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猫目の狂奏者《バーサーカー》  作者: 来海 珊瑚
第一章 階調のアイリス
8/16

7.鎌鼬の盗賊ともう一つの人格 ♠︎

更新が安定しなくてすみません。ようやく、戦闘要素が入ってきます。

「ったく、大声出す前に周りを包囲しろって、あれほど言っただろうが。――ほぉー……餓鬼はともかく、女はなかなか上玉じゃねーかァ」


最初にまみえたヒョロい盗賊の後ろから、盗賊達の親分らしい、頭に赤い羽根飾りを付けた男が前に歩み寄ってきた。後から他の奴らも出てくる。


「オヤブン、あいつら殺っちまいますか?」

「いや、どっちも殺るな。少なくとも餓鬼は傷付けるんじゃねェ」


赤羽根の男は続けて言葉を繋ぐ。


「餓鬼の方は、顔立ちこそ幼いが悪くはねェ。それに――」


そして、彼はにんまりと顔を歪ませた。


オスの三毛猫は、高く売れる」


途端に、背中に何かおぞましい物が這い寄ってきた感触がした。


「オンナはどうしやすか?」

「そうだな……顔といい、身体つきといい、売り飛ばすには惜しい奴だなァ。テメェらの好きにしろ」


その言葉を聞いた途端、他の盗賊達の歓声が湧いた。


「っしゃー! 親分、もちろん犯っちゃってもいいっすよね!」

「ああ、当然、最初は俺が貰うがなァ」

「あ、ずりー!」


――どうする? 全員で輪姦マワすのは確定だな。ちょっとずつ脚の肉を削いでいくのはどうだ? あのカワイイ顔をズタズタにしてやるのも面白そうだな。


下品で汚らしい声を上げながら笑う盗賊達を見て、ハルカは自分の腕を抱きながら、僕の位置からしっかりと目視できるほどに震えだした。


「という訳だ。おい餓鬼、その女を自ら差し出してくれれば、もしかしたら、テメェだけでも助けてやれるかもしれねェぜ?」

「いよ、オヤブンってばやっさしー!」


誰かが言った言葉に、何が面白いのか、盗賊達は揃って気持ち悪く笑った。

それを見て、僕は唸るように呟く。


「……分かった」

「タマ⁉︎」


叫ぶハルカを目で黙らせ、優しくハルカの腕を取った。そして、ゆっくりと盗賊達の方へ連れて行く。

同時進行で、左の横ポケットに手を突っ込もうとした。だが、


「おっと、変な真似はすんじゃねーぞ」


赤羽根の男は、僕の持っている物よりも一回り大きなマナライト鉱石を指に挟んで、こちらに突きつけながら言った。


「…………」


僕は無言で、左手を握り締めたままポケットに突っ込もうとした手を下ろした。少しずつ、前へ足を進める。


「そうだァ。そのままこっち来い」


ゲヘヘと笑いながら、盗賊達は僕達を欲望の眼差しで見ていた。

一歩、前へ進む。


「もっとだァ……」


更に、前へ進む。

そして、赤羽根の男に手が届きそうな距離まで詰めた。近づいた所為で、汗などの臭いがきつい。

赤羽根の男はニタニタ笑いながら、一歩足を踏み出す。


その瞬間、左手に指輪から出して(ヽヽヽヽヽヽヽ)隠し持っていた消火用の砂を、赤羽根の男の目にぶち撒けた。


「ぬあっ…………ぁぁああああ!」


赤羽根の男がその場にうずくまったのを確認し、ハルカの腕を思いっきり引っ張って盗賊達から距離を取った。


「むうぅぅぅ‼︎ もういい! テメェら、あの餓鬼をぶっ殺せェ‼︎」


先程の言葉を撤回した赤羽根の男の台詞に、盗賊達は、ウォォと声を上げながら僕らを追いかけてきた。

木々の間を、右、左と縫うように、滑らかに走り抜けていく。こっちは身軽だからか、少しずつ盗賊達との距離を離していった。しかし、


「《風因子ウィンドウ・レベルIII・拡散スキャーリングブレイド――――」

後ろからそんな声が聞こえてきて後ろを見てみると、赤羽根の男がの周りに緑色の小さな光が無数に回っているのが見えた。

――やばい!


「伏せて‼」


ハルカの頭を押さえ込み、共に地面に倒れる。


「きゃっ!」

「――エアスラッシュ》ゥゥゥ‼︎」


直後、僕らの周りにあった木々が、全て半ばから刈り取られ、空中に飛んだ。


「――《エアミキサー》ァァァ‼︎」


続けて呪文が聞こえてくると、今度は僕らの上に飛んでいた木々がぐるぐると回りながら木端微塵にされ、木屑となって僕らの上に降り注いだ。


「おっとー、手元が狂っちまったぜ」


赤羽根の男はわざとらしくそう言いながら、相変わらずニタニタした笑みを浮かべながらこちらに近づいてきた。

横目でハルカを見てみると、目の前で起きた現実を直視できないのか、目を見開いたまま、虚空をただずっと見つめていた。


「いよ、流石親分、『鎌鼬かまいたちのバキア』の異名は伊達じゃないっス!」

「ガッハッハ、そうだろそうだろォ?」


これもまた相変わらず、盗賊達はお互い下品に笑い合う。

そんな様子でも、バキアと呼ばれた男は新たなマナライト鉱石をしっかりと握り締めていた。

ハルカはまだ動けそうにない。

周りにあった木が全て伐採された所為で、隠れようにも隠れられない。

彼女をおんぶしたとしても、確実に追いつかれる。

もちろん、彼女を見捨てられる訳が無い。

他に打つ手が無い。

どうする?

どうすればいい?


――俺の力を使うか?


もう一人の僕が、そう問うた。


いや、できない。もしも、また暴走してしまったら……あの事件の時みたいに。それが、恐い。


――言ってる場合かよ。聞いてただろ? もしあいつらに捕まったら、テメェだけじゃなく、あの女がどうなっちまうか。


……だって、


――ハルカを、見殺しにする気か?


…………っ!


――いや、言葉を変えよう。ハルカを殺す気か?


………………。


――――――――。


「……分かった」


そう呟いて、のっそりと立ち上がった。


「お? 抵抗すんのか? いいぜェ、テメェだけはぶっ殺さねーと気が……」


バキアの話を無視し、そのまま全身の力を抜いた。そして段々と、言葉にし難い変な気持ち悪さが全身から湧き上がってきた。


「――――! ――、――――‼︎」


バキアが何かを言っているが、もう、何も聞こえない。気持ち悪すぎて、そのまま身体から湧き上がってくるものに抵抗したくなる。でも、我慢しないと……


「頼むよ……僕」


やがて、僕は意識を失った。そして、

「……おう!」

――もう一人の()が、目を覚ます。

最近、表現がくどいかなと思とります。

11/8 改行を多用しました。細かい表現を修正しました。字下げしました(実際は、半角2個だけど)。

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