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第四章 ケーキを運べ!~パティスリー ララメル 4

 横で聞いていた私は、ついため息をついた。

「へえ……凄いですね。桐林くん、生き生きしてます。私には分からない感覚ですから……」

 すると、蟻ヶ崎さんが身を乗り出してくる。

「何言ってるの、桐林は契約を取ることはできても、商品を作ることも運ぶことも、そして毎日の注文を的確にさばくことも、一人でできるわけじゃないんだから。あなたたちの受発注能力があって、あんなに自信満々にものを売ることができるのよ」

「いえでも、ほとんどの受発注はEOSですし」

 エレクトロニック・オーダリング・システム。ヨシツネだけでなく、現代のデイリー食品のほとんどの受発注は、アナログな電話やファックスではなくデータの自動発注システムでやり取りしている。

「確かにEOSなくして現代の受発注はあり得ないわね。でも、まだ完全じゃない。エラーもあれば事故もある。EOSだけでは対応できない発注もある。人の目なくして成り立っているわけじゃないのよ。機械もシステムも、扱うのは人間で、うちの会社ではそれがあなたたち。頼りにしてるわよ」

 いたずらっぽく笑う蟻ヶ崎さんの隣で、鬼無里さんが苦笑した。

「そうよ、小花ちゃん。あれだけ毎日お昼前に修羅場になってて、人力不要なシステムですなんて言えないでしょ。小花ちゃんの手がなければ、どうなると思ってるの」

 その時、支店長やデイリー課長と細かい詰めをしていた桐林くんが、くるりとこちらを向いた。彼はどうも、このコマのような動きが癖らしい。

「女性陣の皆さん、どうですか、あとのご意見は」

「じゃ、代表して小花ちゃんどうぞ」と鬼無里さん。

「えッ。で、ではそうですね。私、さっき、このケーキが売り場に並んでるところを想像してみたんですけど」

「うんうん」

「今のところ、メガカシワさんやマツドールさんでも、洋菓子の冷蔵棚ってシュークリームやエクレアが多いので……フルーツやカップが鮮やかなケーキが並ぶと、きらびやかになると思います。そんな売り場、見てみたいです。……って、意見じゃなくて感想ですけど」

 それに続いて、蟻ヶ崎さんが、商品一覧を示して言った。

「いいえ、今のはとても有益な発言よ。何より見た目で引き付ける力のある商材だから、店舗への導入時にはチルドの平台も借りて大きく展開しましょう。できれば二個五百円セールとか、買い上げ点数も上げられるように」

「はい。頑張ります!」

 桐林くんが背筋を伸ばしてそう宣言し、この日の会議の主題は締めくくられた。

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