日照の街
あけましておめでとうございます。だいぶん過ぎてますが…。
今年もぼちぼちやってまいります。
オアシスのような街とは言ったものの、この街は全くと言っていいほど潤ってはいない。というのも日照の能力が関係している。
日照には、太陽の光を浴びると身体能力が跳ね上がる能力と周辺一帯の日照を強める能力を持っていると言われている。
そのせいで水はみるみる干からび街はカラカラになっている。だがしかし、住民にとっては特に問題は無い。なぜなら、この街にいるのは基本的に簒奪者などの選ばれた富裕層だけなのだ。故に、金でどうにでも出来てしまう、いわば罪の街なのだ。だが、誰も何も言わない、いや言えない。日照の権威のせいで…
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「あっちぃのぅ。」
「そうですね。どこかで少し休憩でもしましょうか。」
「おぉ!それはいいですなぁ!」
「うむ。賛成だ。」
そうして一行は近くにあった料亭に入る。
「な!なんじゃ、これは!高すぎんか!」
「普通の定食が、ほかの街の十倍以上とは…」
「そのへんで虫でも捕まえるか?」
「いや…それは…」
そんな会話をしていると女将が出てきた。
「なんだい、あんたら?この街は初めてかい?」
「あぁ。そうだが?」
「なるほどねぇ。悪い事は言わないから、用がないなら早くこの街を出た方がいいよ。」
「それはなぜだか聞いてもよろしいですか?」
「そうさねぇ…」
「まず飯が食いたいのぅ。」
「今いい所だから黙っていて下さい!」
「はっはっはっ!いいじゃないの!うちは料亭なんだから、たくさん食べて行きな!」
一行の食卓に料理が並ぶ。
「おぉ!これは、上手いのぅ!」
「ありがとうね。それで、この街の話だったね。この街はね日照っていう権力者が牛耳っているのさね。まぁ、それぐらいは知ってるとは思うけどね。それでなんだけど、この街の奴らは、日照様の権威をいい事にやりたい放題さね。利益を求めて潰し合いなんて日常茶飯事だしね。あと、日照様の気に障って無理やり働かされている様な連中がいるだけさね。こんなの聞いてるだけでも気が引けて来るだろ?」
「なるほど、貴方は後者というわけですか。」
「正確にはどっちでも無いさね。あたしゃこの腕を日照様に気に入られただけさ。元はケプチャク村っていう、田舎の村出身なんだけどね。今頃旦那や娘も元気にやってんのかね…。おっと、話が過ぎたね。」
「ケプチャク村ですか…」
これは事実を伝えるべきか…とバナシウスが目線を他の面子に向けると、バングは一心不乱に料理を食べており全く聞いておらず。死神は、アルの料理といい勝負だな…うむ。と虚空を見つめながらよく分からない勝負の審判をしている。
「あ、あなた達…少しは聞いたらどうですか…?」
「むう?女将!これは上手い!」
「いや…」
「そうだろう、そうだろう。何せあたしが腕を振るってんだい!上手くて当然さ!」
食い気味に女将が口を開き、流れが変わったのでこれはこれでいいか。とバナシウスは現実逃避をする。
「僅差でアルの勝利!(私情含む)。」死神がそう口走った辺りで昼食を終え、街に出る。
「成功とは言えないですが、情報収集も出来ましたし、さっさと日照を倒してしまいましょう。彼女の様な人をこれ以上見たくもないですからね…」
「どこにいるのか分かっているんですかい?」
「えぇ、貴方達が料理に夢中になっている間に女将からある程度の情報を得ました。何でもこのあと罪人の処刑を日照が直々にするそうです。」
「ほう。それはどのような罪人なのだ?」
「貧しい民に水を配った罪だそうです。そんな事をしたら経済が破綻するらしいですよ。」
「なるほど、それは重罪だな。」
「じゃのぅ。」
「全くです。」
「「「日照が。」」」
「ということで、のこのこ出てきた所を叩きます。」
「了解した。」
「合点じゃ。」