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蛋白質

作者: 幻想狂気取扱い技巧人

意味不明、吐瀉物噴出、減速エントロピー

むさ苦しい人がざわめく教室の中で、私は頬杖をついて粒子に関する本を読んでいた。

ぺらぺらと無機質な数量が蔓延るページを捲っていると、息荒く名森が話し掛けてきた。

何だよ、良いとこなのに。「ん、何?」

そう汗がにじっている顔をした男子に返すと、彼はこれを少し見てくれよ、とイヤホンジャックの付いたオルゴールの様な機械を机に置いた。

「凄いだろう?徹夜したんだぜ。」

そのオルゴール擬きを拾い上げ、底を見たりしてみる。だが、只の複雑な回路にしか見えない。

「これ何に使うんだ?音楽でも流れ出すのか。」

「いやいや、そんなちっぽけな物じゃあ断じてない、これは電子機器を通じて何かと交信する機器なんだ、中には極微小なマイクロ端子が埋め込まれていて、マイクも内蔵しているんだ。」

「ヘェ、そいつはたいそれたマシンだ。よく作れたなァ?嘘なら今なら許すぜ。」

こいつは確かにオカルト関係、例えば地球外生命体とかESPに高い興味があって、たびたびそんな話をし、怪しい機械を製作したが、そこまでの知識があるとは思えない。

「嘘じゃない。・・・と思う・・・。パッと頭に浮かんできたから作っただけだからその可能性も十分有り得るけど。」

「つまり、お前はパッと思い浮かんでから作っただけの機械がそんな代物だと思ってるわけだな?誇大妄想狂だね、病院行ってらっしゃい。ハイ、終わり。その機械は試してみたらどうだい?」

手でしっしっと払ってやると、嘘じゃねぇと思うんだが・・・と呟きながら自分の席に戻っていってしまった。

やれやれと思い本を開くとチャイムが鳴った。


授業が終わり、解放されたかのような生徒達はゾロゾロと各々の掃除場所に蠢いていった。

腕時計を見ると15:20と針が示していた。

「なぁ、今日暇かい?」時計を見ていると後ろから声。

「あぁ、特に予定は入ってないな、実験のお誘いかい?」

ゆるりと振り向くと友人の名森が其処にいた。

「勿論、もしよろしければ、だけど。」

多分失敗になるだろうが、見届ける価値は一応ありそうだ。

私は、あぁ、分かった君の家にお邪魔して良いかな?とことわった。

無論結果は許可応良。その後は彼と実験について話し合った。


「つまりはだ、僕たちは三次元に存在しているのだから同次元に他生認識生物がいてもおかしくはないわけだ、、、」

「ああ、確かにその様に採れるねぇ・・あぁ、君の家が見えてきたぞ。」

放課後、私達は歩を同じくして帰り、対して興味のない宇宙論や混乱しそうなコードの解析談をされたのだ。

もうこりごりだ。歩を早めて私は開かれた家のドアーをくぐった。

家に入り、名森に導かれ階段を上る。

狭く幾枚も写真が貼ってある階段を昇って直ぐに彼の部屋はあった。

ドアが開けられる、私は入る。

ベッドと本棚兼机が大きくあり、テレビやラディオがあるだけの高校生にしては空虚で何か虚しい部屋だった。

「疲れたろう、座ってよ。」

私が床の座布団に腰を下ろすと彼はラディオを、私の前にどっかりと置いた。

「・・さて、では説明したように実験を行おう。手順は覚えてるかい?」

「イヤと言うほど聞かされたから解ってるよ、このイヤホン口にジャックを差し込んで電波を逆発信、その後に帰ってきたのを拾って交信・・・だろ」

彼は首を縦に降り、ポケットから件の装置を取り出した。

「その通り、では、始めようか・・・」

イヤホンジャックを彼は慎重に口に差し、装置のスウィッチを捻った。その後に、電源を入れた。

――――――キュゥィーン・・・キュキュ・・ザザザ・・・―――――。

私は只のいつもの実験の真似事だと思ってそこまで力は入っていなかったが、彼の表情には何かに魅入られている様に熱がうかがえた。

(随分熱が入ってる事・・・只の妄想なのに―――)

思った矢先だった、ノイズの中から少しの声が聴こえてきたのは

コチラ――キコ―――エマスカ――キコ、聞え――聞こえるか?―――

(・・・!!!!)

―――ワタ――私は――キミ逹ガ思ってイル様ニ―異形のモノで・・ある――今からそち・・らへ向―――か・・う・・・――――ザー・・・。

ザザザ―――。

プツン、ラディオ内から何かが切れた音からその異質な聲とノイズは途絶えた。

「今、今のって・・」

名森が興奮と恐怖の入り雑じった様な顔でコチラを向き、弱々しい聲をあげる。

「いや、どうせどっかの電波でも拾ったんだろ・・もう一度――」

「―――――(その必要はない)」

私は頭を押さえた、突如頭の中から声がクリアーに聞こえたのだ

「おい!今の聞こえたか!?」

「エッ、今のって・・幻聴じゃあ・・・」

(「違う―――下を向け―――」)

言われて下を向くと、其処には嘔吐物の様にゲル状で乳白色をした液体擬きがあった。

「うわっ、何だ此?吐いたのか」

「違う、僕ではない。このお方だ!この御方こそ僕たちが呼び出した方なのだ」

(―――ソノ通りだ、名森。私は電波をキャッチしてきたのだ―――」

「あ、貴方は、いった、一体?」

床にあった液体擬きはその体を一切動かさずに話した。

「(――私にナマエは無い、私はキミ逹を待っていたのだ――)」

頭の中の単調で機械的な聲は続いた。

「―――「(ワタシの様な生物はほぼ知識を持たずに進化した・・・体は君達の脳の様な形成をしており、蛋白質、と此処では呼ばれる物体に類似している。―――」

「―(私はその生物の突然変異として生まれ、異質を持っていた。だから彼等の愚かさと醜さが解ったのだ―――)」

「―――――(親が小を食い、互いを殺し合い、考えもせずにチットモ進化しないで―――私は恨んだよ、廻りに知識が「存在していない」事をね、だからこそ君達のような似ていて、それでなお知識ヲ持つモノを渇望した、これは奇跡―――)」

「(―――――これで私達は救われる―――有難う―――)」

足元のゲル状生物はテレパシスを私たちに送ると、徐々に姿を消していった。

「アッ、何処へ!?」名森がすっとんきょうな声で叫んだ。

「(――ワタシハ恐らく此処ニは、長く居れない。だからせめてものの事はしたいのだ――――」

そう声が頭に響くと、次にヴィジョンが頭に走った。

―ドロドロに溶けて行く人々?――――バラバラになった死体―――

形成される論理―――破壊される原始のビート―――ドロドロが脳にしがみつく光景―――――産まれる胎児ー――ー――――――

「(私はこの星の生物をノットって行く。そして、ワタシ以外の私の星のセイブツにも知識をもたらすのだ――聞いた話によると人類とは増え続けているのだろう――?少し減っても気にはしまい――――)」

「ふざけruкзтаб、`☆@★▼★?・・・・・」

話そうとすると頭の中に意味不明な言語が走り、まともに文字が頭を通らない。

「(―――では、さようなら―――――そして、有難う―――)」

「(止めろ、やめてくれよ・・・・ギ、アアァァッ―――――――・・・」

私の意識はアタマノナカニ溶けてイッタ・・・。


有難うございました。

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