ロイヤル三世、戴冠式。00
時は3年前………………☆
ロイヤル三世、治世暦、元年【AB-00】
《王都、エマール》
鳩の群れが、蒼天の空に羽ばたく。
厳そかなセント.ルミナス大聖堂の鐘が、王都の街に鳴り響く。
パレス広場から王城へ続く王冠の道を華やかな衣装を纏った長い行列が進む。
その中にあって、ひときわ威光を放つ四頭立ての、羽飾りの付いた白馬車。
戴冠式へ向かう、シャベリア.ブロウ王子の姿が民衆の目に映る。
手を振り笑顔で応える王子に沿道の国民が手に白い羽を持ち歓喜のエールを贈っている。
その中に一目、新国王の姿を見ようと群衆を、かき分け人々の間を縫って最前列へと進み出た希望と彼の妹、友の姿があった。
『お兄ちゃん、今度、王様になるブロウ王子て優しい顔してるって聞いたよ。』
『王子様、早く見たいなぁ~♪』
友は笑みを浮かべながら希望に語りかけた。
『ブロウ王子は、とても、お人柄の良い方で国民から、すごく愛されているんだよ。』
『先王が崩御されてから国母ソフィア様の願いで摂政として国の政治を任されているんだ。』
『余分な兵隊を減らし家へ帰して農園や漁港に力を入れるよう民を導いた賢い王子なんだ。』
『ブロウ王子の威光で国民の暮らしは、だいぶ豊かになったんだよ。
『友が使える、お金が少し増えたも、王子様のお陰だね』
『うん、増えたねー♪』
アミは屈託のない笑顔で応えた。
『ブロウ王子の国王即位を記念して新しいお金、ブロウGOLDが、全てのエマール国民に配られたんだよ。』
『しかも、持っていった古いお金を2倍のGOLDで交換してもらえたんだ♪』
『これで悪徳商人たちや、悪い役人たちが溜め込んでいる偽GOLDは、全て使えなくなる。』
『王城へ換金に来た悪い奴らは皆捕まってしまうね!』
希望の話しに友も頷いて応えた。
『本当に賢い王子様!』
『これで、わるーい、お医者さんホーミンとガロン隊長も捕まっちゃうー!』
辺りを見回し大きな声で話す友の口を慌てて塞ぐ希望。
行列の馬車からカーテンを微かに開けて覗きこむ王宮医師のホーミンと将校ガロンの姿。
行列中ほどになると、煌びやかなブロウ王子が乗る4頭立ての白馬車が姿を見せた。
口を塞いだ手を離した瞬間、再び友が叫んだ。
『ブロウ王子様ーー!』
その声に気付いたブロウ王子が白馬車から、友に笑顔で手を振った。
友が希望の服の袖口を強く引いて興奮ぎみに言った。
『お兄ちゃん!、王子様が、ご挨拶してくださったよー!』
嬉しそうに、はしゃぐ友の頭を優しく撫でる希望。
4頭立ての王子を乗せた白馬車はセント.ルミナス大聖堂の前で止まった。
大理石が敷き詰められた戴冠式の式場へと入る王子。
大理石の階段を昇る王子の視線の先には国母ソフィアと聖職者の月読みの巫女が待っていた。
据えられた王座に着くブロウ王子。
国母ソフィアがロイヤル三世の即位の儀を宣言する。
『エマール王国、ロイヤル三世の御代が太陽神の祝福を受け永久に栄えんことをーーー!』
月読みの巫女が、恭しくブロウ王子の頭に王冠を載せた。
国母ソフィアは夫でありブロウ王子の父でもあるロイヤル二世、ガリウスより引き継がれた国守の剣を新国王、ブロウに手渡した。
またの名を……
サザンクロスと呼ばれる
魔剣である。
この世を乱す魔物を召喚する闇の剣。
それゆえに始祖により封印を施れ代々の王へと受け継がれてきたのである。
『新国王、ロイヤル三世に栄光あれ!!』
王座の両側に居並ぶ王族と重臣面々そして近隣より祝賀に訪れた国賓の大使たちが一同に礼を尽くす。
その列の中に、絶世の美女と詠われた隣国シャンソニア王国の姫、フランソワの姿もあった。
彼女の目的は、エマール王国と義道を結び、同盟関係を構築することにあった。
フランソワは小太りの侍女、ジューネに目配せをして、台座に載った親書を、新国王の元へ運ぶよう促した。
新国王の側近、初老のマジョロダムが進み出て侍女ジューネが差し出した台座に手を伸ばした。
ジューネは台座を離さず、親書だけを受けとるようにマジョロダムを睨んだ。
台座を受けとる受け取らないの、一悶着する二人に、国母ソフィアの咳払いが飛んだ。
『こほん!』
『マジョロダム、シャンソニア国王殿よりの親書を読み上げよ!』
マジョロダムは、ジューネを睨み付け新国王の承認を受けた親書を読み上げた。
『シャンソニア国王より、エマール王国の新国王へ、心より戴冠の祝賀を申し述べます。』
『この折に両国の永久に及ぶ発展と平安を期し我、娘フランソワを新国王の妃に推挙いたします。』
王族、重臣、国賓の間からどよめきが生じその後、大きな拍手へと変わった。
国母ソフィアと新国王ロイヤル三世が視線を合わせ微笑む。
ソフィアがフランソワの手を取り、ロイヤル三世の王座の横へとエスコートし宣言した。
『いや、実に、めでたき良きじゃ!』
『両国の間で永久の契りを結ばん!』
これを下の座から、うつむき加減に睨む人物がいた。
先王の長子でありながら、国母ソフィアの子ではないという運命を背負う黒子爵ロィア。
もの言いたげな表情で、産みの親である月読みの巫女を、しばらく凝視していた 。
戴冠式が終わり月読みの巫女が息子である黒子爵ロィアの側へ近付き小声で囁いた。
『お前は、この様な小国の王で終わることはない。』
『現世における地上の帝王となるのだ。』
『暗黒山、ゴルドバの頂へ登れ』
『お前の理想郷が、そこにある。』