ゲット アップ ルーシー(2)〜睡眠
赤いスポーツカーは首都高速湾岸線に乗り、東関東自動車道から湾岸習志野インターチェンジからすぐのアウトレットパークに着いた。俺たちの少し遅れて後に続いた。駐車場は平日だが、なかなかの客入りで、赤いスポーツカーの近くに停めることができなかった。
平日の高速はトラックが多く、割り込まれたりして何度か見失ったが、GPSもあるし、ジャンクションさえ間違わなければ、追跡することは尾行初体験の俺でもできた。
少し離れた場所に停めることができ、慌てて辺りを見回す。フジコは女優か外タレが被っているようなツバの大きいハットを被り目立ってくれていたので、すぐにみつけることができたが、ダンゴムシが眠そうに目をこすりながら「おしっこ」と言ってトイレに寄ったので、完全に見失った。
そのことを咎めても、ダンゴムシは一切動じない。
「うるせぇなぁ。大丈夫だよ、行き先わかってんだから」
「行き先わかってるなら、こうやって尾行する必要ないじゃないですか」
「予定変更されたりしたら、困んだろ。それよりも、こういうところの便所来たら、1番手前の便器で、絶対ションベンするなよ」
なんだか要点を得ないまま、はぐらかされた。そう言って、剥がれかかっていた絆創膏を直す。
「1番手前はなぁ、急いでら奴か慌てん坊がするから、下が汚ねぇんだよ」
「そんなの、どうでもいいですよ。ここまで来て、撒かれたらどうするんですか」
「大丈夫、大丈夫。どうせ、車まで戻ってくるんだから」
そう言って駐車場まで戻る。額の絆創膏は粘着力が失われ、何度直しても剥がれてくるので、チッ、と舌打ちをして剥がして丸めて、その場に投げ捨てた。額には、瘡蓋と絆創膏のふやけた跡が残っていた。
助手席に座るとまた寝た。
待っている間、赤いスポーツカーの近くのスペースが空いたので、車を移動させた。
5時間くらいして、火村とフジコが戻ってきた。フジコは大きい白い紙袋をぶら下げて、腕を組んでいる火村と歩きながら楽しそうに談笑している。その間、ダンゴムシは1度も起きなかった。
腹が減っているのを我慢している間に、ずっと寝ているダンゴムシと、『執行』のためとはいえショッピングを楽しんでいたフジコに対し、異様に腹が立ってきた。空腹は、怒りを生む。「来ましたよ!」と投げやりな態度をとってみたが、ダンゴムシは片目を開けて、少し首を上げただけで、「よろしく」と言っただけで、また目を閉じた。




