3.状況整理と間抜けな少年 ❤︎
しばらくしてようやく心の整理が出来た頃、私は壁に寄りかかってゆらゆらと動く炎を視界に収めながら、今までのことを軽く整理した。
――まず、あの夢のこと。言わずもがな、それは、スクリーンの中の私のことだ。
あれは、本当の私の願望なのだろうか。
確かに両親とは喧嘩してしまい、文字通り死ぬまで気まずい関係が続いたが、両親と仲直りしたいのか自分でも分からない。
ただ、どうしようもない寂しさを感じてしまう。
「よいしょっと」
胸を締め付けられる感覚に耐えられなくなってきたので、小さく声を漏らしながら、勢いよく立ち上がった。そして、とりあえず洞窟の中を探索すべく未だに燃え盛っている薪を松明代わりに、奥の方へと進んで行った。
――後は、あの少年のこと。
会話している途中で突然態度が変わったのが、どうしても気になる。他にも、なぜ、こんなところに一人でいるのか、そして、最後の妙な言葉。
「……うん?」
洞窟の奥の光景を見て、私は思わず声を漏らした。
「わぁ…………」
しばらくその光景に目を奪われていたが、慌てて意識を取り戻し、その場からくるりと反転した。
一応、この場所の光景を頭にインプットする。
――そう言えば、どうして言語で意思疎通ができているのだろう? 普通に考えれば、そんなことは不可能なはずなのだけれど。
「うーん…………」
まあ、考えても仕方ないか。異世界転生ものの小説では、大体はなんだかんだ言葉が通じているものだし、これもその例に漏れていなかったというだけだろう。
そんな楽天的なことを呑気にも考えた。
「はぁ……」
元の焚き火の場所にたどり着いた時、考えすぎた所為か軽く偏頭痛がしたので、また、私が眠っていた場所に座った。
そう言えば、彼はどのくらいの間私の看病をしていたのだろうか。彼は私が空から落ちてきたと言っていたが、どのような経緯で落ちてきたのか分からない。パジャマが濡れていたことから察するに、向こうに見えるあの変に淵が抉れた池に落ちたのだろうか。高いところから落ちたら普通身体がバラバラになるどころでは済まないはずなので、とても信じられないけれども。
――ぐ〜。
ああ、そう言えば、食べ物も探さなければ。そろそろお腹が減ってきた。
これでも植物のことに関しては人一倍詳しい自身があるので、何か食べられる野草があるかもしれない。私の知っている植物に巡り会えるかは分からないが。
いや、いつまでも悩んでたって仕方ない。とりあえず行動しなきゃ。
「すぅー……ふぅー…………よし」
さっきとはまるで違った世界と化した洞窟の外へ、一歩踏み出した。
池から少し離れた瓦礫の山辺りに近づくと、さっきの男の子が半ばミイラの様になって倒れていた。
……………………。
「えぇ⁉︎ ちょ、ちょっと!」
こ、こういう時はどうすればいいのだろう? そうだ、人口呼吸! いや、AEDが先だっけ? あれ、AIDが先だっけ?
「……うっ」
「ひぃ! き、気付いた⁉︎ 待ってて、今からMDMAを持ってくるから」
「待って……それが何かは知らないけど、嫌な予感がするから待って」
すると彼のお腹から、ゴロゴロと機嫌が悪そうに大きな音が鳴った。
「お腹が……痛い」
お腹が痛い? 何か変なものでも食べたのだろうか。
よし、少しだけ冷静になろう。ひー……ふー……よし。
「あ、そうだ。何か薬草探してくる!」
そう言って私は、その場からそそくさと立ち去り、野草探しの旅に出た。そして、彼の姿が見えなくなってきた頃にあることを思い出す。
そう言えば、異世界の植物、全く分からないや。
うーん、思っていたよりもコメディしてますね……。
11/8 改行を多用しました。
12/20 表現を修正しました。