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天空聖戦 ドローン.ストライク  作者: シマリス
動乱の幕開け。
3/34

言葉(ロゴス)の出現~真理郷(セオクラ)に迫る紅蠍(べにさそり)00~01



ロイヤル三世、治世暦、元年~1年【AB-00~01】





本来、人々を助けるために開発されたはずのドローンが、反乱を起こした。



科学の進歩により、従来のコンピューターシステムに取って変わった量子コンピューターの出現が要因となった。



人間の頭脳を遥かに凌駕する驚愕の思考能力を持った量子コンピューターは、政治、経済、軍事に於いて支配的存在感を現し始めた。




その究極の姿が言葉という概念。






つまり 言葉(ロゴス)である。






言葉(ロゴス)を頂点としたドローンによるドローンのための理想郷(アルカディア)、絶対帝王制が、ここに確立された。



その底辺で(うごめ)くドローンや前線兵士(ボトムソルダ)達の間から、いっしか帝王と呼ばれる仮想的存在が擁立された。



この 実態のない不条理を埋め合わせるため、言葉(ロゴス)帝国(エンパヤー)量子思考中枢回路(ルージュリアン)は頂点に1人の人物をインストールした。




彼の名前は……





シャベリア.ロィヤ





エマール王国の第一王子である。





本来ならば、エマール王国の主としての座にあるべき存在であったが運命の糸に翻弄され(みずか)ら放浪の道を選んだ人物。



それゆえに、人々からは黒子爵と呼ばれ権勢の(かや)の外的存在として扱われていた。



抑圧された彼の心の中に内在する深い信念と強靭的な魂の雄叫びが、言葉(ロゴス)という顕現者を造り出したのである。




『神の領域まで届く、摩天楼を築く!!』




『我は、全てを支配する言葉(ロゴス)帝国(エンパイヤー)の支配者となるのだ!!』




『ドローン.ストライク[究極の力]は我の手中にあり!!』





この強い信念が量子コンピューターの中枢思考回路(ルージュリアン)に多大な影響力を及ぼした。



本末転倒、理想とは全く違う支配的社会システムが、ここに確立された。



エマール王国は二分された。






新興独立国






言葉(ロゴス)帝国(エンパィヤー)の誕生である。





陸戦型ドローン、通称、紅蠍(べにさそり)により、都市や町や村は襲われ人々は言葉(ロゴス).帝国(エンパイヤー)へと拉致されていった。



天まで届く摩天楼の建設のために、強制労働を()いる監視兵からの(むち)が人々の背中に飛ぶ。



この様な社会体制を誰が望んだであろうか。



いつしか奴隷となった者たちは伝説上の存在であるガリウスの丘に立つ救世主(マスター)女神(テラ)へ救いを求めるようになっていた。




天地の創造主、太陽神が救世主(マスター)女神(テラ)を使わしてくださり、この窮状からの救いを必ず我らに、もたらしてくださると……







……………………………………………………☆








暗黒山、ゴルドバの(ふもと)





真理郷(セオクラ)





『姉貴!』



『本当に戦う気かい!』




山の巨人として、その名を知られるモンテニユーが、真理郷(セオクラ)の族長カサブランカに問い(たず)ねた。




『ああ!』



『やるしかない!』



『お前も、わたしの槍の腕前、十分に知っているだろう!』



『負けはしないさ!』




困惑した表情で姉のカサブランカを見るモンテニユー。



『誰か、敵の様子を見に行かせた方が、良くないかい?』



『それは、姉貴の槍の前に立てる敵は、いないと思うけど、ここは、念を入れておくべきだ。』




カサブランカが弟のモンテニユーに視線を移して呟いた。




『その役目、誰がやる……』




族長カサブランカからの視線を避け、(うつむ)き、視線を反らす郷の兵士達。




モンテニユーが、そこで口を開いた。




『俺が、見て来てやる!』




砦の門を鉄槌を担ぎ出て行こうとする、モンテニユーの前をカサブランカが(さえぎ)った。



『お前が、砦を出てしまっては、守りが手薄になり、返って、ここが危うくなってしまう。』




『わたしが、いこう!』



『わたしが、戻るまで砦のことは、お前に任せる!』




カサブランカは、蒼天の(ストーム.スピア)を片手に砦の門を出た。




馬に股がり火の手の上がる山向こうの山猫村(ローズリー)へと向かった。



隠密行動をとりゴルドバ山の獣道を馬で走るカサブランカの背中を追う人影。



木の枝から枝へと飛び移るスピードは尋常ではなかつた。



『猿?』



カサブランカは手綱を引き馬を停め、辺りを見回した。



すると、真上の枝から何者かが飛び掛かって来てカサブランカの背後に周り喉元に短剣を突き付けた。




『油断したわね…カサブランカ』




短剣を収めて、体を空中で回転させ近くに降り立つ女。



『水臭いじゃないの!』



『一人で行く気なの?』



カサブランカが目を凝らして彼女を見た。



『疾風の山猫!』



『ローズ.リンメル!』



驚いた表情で、カサブランカが彼女に語りかけた。



『あんたの村も奴らに襲われたと聞いたけど…どうなったんたい?』



リンメルは、表情を曇らせ肩を(すく)めて答えた。



(ひど)い有り様よ……』



『老人から、幼子まで捕まえられ奴隷として山の向こうへ連れていかれたわ…』



『家は焼かれ、畑は荒らされ、もう村の形さえ残っていない…』



山猫村(ローズリー)は、この世から消えたのよ!』



カサブランカは蒼天の(ストーム.スピア)を地面に立てて馬から降り、リンメルに語りかけた。



『済まなかった…もう少し早く気が付いたら、援軍に駆け付けたものを……』





『……………………………………。』





(しばら)くの沈黙の後、リンメルが口を開いた。



『終わった事は、もう取り返しはつかない…こらから先の事を話し合いましょう。』



『わたしの村の有り様は、決して他山の石ではないわ。』



『奴らの進軍進路からして、明日は、あなたの真理村(セオクラ)が標的にされるのは、目に見えている。』



『先手を打って、罠を仕掛けるのよ!』



山猫リンメルに先導され、森が開けた丘の上から行軍するドローン陸戦部隊.紅蠍(べにさそり)の群れに視線を送るカサブランカ。



『思ったより、数が少ない……』



『ざっと、数えても百体(ひゃくたい)もいない…』



カサブランカが、リンメルに訊ねた。



『あのぐらいの部隊なら、お前の村で十分に守りきれたのではないか?』



リンメルは服の袖を上げて切り傷を見せた。



『裏切り者により、門が開放され一気に攻め込まれて守る体制を取れず、わたしの村は総崩れとなったのよ……』




『さっき、油断したわねと、あなたに言ったとこだけど一番に油断していたのは他でもない、この私だったと言う訳……』



カサブランカは同じ村長(むらおさ)としての立場から、涙を堪えて顔を背けるリンメルの気持ちが痛いほど分かった。




敵の状況を確かめカサブランカは、リンメルの(てつ)を踏まないように彼女に助言を求めた。



『内部に敵の斥候(スパイ)がいないか、先ず確かめて!』



『そうでないと、外からと言うより、内から滅ぼされるわよ。』



『次に、村の周囲に穴を掘り奴らの進軍を食い止める』



『勝たない迄も、負けない戦ができるわ!』



カサブランカは、深く(うなづ)いて、リンメルの手を取った。



『今日から、お前は私の強い味方だ。』



『私の参謀として、側にいてほしい。』



二人は、固く手を握り義姉妹の誓いを立てた。



リンメルは首に下がっていた、山猫村の村長(むらおさ)を現すネックレス外しカサブランカの首に掛けた。



『あなたと行動を共にします。』



『私の山猫村(ローズリー)の弔いをさせてください。』



『姉上様!』




王都エマールへと進軍するドローン陸戦部隊.紅蠍(べにさそり)の前哨戦が始まろうとしていた。


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