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第四章 ケーキを運べ!~パティスリー ララメル 8

 ララメルは、事務所と工場がひとつの敷地に入っていて、外観は、会社というよりもまるで街のケーキ屋さんを大きくしたかのようだった。

 ピンクとオレンジの屋根の下は、チョコレート色の柱が何本も縦横に走っている。

「凄い……お菓子屋さんみたい」

「工場の横で販売もしているみたいだな」

 犬若は既に、「その辺りを見てくる」と別行動をしている。

 そういえば、社会人になってから、自分のところ以外の会社に入るって初めてだな、と少し緊張がこみ上げてくる。

「ようこそ、遠いところをありがとうございます」

 社内に入ると、にこやかに出迎えてくれたのは、濃いブラウンの髪にループタイの、二十代後半と思しき細身の男性だった。明るい表情の下、白いワイシャツがきらきらと輝いており、細かい刺繍でも施してあるのかもしれない。

「白山と申します。桐林さんに、輪道さんですね」

 そのまま、二階にある商談室へ通される。挨拶に顔を出してくれたララメルの営業部と製造部の管理職と少し談笑を交わしてから、私たち三人が室内に残り、今後の具体的な方策を打ち合わせることになった。

「僕と白山さんは既にメールでだいぶやり取りしているんで、そんなに時間はかからないと思うよ」

 桐林くんは営業用のノートと資料を取り出しながら、私にそう言う。

「弊社の商品は、同業他社と比べて、味はもちろんですが見栄えにおいても優位です。最初の導入時にチルド平台で通路へ展開するというのは大賛成です。こちら、社名は伏せていますが、何クラスかの規模ごとのスーパーチェーンでの初回導入実績です。ボリュームとロス計算の材料にしてください」

「白山さん、これから夏の時期ですと、やはりゼリー系が主力になりますが」

「確かにカテゴリとしてはゼリーが増えますが、弊社ですと訴求力があるは柑橘系のムース、何よりプリンアラモードの方が確実ですね。サイズ感の出るパフェも二色ほどあった方がいいです。冬ほどではありませんがチョコレート系も売れ筋なのは年間変わらないので、ラインナップに入れましょう」

 それから陳列の仕方や失敗例の紹介もあり、話がどんどん専門的になって行く。

 難しい話や聞き慣れない用語もあったけれど、実際の店舗での展開をプレゼンされるようで、楽しくもあった。

 そして事前の情報交換がうまく作用しているようで、傍目にもどんどん話が進んでいくのが分かる。

 一時間ほどすると、ヨシツネの顧客のうちどのスーパーにどの商品を提案するか、展開案や販売量の予測まで含めてほとんど決まってしまった。

 白山さんが立ち上がる。

「いや、濃密な商談になりましたね。よければどうです、明日まで待たずに、少し工場を見ていきませんか」

「ぜひ。行こう、輪道」

 私の異論があるはずもなく、三人は商談室を出て、工場へ向かった。

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