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天空聖戦 ドローン.ストライク  作者: シマリス
生まれ出ずる星、去り散り行く星。
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デリアサス開戦~死闘、カサブランカ、バロンの刃に倒れる。4

ロイヤル三世、治世暦、四年【AB-04】






《荒野の道、デリアサス》






中天を飛んでいた、北風の天使ミストラルが翼をたたみ、巨人モンテニューの横へ降り立った。



『いよいよ、始まるな…』


ミストラルが静かに、モンテニューに語りかけた。


『先制パンチは、この俺がくれてやるぜ!』


『あんな、鉄屑ども、なんのことはない!』


『お前は、余計な邪魔が入らぬよう、空から援護してくれ!』


ミストラルとモンテニューの間に立つ、小太りの男、民兵隊長ポルトが呟いた。


『いやぁ、モンテニュー殿がおられると、大変、心強い!』


モンテニューはポルトの肩に手を置き答えた。


『隊長さんよ!王都では、門番兵士だったらしなぁー!』


『たいした出世じゃねーか!』


ポルトは、頭を、かきながらモンテニューの方を見た。


『出世というより……左遷といった方が正解です。』


『国母ソフィア様の逆鱗(げきりん)に触れて、この有り様です。』


『国主の剣、サザンクロスが何者かにより奪われました。』


『早い話、門前で捕らえる事が出来なかった兄と俺は飛ばされたと言うことです。』


『こんな、前線より、まだ門番兵士の方が、どれ程、良かったか…トホホ…』



『まぁ! 俺たちの、足引っ張らないよーに頑張んな!』


勢い盛んなモンテニューを(なだ)める様にミストラルが口を挟んだ。


『モンテニューよ…お前の力に敵うものは、この世におるまい。』


『しかし、戦は一人で、するものではないこと忘れるな。』


『くれぐれも、前に出過ぎて、孤立しない様にしてくれ。』


モンテニューは、大きな高笑いをした後、(こぶし)(てのひら)を叩いて見せた。


『ミストラルは、相変わらずの心配性だなぁー!』


『なぁにぃ! 俺の姿を見たら敵さんも逃げ出すさ!』


モンテニューは、後ろを振り返り、ポルトに訊ねた。


『見掛けない、隊長さんがいるようだが…あれは誰だ?』


『ロレンソのお坊さんです。国王の命を受け補給部隊として、来たようです。えーと名前は……』


『そうそう、シャーマンとかいう方です』



『俺とは、どうも反りが合わないようで、距離を置いてるようなん

です……』


ミストラルが顔を曇らせてポルトに言った。


『戦の前に、仲違いは、敗戦の要因になる、早目に仲直りしておいた方がい。』



『ポルト指揮官殿の部隊は、連射式砲でしたね…補給線が切られたら命取りになります。』



『武運を、祈ります。』




その時、一機の蒼燕(ブルースワロー)がロゴスの塔から発進した。


白煙を吹きながら多国籍義勇軍(ランチェスター)の前に降り立った。


ポルトが速射砲撃の合図のため、右手を上げた。


『待て、慌てるな!』


ミストラルが、合図を(さえぎ)るように前に出た。



蒼燕(ブルースワロー)から、二人の人物が現れた。


ミストラル、モンテニュー、ポルトの前に距離を置いて立ち止まった。


モンテニューが、口火を切った。


『なんだ…お前らはー!』


ポルトがモンテニューとミストラルの後ろへ隠れた震える小声で言った。


(くれない)の魔導師ルージュリアンと……』




『黒子爵……ロゴス帝王ですよ。』




呆気に取られる三人に、紅の魔導師ルージュリアンが口を開いた。


『驚いたであろう…帝王様、自ら、お前たちと交渉にいらしたのだ!』


『このまま、開戦して、あたら、命を落とすか…』


『それとも、この場で降伏し、我らの傘下に入りエマール王都の攻略の先鋒を努めるか!』


『返答を聞こう!』


モンテニューか拳を振り上げて怒鳴った。


『ここまで来て、降伏しろだと!』


『お前らこそ、俺たちの姿を見て、(おび)えているのだろう!』


『この場で万民に謝罪し、その首を差し出せ!』


『この、悪党どもめー!』


ルージュリアンはミストラルに視線を移した。


『この力ばかりの木偶(でく)の坊と話しても(らち)が開かぬ。』


『北風の天使よ 。』


『 お前を救世主と呼ぶ愚か者達がいるらしいではないか。』


『この場で、我らの傘下に入り、そのような世迷い言は迷信であるとこを示せ。』


『万民の目を覚まさせ真実に向けさせる、よい機会ではないか。』


『お前が、我らの仲間に加わるならば、帝国の半分をも与える用意があるととロゴス様が、おっしゃつたのだ。』


ミストラルは、冷ややかな笑いを浮かべ静かに口を開いた。



『流石は、漆黒の魔女の、ご令嬢だけはある。』


『大策士と聞いていたがいたが、これ程の力量の持ち主とは恐れ入った。』


『その才覚、魔王ロゴスの元にあることが実に惜しまれる。』


『お前達が、どれほど、力を誇示しょうと我らの中にいる一人の兵士も、そちらへは(なび)かないだろう。』


『例え我らが、ここで万が一、破られる様な事になろうとも、必ず神の裁きが、お前達の頭に下る!』


『今度は、こちらから、勧告する。』


『我らの足下に、ひれ伏し謝罪し暗黒山の彼方へ去り懺悔せよ!』



ミストラルの、この返答にルージュリアン高笑いが辺りに響き渡った。



『ここまで、愚かとは思わなかったぞ……ミストラルよ!』




魔王ロゴスが、口を開いた。



『ここが、お前たちの墓場となろう』




『ドローン.ストライクの偉大なる力は、我の手中にある。』




『冥土へ旅立つ前にその目に焼き付けよ!!』





帝国への投降を促す話は物別れに終わった。



魔王ロゴスと紅の魔導師ルージュリアンは、クルリと背を向け蒼燕(ブルースワロー)へ乗り込んだ。


ルージュリアンが睨みを効かせ、三人に向かい最後の言葉を掛けた。


『面白いものを、見せてやろう!』


『私が、紅の魔導師と、呼ばれる由縁はここにある。』


『目を見開いて、よく見るがいい!』


ルージュリアンは、そう叫ぶと、大跳躍(クオンタムリープ)した。


一瞬にして、その場から蒼燕(ブルースワローの姿が消え去っのである。



時を同じくして、ロゴスの塔から、長距離砲撃が開始された。




《《《ドドドドーーー~ン》》》




ポルト速射砲部隊の真ん中に砲弾が命中した。


体制を整え応戦する間もなく、混乱するポルト速射砲部隊。


敵味方の判別を失った速射砲が辺り構わず乱射を始めた。




モンテニューは、その様子を横目で睨み叫んだ。




『いざ! 開戦だぁーーー!!』








……………………………………………………☆







《王都、エマール》





『来たよーーー!!』



鉄砲塔の窓から遠くの港を指差したパピヨンが王城の門前で、蒼天の(ストーム.スピア)(かざ)すカサブランカに叫んだ。



『わかったー!』



『あんたは、遠距離攻撃、あたいは、近距離攻撃で、敵を蹴散らすよーー!!』



カサブランカの前衛部隊が、一斉に槍を真っ直ぐに突きだし構えた。



《《バキユーーーーン》》



スナイパーパピヨンの放った弾丸が迫り来る帝国兵士(ボトムソルダ)を次々と狙い撃つ。



《《バキユーーーーン》》


《《バキユーーーーン》》



帝国兵士(ボトムソルダ)が、王城へ続く登り坂辺りで、仰け反り倒れてゆく。



親指を立てサインを送るパピヨン。



カサブランカが、得意満面のパピヨンに叫ぶ。



『あたいにも、楽しみ残しておきなよーー!!』


門前に、パピヨンの放った弾丸を、かいくぐった帝国兵士(ボトムソルダ)が迫り来る。


『ヤーーーーーッ!!』


一斉に槍を突き出すカサブランカの前衛部隊。


帝国兵士(ボトムソルダ)たちは剣を手に立ち向かうが、リーチの差は埋められず次々と槍の前に倒れてゆく。



しかし、多勢の帝国部隊は数にものを言わせて門を突破してゆく者もいた。



後方で待機していた鉄砲部隊は、迫り来る敵に恐れをなし戦意喪失して城の塔へ逃げ込んだ。



カサブランカが鉄砲塔のパピヨンに視線を送った。



《《バキユーーーーン》》



パピヨンは十数名の帝国側(ボトムソルダ)の内、何名かを仕留めたか残りは城の中へと侵入して行った。



『しまった!』



パピヨンが(つちびる)を噛む。



カサブランカがパピヨンに叫ぶ。



『前の敵に集中しろ!』



『城の中は、ガリバーとリンメルが固めている!』



カサブランカが門の中へ侵入しょうとする帝国兵士(ボトムソルダ)を蒼天の(ストーム.スピア)で薙ぎ倒す。



《《うおりゃーーーーつ!!》



カサブランカの(ストーム.スピア)が風を切る。



《《ストーム.ツイスター!!》》



カサブランカを囲む帝国兵士(ボトムソルダ)が宙を舞う。



やかて、地面に叩きつけられ動かなくなった。



『これで、おおかた片付いたか……』



槍を地面に立て、パピヨンに視線を送った。


鉄砲塔のパピヨンが再び坂道を指差した。


紅蠍(べにさそり)が来たーー!』



カサブランカは、再び蒼天の(ストーム.スピア)を取った。



『城門を閉めて城内に撤退だぁーー!』



カサブランカと鉄砲塔から降りてきたパピヨンが両開鉄城門を閉める。



撤退のため城の塔、目掛け走り出すカサブランカとパピヨン。



パピヨンは玉切れになったライフル銃を庭に放り投げた。



それから、逃走した鉄砲隊が置いていつた新型銃に持ち替えた。



『これなら、玉数を稼げる!』



鉄城門が紅蠍(べにさそり)の攻撃を受け次第に壊れてゆく。



やがて、轟音を発てて城門は崩れ落ちた。



すると、一回り大きな紅蠍(べにさそり)の背中に股がり二本の剣を振りかざす銀胸立ての若い男が現れた。



パピヨンが先に、城の塔へ入ってカサブランカに手招きを送った。



『ねえーさん!』



『はやく!、はやく!』


『蠍が背中まで迫ってるよー!』



カサブランカは、パピヨンが庭に放り投げたライフル銃に足を取られて、その場に倒れた。



紅蠍(べにさそり)の部隊がカサブランカを取り囲んだ。



『もう、ムリだ!』



『パピヨン!、城の塔門を閉めろ!』



紅蠍(べにさそり)から、カサブランカを助けようと新型銃を構えるパピヨン。



《《バキユーーーーン》》



大紅蠍(おおべにさそり)の背中に乗る双剣のバロンの銀の胸当てにパピヨンが放った銃の弾丸が当たった。



ゆっくりと、大紅蠍(おおべにさそり)から降りるバロン。



包囲されたカサブランカの(ストーム.スピア)に目を移した。



『蒼天の(ストーム.スピア)……ということは、あんたが、あの三勇士の一人かい。』



『これで、三勇士の中の二人に出会えたぜ。』



『俺と差しで勝負だ!』



『カサブランカ!』



立ち上がり、蒼天の(ストーム.スピア)をグルグルと回すカサブランカ。



少し距離を置いて、青色のグリップの剣を地面に突き刺すバロン。



『お互いに、武器は1つでないとフェヤーじゃないからな。 』



カサブランカが(ストーム.スピア)を縦横無尽に回し始めた。



『奴の姿が見えねえ……』



『これが、音に聞こえた蒼天の(ストーム.スピア)の秘技!』



『これは、相手を間違えたかもしれん…しかし、今さら後へは引けん!』



バロンは覚悟を決めて見えない相手に剣を降り下ろした。



『うおおおーーーーーつ!!』



《《ガキーーーーーン》》



鈍い音を発ててバロンの赤い剣の刃が真っ二つに割れた。



次の瞬間、蒼天の(ストーム.スピア)がバロンの喉元へ突き立てられた。



『流石だぜ……真理郷(セオクラ)の三勇士』



『俺の負けだ!』



『その(ストーム.スピア)で俺を天国とやらへ連れて行ってくれ…』



『行け!……』



カサブランカは、バロンの喉元から(ストーム.スピア)を外した。



『ホゥ…………これは、お情けていう奴ですかな。 』



バロンは、背中を向けて去ってゆく。



カサブランカも、バロンの後ろ姿を見て城の塔門へと歩き出した。



その時、バロンが手に持っていた赤い折れた剣が城の塔門にいるパピヨン目掛けて投げられた。



『危ないーーーー!!!』



カサブランカが、咄嗟(とっさ)に蒼天の(ストーム.スピア)を、その剣、目掛けて投げた。



《《ガキーーーーーン》》



(ストーム.スピ)と赤い折剣が音を発てて落ちた。



命拾いをした、パピヨンが叫ぶ。



『おねーさん!』



『後ろーーー!!』



《《グサーーーッ》》



カサブランカの背中へ蒼い剣が突き刺さり貫通した。



『ぶはーーーっ!』



口から血を吐くカサブランカが、その場に倒れて込んだ。



『あんたみたいな、強い勇者は、俺にとって邪魔者でしかない!』



剣を抜き取り、倒れ込んだカサブランカの頭に足を乗せるバロン。



『俺こそが真の勇者だー!』



空を見上げ、笑うバロンが呟いた。



『そろそろ、頃合いだ……』



すると大紅蠍(おおべにさそり)の口から紅蓮の火の玉が現れ空に放たれた。



その火の玉の行方を、ゆっくりと、歩きながら目で追うバロン。



やがて、火の玉は倒れて込んだいるカサブランカの上空に達して下降し始めた。



バロンが背中をクルリと向けて呟く。




『ドローーン.ストライク!!』



火の玉は、カサブランカの屍の上に落下して紅蓮の炎を上げて燃え盛った。




『カサブランカおねさーーーーん!!』



悲鳴にも似た叫び声が、王城に響き渡る。



世に、その名を残した英雄、カサブランカは逝った。



紅蓮の炎の中から小さな綺羅星が現れ空高くに舞い上がりやがて吸い込まれて見えなくなった。








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