闘技会 中編
「一部では、中々見事な試合を見せていただきましたぁああぁ。これは、今後の試合も期待できそうであります。続いてのカードはぁああぁ、ファング選手とクイーン・ザ・サディスト選手です。」
「あらあら、坊やぁん。あたしの相手は、あなたがしてくれるのぉん?」
鞭使いの女が、大剣を持った少年に、ねっとりと話しかける。
「はい、僕がお相手させていただきます。すぐに終わりますが。」
それに対し、少年ははっきりと応える。
「早いのも好きよぉ。まぁ頑張ってねぇ。」
「正々堂々と戦いましょう。」
「ではでは、第二試合、始めぇええぇ!」
司会の掛け声と同時にファングが接近する、しかし、クイーン・ザ・サディストも黙ってはいない。クイーン・ザ・サディ…クイーンはその愛用の鞭を蛇のように巧みに扱いファングを寄せ付けない。瀬戸際の攻防の後に、埒が明かないとファングが無理やり攻め込む。
「あらあら、無理やりねぇ。そういうのも好きよぉ。」
「これで終わらせます。せやっ。」
「あらあら、残ねぇん。そんな大振りじゃ当たらないわぁ。」
クイーンは、後ろに飛び上がりファングの横薙ぎを躱し鞭を振るう。音速を超える鞭の先端がファングに襲い掛かり、体のあちこちに細かい傷を作る。
「こんなところで負けるわけには…師匠の顔が立ちません…行くぞ!流星剣!」
「あら?何かしらぁ?それはぁ?何か変わったようには思えないのだけれどぉ?」
ファングが、叫ぶことに意味はない。意味は無いが何となくかっこいい。その程度だ。
「中々しぶといですね。でも、ここまでです。ハイパークラッシュッッ!」
「ただの横薙ぎじゃなぁい。お姉さんがっかりだわぁ。」
「その歳でお姉さんは、ちょっと…」
「やかましいわよ!」
ファングの真顔で食い気味な返答に動揺を隠せないクイーン。ファングはなぜかできた(と本人は、思っている。)隙を逃さず、大剣を薙ぐ。
「ぐはっ。」
「これで終わりですよ。安心してください、峰打ちですから。」
「決まったぁああぁ!第二部はファング選手の勝利だぁあああぁ!」
そしてバングの出番である。
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「ようおっさん。このキッドさまを退屈させてくれるなよ?」
「うむ。善処しよう。」
バングの相手は、ふとももの辺りに金の筒状の物を着けている。
「一部二部と手に汗握る、熱い戦いでした。三部はどうなるのでしょうかあぁ!では始めぇええぇえ!」
「このキッドさまの、パーフェクトスナイプを見よ!」
ずぎゃんずぎゃんと二丁のリボルバーが火を噴く、しかし相手が悪すぎた。
「なんだ?これは?」
バングはリボルバーの弾丸が当たっても平然としている。
「ばっ、ばかな!僕のゴールデンドラゴンズが…効かないなんて…」
「あっしと戦いたくば、その肉体を鍛えてくることだな。」
バングは拳を振りかぶり、キッドを殴り飛ばした。
「軽すぎるわい。」
「決まりましたー。なんとも呆気なさすぎて、欠伸が出そうです。特にコメントもないので決勝戦行きましょ。決勝戦は、リーグ戦でーす。」
見事にやる気のなくした司会の宣言通り、闘技会は決勝戦へと進む。
■□
「三回戦第一試合はぁあぁ、ファング選手対バング選手だぁああぁ!なんか名前が似てますねぇ紛らわしい、バングさんは改名してはどうなんでしょうか。」
よほどバングにご立腹らしい司会は、何とも無茶なことを口走っている。
「貴方が、本物かどうか確かめさせて貰います」
「むう?あっし、なんかしたかい?」
「いえ、お気になさらず…」
「それでは、それでは、最初の組み合わせ、始めぇえええぇ!」
「せやぁああぁ!光烈剣!」
同じ大剣同士の戦いで先に出たのはファングのほうだ。
(こヤツ、鋭い!)
しかし、バングも負けじと打ち合う。数合剣を合わせたところで少し違和感を抱く。
(む?剣筋が全く同じ…か?)
そう幾度剣を振ろうとも寸分違わぬ所に相手の刃がやって来るのだ。
(こヤツ!何たる使い手!このあっしに完璧に合わせてきておる!)
だがそんなことは露も知らないファングはというと。
(僕の剣筋と全く同じ!いえ、僕が真似た剣と全く同じ!本物だ!)
「会いたかったですよ!師匠!」
ファングは、武器を投げ捨てバングに駆け寄っり、血迷ったかと思うような行動に会場は唖然とする。
「これは、いったい何事でしょうか…バング選手がまた何かやらかしたのでしょうか?」
「貴様、何の真似だ!あっしに弟子など居らん!」
「し~しょ~お~」
バング一勝。