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天空聖戦 ドローン.ストライク  作者: シマリス
動乱の幕開け。
6/34

太陽神からの賜物~光のミニヨン、闇のルージュリアン。

マナトリア朝暦995年。 MH-995




(ふくろう)の森。






(((カーン カーン)))




鬱蒼(うっそう)とした木々が繁る(ふくろう)の森に斧を振るう音が響く。



『あなた…少しお休みになったら』



夫である天人(ミストラル)の額から流れる汗を拭き取る妻の美空。



二人には五歳になる息子の(ブァン)がいた。



ブァンは生まれつき、足が不自由で(いま)だに立って歩くことができずにいた。



そこで、父のミストラルは梟の森にあると言われる聖木で、車椅子を造ることにしたのである。



草木をかき分け斧を振るっては、辺りを見回すミストラル。



『これほど探しても見付けられないとなると、聖木の話は、やはり伝説上のお伽噺(おとぎばなし)だったのかもしれない…』



ミストラルは、ひとつ大きく溜め息を吐いて、近くの木に寄り掛かった。




美空がミストラルの寄り掛かった木の根本を指差し(ささや)く。




『あなた! その木の根本、青白く光っているわ。』



美空の、その声に振り返った ミストラルは、光る木の根本に斧を振るった。




(((カーン カーン))




『聖木の(ルミエール)…間違ない!』



『この木で、ブァンの車椅子を造ることにしょう!』



ミストラルは手早く聖木を切り出し車椅子を組み立てていった。



『あなた…車椅子を聖木で造ると太陽神からの賜物があると以前、私に話して下さった事がありますね…』



『私の願いが叶うかしら…』



ミストラルは、美空の方を向いて深く(うなづ)いた。



美空は笑顔を浮かべて、水を汲みに近くを流れる小河の方へ駆け出し、水筒を水辺に浸した。



すると美空の手元に、上流から竹で編んだ(かご)が流れ着いた。



籠の中を覗くと、沢山の花に囲まれた女の子の赤ちゃんが満面の笑顔で、こちらを見ていた。



美空は、思わず大きな声でミストラルに声を掛けた。



『あなたー! こちらへ来てくださる!』



ミストラルは車椅子を造る手を休め、美空の元へ駆けつけた。



二人は竹籠の中で笑っている赤ちゃんを見詰めて、その後、視線を合わて、そっと呟いた。



『ブァンの妹ができたね。』




『あなた…この子の名前は(ミニヨン)にしましょう。』



その時、梟の森、空高く虹の光輪が現れた。



『太陽神様、天からの賜物と祝福に心より感謝いたします…』



ミストラルと美空は、その場に膝まづき

天を仰ぎ祈った。






…………………………………………………………………☆








その頃、王都エマールでは……☆






《王城.ガリウス王の寝室。》






『私は、もう、そう永くは生きられまい…』



『ドンデン……あの者が聖剣エメダリオンを携えておるとは夢にも思わなかった……』



『闇と光、二振の剣を同じ国に置くと、滅びもたらす。』



『彼の者と共に聖剣エメダリオンは、シャンソニアへ留め置く。』



ソフィア妃の手を取り、微かな声で囁く様に話すガリウス。



かつての、勇者の姿の片鱗も見られない痩せた姿となっていた。



王宮医師のホーミンがガリウス王の脈動を計る。



『王様、余りお話しを、なさらない方がよろしいかと…お身体に(さわ)ります。』



ホーミン医師は、いつもの様に傷口に塗り薬をして包帯を巻き、飲み薬を調合し器に注ぎソフィア妃に手渡した。




『ホーミンよ。、金は、いくらでも出すゆえ、どんな遠方からでもよい、良薬を調達してくれぬか……』




ソフィア妃は、痩せ細ったガリウス王に器に満たされた薬を飲ませた。



ホーミン医師はソフィア妃の願いを汲み王の寝室を出た。



『まだ、死なれては困る…』



『わしの、量子理論が正しい事を世に知らしめるためには、まだ、金が足りぬ。』



『後、五年もすれば、わしの孫、愛娘(まなむすめ)が支配する理想郷(アルカディア)ができあがる。』




『わしも、(よわい)65じゃ…愛娘の喜ぶ顔を見るまでは死ねん!』



ホーミン医師は、腰を曲げて杖を付きながら階下にあるロィヤ王子の部屋を訪ねた。



((コンコン……))




ドアの磨りガラスに写る影を部屋の中から見ていたロィヤ王子は、無言でノブを引いてホーミン医師を招き入れた。



『ロィヤ様…もう間もなくで、ございますよ。』



『あなた様が、この世界を支配する時代が直ぐ側まで来ております。』



『わたくしの孫娘、ルージュリアンが、どうしても、あなた様と添い遂げたいと申しております。』



『町娘という身分を承知で、お願いしております。』



『この、余命、幾ばくもない年寄りの願いを聞いてくださるのであれば、あなた様を帝王の座へとお連れいたします。』



ホーミン医師は、そう言うと杖を、ひと振りして叫んだ。



(いで)よ! 闇の王冠!』



大跳躍(クオンタムリープ)!』



すると、ロィヤ王子の前にある円卓に、天上の宝石アルビレオ王冠が姿を現した。



赤と青の二重星の輝きは、真理の言葉と量子理論の申し子を現していた。



ホーミン医師が王冠の二重星を指差した。



『この青い星は、あなた様です。』



『そして、隣に寄り添う赤い星は、わたくしの孫娘、ルージュリアンにございます。』



『この王冠は、二人が一つになつた時、無尽蔵(むじんぞう)の力を発揮いたします。』



ロィヤ王子は、深く頷いて、ホーミンに応えた。



『必ずや、ルージュリアン殿を、私の妃にいたします!』



『血の契約により宣誓いたしましょう!』



ホーミン医師は懐刀を取りだし、自分の(てのひら)を、わずかに切り円卓に置かれている王冠に注いだ。



その後、懐刀をロィヤ王子に手渡した。



ロィヤ王子も、同じ様に(てのひら)をわずかに切り王冠に血を注いだ。



『契約は、成りましたぞ!』



『この、ホーミン、身命を尽くして、ロィヤ王子にお仕えいたします!』


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