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短刃の勇者  作者: 惨劇の翼(厨二)
2章 第三研究会
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いざ日照の街へ

「バンクただ今戻りました。」


薄暗い執務室に筋肉達磨の声が響く。


「よく戻りましたね。貴方の戦果は、我々の計画をかなり進展させました。それにしても、その背中に担いでいるものと、後ろにいらっしゃるのは?」


「あぁ、そうですなぁ。この斧は、あっしのバスターソードが粉微塵になりまして、その代わりに頂いたもので、この後ろのは…」


「僕は、ししょ〜の一番弟子のファングです!よろしくお願いします。」


ちゃっかり付いてきたファングが食い気味に答える。


「まぁ、色々ありまして…」


「そ、そうですか。貴方が弟子を取るとは珍しいですね…」


と、そんな執事室の扉が開く。



「あら?バングが戻ったのね。ってあんた、もしかして…………ファブリオ……?」


「え?……姉様?」


「え?何じゃ?」


「どうやらお知り合いのようですが?」


「まさか!ほんとにファブリオなの!?」


「あ、姉様!お会いしとうございました!」


「むう?完全に置いていかれとるわい。」


フライハイト家はかつて、王国の中でも有力な貴族であったのだが、現在、長女が旧王族派の首魁の元許嫁という事で、一族の取り潰しになりバラバラになってしまった。 そんな中で偶然、遭遇したのである。


と言った説明を受けている最中に、勢い良く扉が開かれる。


「たいへんです!ケプチャク村が!」


「どうしたのです?」


「壊滅しました!」


「何ですって!」


「状況を説明せぃ!」


伝えられたのは、日照の管理する村での虐殺だった。


■□


急ぎ馬を走らせ、ケプチャク村へと辿り着いたバナシウスとバンク、そして死神は、村の現状に唖然とした。


「なんだこれは。」


「酷すぎます。」


「うむ……」


そこにあったのは、親子だろうか?抱き合うようにして無残に焼き焦げた遺体や、ひれ伏せたまま首だけ無い遺体、体中を串刺しにされた遺体などがゴロゴロと転がっていた。


「またもや尊い命が……」


「何故だ…?」


男達は言葉も出ない。


「報告によりますと、何でも年貢が少ないとかで…」


そんな言葉を耳から流しつつ、バナシウスは次の策を考える。


「他の村にも向かっているかもしれない。助けなくては!」


「どこに向かうと言うのだ!」


「近くの村を一通り回ります!」


そうして次の村へと向かう。


■□


「遅かったか…」


その村でも同じ様に命を奪われた者達で溢れていた。


「なぜ…こんなことに…」


「これはかなり時間が経っておるのぅ。この様子だと、他の村も手遅れかもしれんのぅ…」


「そんな…何故いつも弱者がこの様な目に合うのでしょうか…」


「それは、弱いからとしか言い様が無いな…」


「みながみんな、貴方のように力を付けれる訳では無いのですよ!」


「それでも、だ。どんな状況下にあろうとも、結局手にした者が勝つのだ。」


「くっ…なれば、民を救う為に、我々も力を行使するしか無いのでしょうか…」


「そうだろう。特にこの場合は。日照はどちらかと言うと、殺す方を楽しんでいる様にも見えるからな。」


「許せません。日照…必ず打ち倒して見せます…」


■□


カンカンカンと鉄と鉄を打ち合せる音が響く中、息を切らして声を荒げる者がいた。


「親方!またです!うちの武器で無意味な殺戮が繰り返されています!」


「知るか!儂らは武器を作るのが仕事であって、それがどう使われようが知ったこっちゃないわ!」


「そんな!我々が魂を込めて打ち込んだ剣が、殺戮の手助けをしてるんですよ!」


「だったら何か!作るのを辞めるかい!?」


「そ、それは…」


「お前も分かってんだろい!儂らが作るのを辞めれば、その武器がこっちを向くのは明白だろがい!」


「そうですが…」


「なら、ちんたらサボってねぇでさっさと仕事にもどれい!」


「はい…」


そうして、男は仕事に戻る。


「儂かって、そんな事は許せんのじゃい。」


そう呟いた、隻眼の老人の声は誰にも届かなかった。


■□


「見えました!日照の街です。」


「やっとか。」


「老人の腰には堪えるのぅ。」


馬に跨り駆ける一行は、砂漠のオアシスの様な所にある街に向かっていた。


「これが日照の街か?防護策が何も無くはないか?」


「必要無いぞ、ということでしょう。」


「そいつぁ、大層なこったで。」


「力無き者達の力を見せてやりましょう。」

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