志はにっこりと困ったように笑って返した。

 朝のにぎわいを見せる食堂。大志のぜんの中のものは、ほとんどが無くなった頃合い。

 重春はまたも取り巻きを引き連れて、まるでちょっとした王様のような振る舞いだ。

「躰道部門優勝者だかなんだか知らないけど、その程度で認めてもらえるとでも思っているのかい? 役立たずはなにをしても役立たずに変わりはないよ__うわっ」

 ふっと小馬鹿にしたように笑う重春の顔に、バシャッと水がかけられる。

 苛立いらだたしげに顔をぬぐって犯人を見ると、大志の前の席に座っている銀臣だった。

 その手にはコップが握られている。空になったそれを平然と机に置いた銀臣に、重春は肩を震わせる。

「し、柴尾銀臣……君、僕にこんなことしていいと思ってるのか!」

「いいと思ったからやったんだろ」

「このシャツは君じゃとても買えない高級なものなんだぞ!」

「ただの水だからそのうち乾くって、うるせぇな。食事の邪魔だから早くどっか行けよ」

「こ、の、クソ、覚えておけ……!」

 睨まれて、重春は怒りをそのままに去って行く。取り巻きもご機嫌を取りながら慌てて後を追った。

 ちょっとしたいざこざにヒヤリとしていた食堂の空気は、徐々に穏やかさを取り戻す。

 周りの賑わいにまぎれて、大志はクスッと笑った。

「やり過ぎですよ」

「俺より容赦無さそうなお前ならやり返すと思ったぜ」

物盗ものとりしてた頃なら、ああいうのは良いカモなんですけどね」

 さらっと軍人にはあるまじき発言をした大志に、銀臣も満足そうに口角を上げる。

 それから思い出したようにぷっと吹き出した。

「しっかし、さっきの聞いたか? 『覚えておけ』だって。本当に言うやつ初めて見た」

「ちょ、ふっ、俺があえて言わなかったことを。笑わせないでくださいよ」

 大志も肩を震わせる。なんとか笑いをこらえようとしたが、耐えようとするとますますおかしくなってくる。

 銀臣は堪えようともせず、笑いながら大志の味噌汁を指差す。

「ほら、味噌汁飲め、味噌汁。盛大に吹け」

「やめてくださいって、この位置だと柴尾さんに全部掛かりますよ」

「やっべ、それは考えてなかった」

 笑いながら食事を共にする二人を見て、ほのかは目を何度も瞬かせた。


「なに? なにが起きたの? 男の子ってわからんわー……」

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