闘技会 前編
サックリ進めて行きます。
道行く人に、闘技会について尋ね続けて数時間。ようやっと、闘技会の参加方法を掴んだバングは、受付を済ませ街中を彷徨っていた。
(丁度この時期に闘技会とは、ついてるなぁ。これも天のお導きってやつかな。)
暢気な事を考えるバングに、隠れて付き従う影が二つ。
「どうやら彼も闘技会に参加する様ですね。」
「せやなぁ。まぁ、そこでアイツの形ィ確認すりゃあええやろ。」
「そうですね。」
いくつかの思惑と共に闘技会は幕を開ける。
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大闘技場。そう呼ばれる、コロッセウムのような場所に大勢の人が集まっている。闘技会は戦斧の街の収入源の一つである。と言っても見に来るのは、よほどの富豪か、戦斧の敗北を願う者ばかりである。
「さぁああぁてぇえぇええ、今年もやって参りましたぁああぁ。戦斧主催のぉおぉ、闘技かぁああぁあい。」
司会が盛大に叫び、闘技会の開幕を告げる。
「まぁあぁぁずは、1回せぇえぇぇん。とその前に、選手達には対戦相手を決めてもらわねばぁあぁ。では、選手の皆さんは、集合場所に集まってぇくださぁあぁい。」
と、選手達はぞろぞろと集まりくじ引きでもしているようだ。
(ふむ…C…ね…いったい何をするのか聞いてなかったな。)
やはり詰めが甘い。そして、聞き回ったところによると1回戦はバトルロイヤルで、生き残った6人が2回戦へと進むらしい。
(バトルロイヤルか…久々に腕がなるぜぇ。)
「ではでは、1回戦Aの組から初めて行きたいと思いまぁあぁす。」
そして試合が始まる。どうやら殆どが素人の様で、数分とすれば、決着が着いた。
(ふむ…あれがAの生き残りか、何だか細い片刃の剣を使っていたな。もう一人は、よく分からんかったが、豆玉でも飛ばしよったなぁ)
同様にBの1回戦も進んで行き、大剣を持った男と、鞭を持った女が生き残った。
そしてCの番である。
(うむ…では、行くか。)
「Bの試合も終わりまして、残るはCのみぃいぃ。さぁさぁ、今回はダークホースがいるのかぁあぁ。」
(ぱっと見は、強そうなのは、居ないが…まぁウォーミングアップでもするかぁ。)
その試合は、特に語ること無く、バングと甲冑の男の圧勝であった。そして2回戦。トーナメントが始まる。
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「それでは、こちらに。2回戦はあらかじめ対戦相手を決めておきます。このクジをどうぞ。」
係員に勧められるがまま、バングはクジを引く。
(6か…3部だな。これが良いのか悪いのか。相手は…あの豆玉の奴か…)
その他の組み合わせも、1部は、細い剣を持った男対甲冑の男、2部は、鞭の女対大剣の男だ。そして試合が始まる。
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「さぁて第一ブロック、アケチ選手とカッチーノ選手、どちらも強そうですが勝つのはどっちか!?…………では始め!」
司会の合図と同時にアケチが走る、カッチーノは、それを静かに受けるつもりか。
アケチの武器、刀が、カッチーノの鎧とぶつかると、金属同士の擦れるような音が響く。
「やはり、硬いで御座る。」
「この鎧は、一品物よ、それしきの細き剣では切れぬ。」
「ならば他の手を探すまでで御座る。」
「やれるものならな!」
カッチーノも、その手に持つ剣と大きめの盾を器用に使い、アケチの攻撃を受けつつ攻撃を返す。しかしアケチにはのらりくらりと躱され少しづつ苛立ちが募ってきた。
「避けるばかりで当らぬ様では、私は倒せぬぞ。」
「いや、もう貴殿の癖は掴んだで御座る。降参するなら今のうちで御座るよ?」
「癖を掴んだだ?バカ言ってんな。だったら何だってんだ。」
「拙者の勝ちと言う事で御座る。」
「何を!?…貴様舐めたこ…ッッ」
アケチの刀は、するりとカッチーノの盾を躱すと、甲冑の隙間へと吸い込まれる様に流れて行った。そしてカッチーノの四肢を動けなくした所で、決着が着いた。
「言った通りで御座ったな。」
「ぐぅうぅ…」
「おぉおぉ見事ぉぉおぉ、なんと、隙のない様に見えたカッチーノ選手の鎧の隙間にズバズバと刃を突きこみアケチ選手が勝ちましたぁあぁああぁ。」
(なんと…中々の使い手よ。)
バングは、一人決意を改める。
(あヤツらは、やはりただ者では無いのぉ、だが、あヤツらに勝てぬ限りは、あっしの復讐と任務が果たせん故に、何としてでも勝たせてもらうぞ…)
闘技会は、いよいよ本腰である。