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アットホーム アサシン  作者: オノダ竜太朗
転 真実
47/74

暴かれた世界(2)〜実家に帰る!

どうも頭の整理がつかない。

突っ込みどころが多すぎて、何から確認すればいいのかわからない。


ここは探偵事務所。

だが実のところ殺し屋の事務所だ。

殺し屋の社員が集まっている。

ここにいる全員が殺し屋、またそれをサポートする人たちだ。

まだ会ったことのないリトルハンドという呼び名の殺し屋がいる。

澤村はそのリトルハンドに会わせたいと言った。

そして目の前にいるのは、楓だ。

楓は保険外交員だ。

.................................。


どこまでが本当で、どこからが嘘か。

全部、冗談か。

それとも次の依頼人が、楓なのか。

聞きたいことが多すぎて、言葉が出ない。


「シンちゃん。びっくりした?」


「びっくりした、じゃないよ」


「え、じゃあ、もう気づいてた?」


なんだか、おちょくられてるみたいで腹が立ってきた。腹の奥から、沸々となにかが昇ってきた。それが吹き出す。


「おい!お前、殺し屋なのか!なあ、殺し屋だぞ。人殺しだぞ。なにやってんだよ。お前、里穂のママだろ。ママがそんなことしていいのか!いいわけねえだろ!!」


自分でも驚いた。娘に叱る時に大きな声を出したことはあるが、妻にはない。しかも、妻のことを「お前」と言ったのも、記憶が正しければ初めてだ。


「え、なんで?里穂も知ってるよ」


「お前なに考えて......里穂に、ママ人殺してるよ、なんて言ってんのか!」


「違うよ。正義の味方だもん」


「なにを言ってんだ!人殺しは正義の味方じゃねえよ」


みんな知っていたのだろう。他の社員は黙って、このやり取りを、ただ眺めている。1人を除いて。


「えーっ!こいつ姉ちゃんの旦那なの?マジで。じゃあ義兄さんじゃん。俺、こいつに、覚悟が出来てねえなんて、生意気なこと言っちゃったじゃん!」


「ジバンシイ、知らなかったの?」


ミントは小さな声で話しかけていた。


「知らねえよ。俺、聞いてねえもん」


「じゃあ、今日なんで来るの?」


「だって、こいつの入社パーティーだろ。って親父に言われたから」


そうだ、ジバンシイと澤村は親子だった。そしてジバンシイと、リトルハンドこと楓は姉弟..........?........!


「え!?お義父さん!」


俺は澤村の方を見た。澤村はバツの悪そうな顔で小さく、はい、と答えた。


「ちょっと待って、ちょっと待って。どういうことですか?澤村さんは、俺が楓の夫だと知ってて、声をかけてきたんですか?」


俺は澤村に詰め寄った。また、小さな声で、まあそういうことになるね、と答えた。


あー、わかんねえわかんねえわかんねえ。


俺は誰に言うでもなく、大声を出していた。


「じゃあ、ちゃんと聞いて。あのね」


「もういいよ!ちょっと頭の整理つかない!話しかけないでくれ!」


「なに、それ。ちゃんと聞いてよ」


「うるさい!とにかく、俺は帰る!」


「帰るってどこによ」


「里穂連れて、実家に行く!人殺しの子供なんて、教育上ありえない!」


「なに言ってんの。シンちゃんだって、やってたでしょ。シンちゃん、しばらく続けたいって言ってたくせに、アタシがやるのはダメなの?それ、おかしくない?」


おう、ケンカか、やれやれ。ドクターが囃し立てる。


「俺は、まだやるとは言ってない。もう少し居たいと言っただけだ」


「また、ずるい言い訳するんだよね」


ジバンシイが俺と楓の間に入ってきた。


「まあ、まあ、お義兄さん。これから、みんなで仲良くやっていきましょう」


「樹は黙ってて!」


樹、というのがジバンシイの本名だろう。楓がジバンシイを制した。


「ねえ、殺し屋だけど、アタシ、殺してないよ」


「なんだよ、適当なこと言うなよ」


「ちょっと、お父さん。シンちゃんにちゃんと説明してあるの?」


澤村は咳払いをした。


「あのね、アサシン、いや、浅野くん、や、真一くん。これはね」


「だいたい、お義母さんと離婚してるんですよねえ。それも嘘ですか」


「それは嘘ではない。楓が中学の時に離婚している。それでね」


「もういいです。とりあえず帰ります」


俺は事務所を出て、ドアを勢いよく閉めた。



☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆


家に帰ると、旅行バッグに俺と里穂の着替えを手当たり次第突っ込み、実家に電話した。


(あれ、真一。どうしたの?)


「俺、しばらくそっちに行っていい?」


(なになに、楓ちゃんとケンカでもしたのかね。里穂ちゃん、どうするの?)


「里穂も連れてく」


(あらら、本格的なやつねえ。学校大丈夫なの)


「そんなの、どうだっていいんだよ。理由は後で話す」


(いや、いや。けっこう、深刻なやつ。まあいいわ。里穂ちゃんに会うの、久しぶり。気をつけて来るのよ)


電話を切ると、ちょうど里穂が帰ってきた。


「なんで、パパいるの」


「ちょっと都合で、静岡行くよ」


「なんで?学校は?」


「いいよ、パパ学校電話するから。学校はしばらく休もう」


「ママは?」


なんて説明したらいいかわからないし、里穂は知らない方がいい。


「ママは、しばらく仕事で、一緒に来れないから」


「ふうん、まあ、いっか。バアバっ家だね。バアバ久しぶり。メロン、メロン」


無邪気な笑う里穂と、新幹線で実家に向かった。


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