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猫目の狂奏者《バーサーカー》  作者: 来海 珊瑚
第一章 階調のアイリス
9/16

8.『鎌鼬の盗賊』と『猫目の狂奏者』 ❤︎

改行を多用し、ほかの方々の作品の様に見やすくしました。これから少しずつ、過去の話も改行してきます。

 目の前にいる人は、誰なのだろう。


 いや、肉体的に誰なのかは分かっている。見間違えるはずもない。目の前の彼は、その場から一切動いていないのだから。問題は、その身にまとう雰囲気。

 今までのダウナーな空気とぼーっとしたような空気、そして、優しさがにじんだ空気がブレンドしていた雰囲気はどこかに消え去り、縦長に細められた瞳孔には、猟奇的な色が浮かんでいた。


「タマ……?」


 思わず彼に声をかけたけれども、私の声が届いていないのか、彼はバキアの方を向いたまま、ゆっくりと口を開いた。


「テメェらか? 俺らに喧嘩売ろうってゆーバカ共は」


 声質は同じなのに、明らかに違う感じの声が辺りに響いた。

 それを聞いたバキアは、ひどく強張った顔つきで、重々しく彼に問うた。


「何者だァ? テメェは……」

「コッチが聞いてんだ。質問で返すんじゃねーよタコ」


 彼の眉が吊り上げられ、瞳孔がグワッと満月の様に大きく広がった。

 それを気味悪く感じたのか、バキアはすぐさま不思議な色を放つ、親指と人差し指を輪っかにした位の大きさの石を握り潰し、あの英語の羅列を唱えだした。


「《風因ウィン――っ‼︎」


 その瞬間、タマの様な何かがその場所から消えた(ヽヽヽ)

 すると、バキアは焦ったような表情をし、ほぼ反射的といった感じで腰にあった曲剣を抜いた。直後、


「――《スタッカート》」


 バキアの目の前にタマが現れ、彼はいつの間にか持っていた直剣を横薙ぎにし、その曲剣を叩いた。

 甲高く、小気味のいい音が当たりに広がる。


「ぬぅっ!」

「チィッ!」


 バキアは剣を取り落として手を抑え、タマは追撃しようとバキアに急接近する。


「クソ! |《風因子ウィンド爆発バースト》ォォォ‼」


 バキアがあの石を使って唱えると、彼らの間の空気が爆発し、二人の間の距離が広がった。お互い、そのまま地面を滑る。


「テメェら、こいつを抑えろォ!」


 バキアがそう指示出した時、後ろで盗賊達がウォォ‼︎ と野蛮な叫び声を発しながら、タマの方に近づいて行く。思わず、言い様の無い悲鳴が喉から漏れた。


「タマッ‼︎」

「ジャマだ!」


 タマは槍に持ち替え、襲いかかってくる盗賊達を次々と蹴散らしていった。

 一人には、肩から右斜めに切り払って、一人には、槍を回して武器を絡め落とさせてから横一文字に腹を裂き、


「……らあ‼︎」


 ――一人には、槍を逆手に持ちながら胸を貫通させた。

 そして、槍をそのままに相手の腹を蹴り、後ろにいた盗賊を巻き込む。それからタマは爪に持ち替え、


「――《トリプレット》」


 二人の盗賊を、その場でまとめて三枚おろしにした。


「すごい……」


 当然ながら私は血を見慣れてないが、今はそれよりも、タマの戦闘の様子が気になってしょうがなかった。

 彼の戦いは、どこかリズミカルで、どこか抑揚的で、情熱的で、気持ち悪い殺し合いの現場であるはずなのに、まるで音楽を奏でている様な芸術的な美しさがあった。

 ぶつかり合う武器の音がリズムを刻み、怒号や悲鳴、そして切断音がメロディを合わせ、踏み鳴らす足音がベース音を奏でる。


 しかし、その中に一つの横槍ノイズが入った。

 発生源は、先程後ろに飛ばされた赤羽根の男だった。


「《風因子ウィンド・レベルⅤ・拡散スキャーリング竜巻トルネード》――――」

「……っ! タマ、危ない‼」


 異変に気付いた彼は、素早くバキアの方を向いた。

 バキアの近くに残っていた一人の盗賊は、ほかの盗賊全員に向かって、大きく声を張った。


「おめぇら、『嵐が来るぞ』!」


 それは何かの隠語なのか、タマの相手をしていた盗賊たちは「おう!」と一斉に返事してから、武器をその場で捨てて散開した。


「させるか!」


 逃がさんとばかりに、タマはバキアとの距離を詰めていく。けれど…………間に合わない。


「――《エアミキサー》ァァァ‼」


 直後、タマの周りに落ちていた盗賊たちの武器が、カタカタと音を鳴らしながら浮かび上がり、タマを中心にぐるぐると回りだした。やがてそれらの回転がだんだんと速くなり――


「クソが!」


 タマは焦ったような顔をしながら、持っていた爪を縦横無尽に振り回して、浮いている武器を叩き落としていった。キキキキンと、武器同士がぶつかり合う音が五月蠅(うるさ)い。

 しかし武器達が回る勢いが落ちることはない。このままではタマのからだに傷がついてしまう、といったところで、


「チッ、しゃーねぇ」


 タマはなぜかその場で爪を仕舞い、両手を叩き合せた。当然、彼は武器の嵐に飲み込まれる。


「タマッ‼」


 しばらくして嵐が収まった頃には、彼はそこにいなかった。残っているのは、何やら赤いものだけ。


「そ、そんな……タマッ‼」


 私の見えている世界から、色が失われた。

 可哀そうな少年がいなくなり、これから起こるであろう未来を想像し、そして、今更ながら起こっている現実を自覚し――眩暈がした。


「ぜぇ、ぜぇ、ようやくあの化け物を殺れたァ」


 バキアが近づいてくる。

 そしてなぜか、前の世界でのつらい記憶も蘇ってきた。


「売りもんは亡くなっちまったが、まあ、女がいるからいいか」


 ……もう、どうでもいいや。

 私はその場で、生きる意志を持つことをやめた。

 しかし直後、バキアの肩に何者かの手が乗せられた。


「ああ? 誰だ」


 そこにいたのは――死んだ筈のタマ(かれ)だった。

なんか厨二くさい……、そして、戦闘描写ムズイ……

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