表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
アットホーム アサシン  作者: オノダ竜太朗
ファーストミッション
15/74

藤原 景子の件(1)

藤原さぁーん、と名前を呼びながら、ミントはブルーシートを捲っていく。怒られたり、絡まれたりするんじゃないかと思ったが、ホームレスたちは、わりと気さくに答えてくれた。これはミントの幼い見た目が功を成しているのだろうか。

それにしても、なんだか異様な臭いがする。川から流れてくる臭いもあるだろうが、やはり彼らの体から漂ってくる汗と食べ物の入り混じった臭いに、鼻を摘みたくなる。

この臭いを少しでも和らげようと、ミントから受け取った魔法瓶のアイスミントティーを飲むが、鼻を通るミントの香りが一瞬で消えてしまう。

それにしても、よく平気な顔をしていられるなぁ、と思いながらもミントの後ろについていくしかない。

彼女はトートバックからiPad を出して、画面を見ながら、この辺なんだけどなぁ、と独り言を言っている。


「メールで地図きたんですけど、この辺なんだと思うんですけど、違いますかねぇ?」


ミントは俺に画面を見せてくる。確かにメールで依頼らしい文と共に、ここを示す簡単な地図も添付されていた。住所を載せたいところだから、ここは河川敷。番地なんかわからない。

俺は、ガセではないかと思っていたが、黙っていた。

文面はこうだ。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

本当に殺し屋なんですか?

私は、ある男に騙されて、今ホームレスをしています。

もし本当なら、この男を殺してほしいです。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

地図と一緒に男の写真も添付してある。

ただ依頼としては、はっきりとしていない文章だ。このメールを送った女性も半信半疑で送ったのだろう。怒りをぶつける場所もなく、独り言のように読み取れる。

第一にここはホームレスの「住宅街」だ。こんなところからメールが送られてくるなんてあるはずがない。


「ねーちゃん、藤原さんって誰探してんだい?生き別れた父さんか?」


この人たちには、名前というものは然程重要ではないらしい。みんな訳あって、素性を隠していたり、過去を捨てて、ここに集まってきてしまったのだから、本名という概念はないんじゃないかと思う。みんなあだ名とかで呼んだりと、澤村の事務所と一緒じゃないか。


「違う、女の人です」


ホームレスたちがみんな顔を見合わせた。


「最近来た、綺麗なねーちゃんじゃないか?」


「その人、藤原景子さんですか?」


「名前なんて知らねーよ。聞かねーし。ただ、今そのねーちゃんだったら、ここの人気もんだよ」


膝丈くらいに伸び放題の雑草をかき分けて進むと、アスファルトの歩道に出る。川沿いをしばらく歩くと、頭上に車の通る橋の下に、この「住宅街」のなかでは、ちょっと立派な「お屋敷」があった。


失礼しまーす、とミントは入り口らしい部分のブルーシートを捲り、中を覗いた。


そこには少し髪は乱れているが、上品なタイトスカートのスーツを着た30歳前後の女性が座っていた。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ