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短刃の勇者  作者: 惨劇の翼(厨二)
1章 守護八忌 戦斧編 仇討ち
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誓いと仇

バングは一人墓の前に(たたず)む。


「シラユリ…すまねぇな。俺がもっと早く動けてやれば…いや、過ぎたことをグチグチ言っても仕方ねぇよな。あっしは、お前の誇り高く生きる様は気に入ってたんだぜ?なんてな…年寄りの戯れ言だ。」


バングは、旧王族時代の戦士長である。その生き様は、決して驕らず、(ほまれ)高く、己の筋を貫き通してきた。その性格故に、今の制度というものに不満をもっている。力があれば許されるのだ。守護八忌という存在は、その持つ力を認められた無秩序の集団で、性格なんぞは鑑みる事はない。つまり、かなり性格破綻した輩もいる。弱者はそれに抗う術がない。力というのは、それだけ制御されていなければならない。


「あっしが、お前の仇取ってくる。そうすれば王子達の役にも立つだろう。」


そう言い残してバングは、馬に跨る。そして気付くのである。


(む?そういやぁ、シラユリの砦を破ったのって…だれだ?)


バングは同様して現場の跡を調べていなかった。報告により、守護八忌の誰かというのは分かっていたが、それ以上の情報は無い。


(報告は正確にせぇ、と散々言っておるのに…とにかく、もう一度現場に戻るか…)


男は馬を走らせる。


■□


(うむ…やはり兵共が残骸の掃除をしておるか…どうするか…)


砦は無惨に破壊されており、それをそのままにするはずも無く、衛兵達が後片付けをしている。


(うむ…こういう時は、酒場に行って情報屋を尋ねるのが良いとヲータンから聞いたことがあるぞ。)


そうしてバングは歩き出す。


(にしても、誰じゃ?汚した後に殺すよな奴だから女では無かろう。そうなると、常闇、戦乙女(バルキリー)、堕天使、辺りは違うだろうし)


ぼんやり考えながら歩いていると、酒場に辿り着く。


(まぁ、聞いてみりゃあわかるだろう。)


そんな適当な事を考えながら、酒場に入る。適当な所に腰掛けて、口を開く。


「マスター、情報屋を。」


「は?何言ってんだ?あんた。うちにそんな酒は無い。」


「いや、酒では無くてだな…」


「なんだぁ?冷やかしなら帰ってくれ!」


バングは、放り出されてしまった。


「ててて…参ったな…自分で探すしか無いか…」


バングは、砦に戻る。


(裏からなら入れるか…)


男はそっと裏口に回る。裏口には兵士は居ない様だ。


(よし、行けるな。)


バングは、調査を開始した。


(やはり打撃跡が多い…これで剣聖(ソードマスター)は無くなった。雨が降ってはいなかった様だから雨天(あまぞら)も無い。つまり、巨腕か戦斧か日照のどれかだが…)


そんなことを考えているうちに、シラユリの遺体があった所にやって来た。


(む?これは?)


そこには、赤い文字で、斤と書かれていた。


(これは…恐らく…というか、間違いなくシラユリの伝言だろうな…誰かがここに来て、復讐に向かうと読んでいたのか…何にせよ、惜しい人材を亡くしたな…それで、これは何だ?)


一旦報告に戻るバングであった…


■□


鋼の様な冷やかしの男が去った酒場の一角にて、二つの影があった。


「なんですかね?あれ。あんな直接接触しようとする事なんてありますかね?馬鹿なんですかね?」


「言ってやるな。ありゃあ見た感じ、脳ミソもかなり鍛えてやがる。」


「このタイミングで情報屋とは…何者でしょう?」


「さぁな。そんな事より、俺たちは革命軍に接触せねばならん。」


「そうですね。さっさと雁首揃えて出て来やがれってもんです。」


「そうしてくれりゃあ、こっちも楽なんだがなぁー。」


そして、男達は暗闇に消えていく。


■□


「ーーてなかんじでさぁ。」


バングは、報告に戻っていた。


「そうですか。これは間違いなく斧を意味しているのでしょう。」


「そうですかい…なら戦斧で間違いないと…」


「はい。」


「分かりやした。これでやっと向かえやす。」


そこにライラが入って来る。


「あら?出て行ったと思ったら、もう戻ったの?」


「いや、今から行くとこでさぁ。」


「そう…なら一つ約束して、必ず戻るって。」


「分かってやすよ。あっしも王子の成すことを最後まで見届けなきゃならんのでね。」


「ならいいわ。気を付けなさい。」


「行ってまいりやす。」


バングは仇の元へ向かう。

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