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ピクニック!



それから数日したある日の朝ーーー。



ミリスとローティは庭の外で魔法の稽古をしていた。

 ローティはここへ来たときより多少は肉付きが良くなっており、魔法もそれなりに上達している。



「じゃああれやって見て」

「うん……」



ローティは手の中に直径10㎝程の火球を作り出しミリスが魔法で作り出した岩の塊にそれを打ち放つ。

 爆発まではしないものの岩には焦げた後が焼けつく。



「ミリスお姉ちゃん、どう?」

「中々に上達したわね、結構よ」

「へへっ、ありがとう」



ローティは笑みを浮かべる、最初は殆ど見してくれなかったがほんの数日前から時折見してくるようになってきた、これも慣れてきた証だろう。

 ミリスもほぼ完璧に言葉を話せるようになってきた所である。




「それでだけど少し体を触らして」




ミリスはローブ越しにローティの体を触診する。

 平均的に見ればかなりのやせ形だ、しかし以前のミイラのような体から比べれば幾分も増しだ。



「この位ならば連れ回しても平気よね?」

「もしかして遠くに連れてってくれるの⁉」

「約束だしね……」



ローティはやったぁ‼ と飛んで跳ねて喜びを露にする。



「ねぇ、早く行こうよ‼」

「少しまって、身支度をしないと……折角だし向こうでお昼御飯を食べない?」

「うん、食べてみたい」

「なら決まりね、じゃあ持ってく食事の準備をするから少し待ってて」

「ここで待ってるね」



ミリスは家の中でサンドイッチを拵え、手持ちの篭の中に詰め込む。

 それとコップを二つと森によくある赤い果実の汁と蜂蜜と会わせて作ったジュースを竹で作った水筒に入れる。




「これくらいの準備があれば大丈夫よね?」

 



ミリスは荷物を再度確認する、ピクニックを楽しむのに不足するものはないし魔物が出てもミリスがいるのだから平気であろう。



「ねぇ、まだ?」



待ちかねたローティが家の中へと入ってくる、その顔は無邪気な子供のそれだった。




「今準備終わったところよ、じゃあいこうか」

「うん!」



そうして二人は家の外へとでる。




「ミリスお姉ちゃん、それで何処に連れてってくれるの?」

「私しか知らない秘密の場所」

「そこってどんなとこなの?」

「それはついてからのお楽しみ」



ローティは楽しみにしてるね!と嬉しそうにしていた。



そうして木々が生い茂る薄暗い場所を三十分程度歩く、途中幾度か魔物の襲撃にあったがミリスがそれを軽くあしらった。




「もうすぐつくよ!」

「あれ?」



薄暗い木々の生える場所を抜けて開けた場所へとつくとそこは花々が咲き誇る小さな湖の湖畔だった。




「すごい……」 



ローティは今まで見たことの無い景色に感銘を受けているようだった。



「どう? 気に入ってくれた?」

「うん、こんな綺麗な景色見たこと無いよ!」

「それは良かったわ……この湖畔の辺りなら魔物は入ってこないし隙に遊び回って良いわよ」

「本当?」

「本当よ……」

 



ローティはやったぁ‼ と喜び回り辺りを走ったり転がったりしている。

 今まで外に出るときなどローティを閉じ込めていた小屋を掃除するときに鎖で外に繋がれて放置されていた程度である、それを自由に動き回れるのだ、ローティは嬉しくて嬉しくてたまらない。




「森の中には入らないでね!」



ミリスは一応の警告をすると地面に座り込み、暇潰しに自宅から持ってきた魔導書を読み始める。

 ローティはあのはしゃぎようである、すぐに疲れて戻って来るだろう、そしたら昼食にしようと思う。




ミリスは魔導書を読みながらあることをふと思う。



   ローティは文字が読めるのかとーーー。




それは否だろう、辺境の村のまともな教育も受けていない子供である、読み書きが出来る筈がない。

 将来的にはローティはミリスの元を立って人里で暮らして行くことになるだろう、それで文字が読んだり書けたりしないのはかなりつらい。




なら私が読み書きを教えるかーーーと最初は思い込んだが、ミリスの文字の知識は数百年前の物だ。

 言葉は通じている様だが文字が伝わるとも限らない、その場合は町まで下りてローティを寺子屋にまで通わせないと行けないだろう。

その場合はミリスも覚悟を決めなければ成らないだろう。

 彼女のトラウマの根元たる町へ降りなければ行けないのだ。




 暫くしてローティが疲れた様子でミリスの元へと戻ってくる。




「はぁはぁ、僕こんなに走ったのははじめて……」



ローティは嬉しそうに笑みを浮かべる。



「それはよかった……喜んでくれたみたいで私も嬉しいわ」



ミリスは篭の蓋をあける、中には様々な種類のサンドイッチと水筒があった。



「疲れたみたいだしお昼にでもしよう」

「ミリスお姉ちゃん、これは何て食べ物なの?」

「サンドイッチよ、パンに色んな具材を挟んだ食べ物なんだけどね」

「白いパン何てあるんだぁ……」



ローティは不思議そうにサンドイッチを口に運ぶ。



「美味しい……」

「言うと思った」



ローティはミリスの料理を食べるごとに必ず言う言葉だ。

 まぁ今までの食生活を考えれば無理もないだろう。




「ごふっ……ご、ごふっ……」

「そんながっつくからよ」



ローティがサンドイッチを喉に詰まらして苦しんでいるところにミリスはコップに赤い果実と蜂蜜を混ぜたジュースを注ぎローティに渡す。

 ローティはコップを渡されると勢いよくゴクゴクと飲み干す。




「死ぬかと思った……てかこの飲み物美味しい……何これ」

「まぁ果実の絞り汁見たいな物よ」



ミリスはそう言いながらコップに自分の分のジュースを注ぐ。




「ミリスお姉ちゃんて凄いんだね……こんな美味しいものを作れるなんて」

「ずっとここで過ごしてきたからね、暇だったのよ」

「そうだったんだ……」



ローティは二つ目のサンドイッチに手をつける。

 ミリスはまた喉を詰まらせたら不味いとコップにジュースを注ぐ。




   そのときだったーーー。




数メートルはあろうか赤龍が空を切り裂き姿を現れた。

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