決着
バング編(?)最終話になると思います。
過去の話を少し加筆・修正しました。どの辺が変わったかな?とお楽しみ頂ければ幸いです(笑)
矛盾点等ございましたらどんどんお願いします。
「さぁああぁあてぇええぇ、いよいよいよやって参りましたぁあああぁ。エキシビションマッァアァチィイィ。」
気分を持ち直した司会が、またもや盛大に叫ぶ。だがしかし、バングの耳には入らぬ様だ。
(遂に来たか。ほとんど情けをかけられたようなものだが貰えるものは貰っとく主義だしなぁ。気にするのは後だ。)
「いままでどんな手を使ったのか、全ての敵をあっさりと打ち破ったバングの実力が、ここではっきりします!それに対するは、我らが守護八忌の一人戦斧のギャザァアァアアアァ!」
「ギャァッザッザッー、俺様が来たぜェー」
ギャザーの叫びに観客席から喝采するものもあれば、恨ましく睨むものもある。割合で言うと二対八といったところか。
(ふむ。こやつもそれなりの支持はあるのかね。まぁここで終わらせてやるが。)
「ではでは、早速ですがエキシビションマッチ。始めぇええぇえぇえええぇぇえぇぇえええぇ!」
「ギャァッザッザッー、よくここまで来たなぁ。俺様が直々に相手してやるぜ!この俺様を気に入らせたらお前には、一生楽しい、勝ち組の生活をさせてやらん事もないぜ!ギャァッザッザッー。」
「何を言っとる。これは殺し合いだろ。どちらが死ぬまで続ける。上手いこと隠しているようだが、今までもそうなのだろ?」
「ギャァッザッザッー、減らず口を。なら、この俺様を殺して見やがれ!」
戦斧が愛用の斧を振るう。全く洗練されていない、我武者羅な素人の振りだが、恐ろしいのはその威力だ。それは、戦斧の能力のせいで、その能力とは、軽重反転。ギャザーが持つ分には質量が反転するが、実際の質量は変わらない。
つまり、重い物は軽く扱え、軽い物は重くなる。故に、ギャザーが軽く振り回す斧は、とてつもなく重いのだ。
一撃で肉体ごと持って行きかねない斧の連撃。だが、バングも持ち前の筋力で応戦し、重い金属の打ち合う音が会場中に響く。
■□
もう何度目かの衝突か数えられなくなった頃、遂に武器同士のぶつかる音と同時に、武器の砕ける音が木霊した。
「ギャァッザッザッー、お前の武器はお終いだ!」
それもそのはずで、バングの肉体は耐えれても武器はそうはいかない。年季の入った大剣は役目を終えて塵へと帰り、会場にいた全ての人間が、バングの死を覚悟した。
だが、バングの武器は、大剣だけではない。その鋼の様な肉体も十二分に凶器なのだ。バングはすかさず、大剣が砕けた事によって油断したギャザーの脇を抜け、回り込んでヘッドロックを決める。驚いたギャザーは、うっかり武器を落としてしまい、必死にバングを殴り、叩く。だがそんなもの気にしないとバングは更に力を込める。観客からも"行け!" "やってくれ"と声援が強まる。
そんな中ギャザーは、リングの外で控える数人の部下と目を合わす。
「うぐぅぅ…貴様…ら…何して…やが…る…俺様…を…助け…やがれ…」
部下達もどうすべきか迷ったようだが、武器を持ってリングに上がる。
「貴様ら卑怯だろぅ!」
大ブーイングの中、部下達は構いもせずにバングに刃を立てる。
「ぐぁああぁ!」
それでもバングは、決して力を緩めない。
(ならん。ここであっしが倒れれば、もうチャンスはこんだろぅ。民の悲願なのだ!この命に変えても!!)
そうバングは決意を固め、部下達も本気でバングを仕留めようと大きく振りかぶった所で、スパッと首が跳ねる。
「それは些か無粋に御座る。」
何が起こったのか。静かな抜刀に、誰しもが気付けなかった。だが、それによって全てが決したと言っても過言ではない。静寂がその場を支配した。
ゴキリ。そんな音が響く。この時、王国に巣食う悪が一つ、地に伏せたのだった。
■□
「ぜぇ…………ぜぇ…………………。」
「………まさか、ここまでとは。何が貴方をそうさせるのですか?純粋に気になってきました。」
「うる………………さい………………」
「そうですか。それにしても、今のこの国のシステムはおかしいと思いませんか?私はただ平等を願うのです。力無き者を、食い物にするのはどうしても納得出来ないのです。」
「…………びょう……………どう……………」
「そうです。平等です。皆同じ人ではないですか。」
「…………同じ……………人………」
男が思い出すのは、とある少女の最後の言葉。人として生きれて幸せだったと。男の何かを動かした少女が残したモノの意味を考える。
(何かを為せ。そういう事か?今までの間違いを正せ。そう言ってるのか?アル……だが俺には…分からん……)
「分からない、そう投げ捨てるのは楽ですよね。」
「!?」
「そうやって逃げるのは簡単ですよね。苦しく無いですよね。だって分からないから。でも、私は逃げません。もう大切なモノを失いたくは無いから…苦しむ人を見たくもないから…」
バナシウスは、悲痛とも言える表情で語る。
「今のこの国の現状を知ってますか?」
「知る……わけ…ない……だろ」
「ですよね。知ろうとしませんでしたもんね。いいですよね、知らないって。」
「な……にを……」
「すいません。頭に血が登ってる様ですね。少し外します。ファーレ、頼みます。」
「あいあーい。」
迷い続けて、それでも一歩でも前へと。それが人の性と言うものだろう。男もまたその一人なのだ。