第2話
「ホントかっこいいんだからー!奥村くん、テニス部でしょ、だから…」
大きな瞳をキラキラさせながら語るその姿は、まるでお人形のようだ。
かわいいなぁ、梨沙は。
「すっごい背高いし、髪の毛サラサラだし、とにかくカッコいい」
「うんうん」
「それに奥村君と同じクラスの朋ちゃんに聞いたんだけどね、
すごく優しいんだって。そんなの聞かなくても分かってるけど!!それでね…」
どうやら梨沙は、好きなことに関しては口が止まらない人間なので、それから2時間も「奥村くん」の話を聞く羽目になった。
けど、どれもこれも知ってるコトばかり。
ハッキリ言ってすごくつまんないけど、梨沙は可愛いから許す。
そしてひとしきり話し終えると、決まって最後に言う。
「彩夏、いつものことだけど…協力よろしくねっ!」
「ふふ。うん」
どこまでも純粋な梨沙。ひとを疑うことを、知らないんだ─
「はあー、メールとかしてみたいなぁ」
そう呟く横顔に、罪悪感。
私と「奥村くん」は、
秘密の関係、だから。
帰り道も、梨沙はずっと奥村くんの話をしていた。
バレないようにしなきゃ…と思う。
梨沙とあたしは親友だもん。
こうやって罪悪感を感じて、意外と嫉妬深い梨沙にビクビクしながら生活するのなんて、ホントはいやだ。
でも──
〜ピロリン♪
不意に携帯が鳴った。メールだ。
開いて、送り主を確認する。
そして、すぐに閉じた。
「メール?返さないの??返していいよ??」
「あ…いや」
「え?なに?だれ?!彼氏?!!笑」
興味を持ち始めてしまった梨沙に笑ってごまかしながら、
ホントはヒヤヒヤしていた。
閉じられた携帯。
送り主は、『奥村亮』だった。