王と宰相
前話訂正追加等しています。
まぁ一応念の為…
読まなくても影響はありません。
「ッッー あ、あの大丈夫ですか?」
突き飛ばされた少女は、尻餅を付きながら笑顔で問いかける。
(それはこちらのセリフだと思うんだがな…。それに、オッドアイ。神の寵愛を受けし者…ね…)
少女は、前髪で片目を隠すような格好をしていたが、その男の動体視力の前には意味を成さなかった様で、尻餅を付く際にしっかりと捉えていた。
「あぁ、大丈夫だ。気を付けろ。」
「ちょっと!ゴミ処理女!なにやってんのよ!さっさとこっちのを片付けなさいよ!」
恰幅の良い婦人が少女に怒鳴る。
「ごめんなさい、すぐ行きます!」
しかし、少女は気にした様子もなく笑顔で仕事をこなす。罵られ貶されても笑顔を振り撒く彼女は、まさしくそこに生きていると言えた。
「残飯処理しか能のない冒涜者の癖に、人様に迷惑かけるんじゃ無いよ!」
神の寵愛を受けし者ーその者達は、例外なくオッドアイという片目だけ琥珀色とわかり易い特徴と共に不思議な能力をもっている。また、その色が赤に近い程、強力な能力をもっているというのが通説である。
得てして人間と言うのは不気味なものは遠ざけたがったり弾圧したがったりする。ここでもその傾向は強く、大陸全土に広がる唯一の宗教 天々信仰教会が、「奴らは神への冒涜者」と高らかに宣言したことにより、その差別は、留まる所を知らなかった。
(フン、まぁ俺には関係の無い事か)
まるで対岸の火事のごとく、澄ました反応だが。この男にも全くの無関係では無い。何を隠そう、この男も本来はオッドアイなのだ。本来、というのもこの男はかなり有名で、それ故に素面でウロウロしようものならすぐさま衛兵にお縄である。まぁそう簡単に捕まる男では無いのだが、幾ら問題なく突破出来るとしても、面倒事は避けるのが定石である。なので、変装して街中を彷徨いているのだ。
格好こそ闇を具現化したようなローブを纏っているが、顔はどこにでもいそうな平凡な男である。実際の男の顔も、オッドアイで目つきが鋭い以外には特に取り上げる所も無い。
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(腹ごしらえも済ませたし、とっとと任務を済ませて帰るか)
あくまでこの男は任務を遂行しに来ただけであり、別に観光している訳では無い。とは言っても、肥えた貴族の暗殺など、この男にとっては観光に来たのとさして変わらないのも事実であり、ものの数分で暗殺は済むのである。
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門兵から馬を返してもらい、男は国へと帰る。もちろん誰にも気付かれずに…
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重い扉を開いて豪勢な絨毯を歩く。
「ただ今戻りました。」
「ウムウム、よォ戻ったゾェ。」
甲高い声を響かせながら、顔面白塗りの巫山戯たような男が言う。かと言って巫山戯ている訳では無く、この男この国の宰相ウパルーパである。そして、その隣には、強者の雰囲気を醸し出している片目が真っ赤な男。この国の王である、ヘラクレス・ヒット=リーニ覇王閣下その人がいた。
名前のガサツ感…