次の標的
そうやって男達が帰ろうとした所、また別の路地を歩いていると
「何ですか!?貴方達!離して!離…」
「うるせぇ!静かにしやがれ!」
と言った声が聞こえてきた。
「ん?何でしょう?不味そうですね。助けに行きましょう。」
「分かった。」
男達が現場に急行すると、そこでは、少女が四人組の男達にまさに今攫われようとしているところだった。
「おにぃさんたち!助けて!」
「まずいぞ!おまえら、時間を稼げ!」
「これはこれは、私の目の前で人攫いは寝覚めが悪いので辞めて頂きたい。死神さん、死なない程度に痛めつけてあげてください。」
「そこは俺なのか…まぁいい。ボスの命令だ、聞いてやる。」
「なんだぁ?テメェら、呑気に相談かぁ?三対一で勝てるとでも思ってんのか?」
耳障りな甲高い声で誘拐犯が騒ぐ。
「うるさい。貴様ら如き武器すら必要ない。」
「なんだと?ナメてんのかぁ!?」
「あぁそうだな。」
もちろん、その辺で人攫いする様な輩に死神を止めれるはずも無く、大振りなパンチのカウンターからの回転蹴りからの裏拳と流れるコンボで男達を薙ぎ倒してしまった。一撃で伸びた男達は、ピクピクしている。そして、残りの一人に下へ向かう。
「お…おお…おまえら…何者だい?」
「それはこちらが聞きたいですね。」
「お、俺達は、た、ただの人攫いだよ、はは」
「そうですか?その割にはいい道具ですね?あの馬車とか」
「あ、違うんだ、これは、その…」
「一緒に来てもらえます?」
「はは、ははっ」
そう言って男は走って逃げ出した。
「あっ、この!私は追います、死神さんは帰っててください。」
「あぁ……」
「おにぃさんありがとう。お礼に安くしとくけど、買っていく?」
「いや…いい…逞しく生きろよ……」
「そう、ありがとう。」
「とりあえず、こいつらは縛って衛兵にでも突き出すか…」
■□
「今日もいい天気ね〜。ってちょっと、ノックス!あれほど炊き出しの中で寝ないでって言ったのにぃ〜!も〜!」
「…んぁ?……あぁ……れしあ……」
「全く、何回言わせるの!」
「……ごぇん……でも……しぁたない……」
「仕方なくないわよ!」
るんるんとやって来て、ぷりぷりと怒っているのがレシア・ミュートピア。天々信仰協会の準教皇という、かなりのお偉いさんである。
ちなみにノックスとは、さっきの炊き出しの女である。
「まぁいいわ。それでちゃんとする事はしたんでしょうね?」
「……だぃじょぶ……ちゃんと…ならぶこ…には…ちゃんと…あげてる……」
「ならいいわ。あれ?この金貨は何?」
「……それは……さっき…きた…おとこ…が…そっと…おいてった……」
「そうなの?くれるのかしら?」
「……たぶん……こどもたち……の…ため…に…つかえって……」
「なら、子供たちの為に使わないといけないわね!これからも地道に頑張って行くわよ!おー!」
「……うん…」
■□
「ファーレはどこですか?」
ようやく、人攫いしていた男を追い詰めて、バナシウスが戻って来た。
「んー?ここだよー。」
「良かった。お仕事ですよ。」
「おー、さすがバナシウス、約束は守る男だねー。で?この伸びてるのから何を聞くのー?」
「人攫いをしていましたから、どこの手の者かという事を聞き出してください。あと二度としないようにして頂いても構いません。」
「ご注文承りましたー。じゃあちょっと行ってくるねー。」
そう言ってファーレは、伸びた男を引き摺りながら消えて行き、入れ替わる様に死神がやって来た。
「任せて良いのか?」
「ええ、彼女は、腕利きの拷問官ですから。」
「む?そうなのか?」
「はい。言ってませんでした?」
「いや、聞いてないが…」
■□
「うぐぁあぁああああ"あ"あ"ぁ"」
拠点中に叫び声が響く中、バナシウス達に伝達が届く。
「バングが、戦斧を討ったようです。」
「あら、やるじゃない。どうやら杞憂で終わったようね。」
「そうですね。これでやっと一歩進むことが出来ました。」
「まだまだ始まったばかりじゃない。気を引き締めないとね。」
「これからが我々の反撃ですからね。力に驕る者達を、引き摺り落とさねばなりません。死神さんにも活躍して貰いますよ。」
「あぁ、任せてくれ。」
「おや?静かになりましたね。ファーレが終わったようです。」
しばらくしてファーレが入って来た。
「終わったよー。」
「お疲れ様でした。どうでしたか?」
「あの男はねー、黄色の軍服の奴らに頼まれたって言ってたよー?」
「黄色の軍服?それって第三研究会かしら?」
「恐らくそうでしょう。最近堕天使の黒い噂が多いですからね。それ関連でしょうね。」
「黒い噂って?」
「何でも人体実験をしてるとかで…」
「人体実験ねぇ…確かに裏路地の子達なら居なくなっても分からないけど…」
「それ以上はー、分からなかったねー。」
「そうですか、いえ、十分に有益な情報でした。」
「そーお?まだなにか聞くー?」
「いえ、適当に解放して上げてください。」
「りょーかーい」
ファーレが出ていくのと同時に、今まで壁際で大人しくしていた男が口を開く。
「次の標的は決まったか?」
「そうですね。見逃してはならないでしょう。次は、堕天使を討ちます。」
バナシウスは強く宣言した。