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天空聖戦 ドローン.ストライク  作者: シマリス
生まれ出ずる星、去り散り行く星。
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偵察機、蒼燕~漁船、忍び寄る影。04

ロイヤル三世、治世暦、四年【AB-04】






《王都、エマール》





入道雲が、オリゾン河から ロレンソ湾にかけてモクモクと、雄大に空を覆っている。


夏も盛りとばかりに涼を求めて人々が川遊びに興じる姿が、あちらこちらに見られる。


しばし、戦禍を忘れさせるような暖かな陽射しが、王都の街を和やかに包み込んでいる。



束の間の、静けさがこんなに貴重な時間なのかと、だれもが心の中で手を合わせる。





そんな或る日……





青い空に、飛行機雲の白い帯を引いて飛ぶ偵察機の姿にエマールの民が空を見上げる。



蒼燕(ブルースワロー)、真理の言葉(ロゴス)帝国(エンパィヤー)の指揮官機である。



その蒼燕に目掛けて オリゾン河に停泊する一隻の大型漁船から大砲が放たれた。



(((ドドーン)))



『親方!』



『どうして、蒼燕(ブルースワロー)に大砲なんか撃つんです~?』



『玉の無駄(むだ)使いは止めましょうよう。』



『敵の直接援護機が空母から来たときのため取っておきましょうよ……』



砲術士のパピヨンが漁船の船長であるメタボリックに助言した。



『親方ではなぁーい!』



『船長と呼べもう、肉屋の親父ではないぞー!』



パピヨンが敵の偵察機、蒼燕(ブルースワロー)を指差した。



『あ、船長ー!』



『見てください…今日は、珍しく大当りですよー!』



蒼燕(ブルースワロー)の左羽根から、黒煙が出てます。』



メタボリックは蒼燕(ブルースワロー)が飛ぶ空の方に目を凝らす。



『いや、あれは右羽根だ!』



『パピヨンよ、お前は、そろそろ眼鏡が必要だな!』



パピヨンは心で叫んだ。



『その言葉、あなたに言いたい…』



メタボリックとパピヨンの間に割って入った少女ラパンが蒼燕を指差して言った。



『真ん中の、ながーい尾羽根だから、どちらでもないよ。』



蒼燕(ブルースワロー)は、機体のバランスを崩しながらも旋回を始めた。



パピヨンが蒼燕(ブルースワロー)を見てメタボリックに叫んだ。



『大将ー、蒼燕(ブルースワロー)が、こちらに向かって来ますよ!』



『下手に手を出すから、蒼燕(ブルースワロー)も、マジ切れですー!』



『来たーーー!』



『ドローンミサイルだぁー!!』



『大将じゃない!』



『 船長と呼べ!……何度言 せるんだ…』



『何ー?、ミサイル!!、それを早く言ないかー!』



メタボリックは慌ててドローンミサイルの方角を確認してラパンに愛想笑いで手を合わせた。



『ラパンちゃん、例のアレ、頼めるかなぁ~♪』



『メタボの、おじちゃん、今夜の夕食は何~?』



『今夜は、特上の牛肉ステーキだよん♪』



『やったー!、メタボの、おじちゃんの願い、聞いてあげます~♪』



迫るドローンミサイルに、パピヨンは逃げる態勢を取った。



『悠長に、夕食の話をしてる場合じゃなぁーい!』



『メタボの親方!、わたしは、命が惜しいので、お先に河へ飛び込みますー!』



パピヨンの服の袖口を掴んでメタボリックが落ち着いた声で言った。



『まぁ待て、パピヨンよ。』



『ラパンちゃんが、なぜ、この船に乗っておるのか、今、見せてやるから。』



踊り子、ラパンが甲板の上でタンゴを踊り出す。



パピヨンは頻りにメタボリックの手を袖口から離そうと、必死にもがくが離そうとしない。



『わたしは、能天気な、お二人様と天国へは、行きたくありませーん!』



踊り子ラパンが、手を叩きながら、タンゴのステップに合わせて歌う。




『ラパパン、ラパパン、ラパパン、オレー!!』



すると、ドローンミサイルは、軌道を見失い、クルクルと回り始め、やがて河へと落ちて行った。



ダンスを踊り終えたラパンは、メタボリックの、ところへ走り寄り笑顔で話し掛けた。



『特上ステーキ、はやく、食べたぁーい♪』



腰を抜かして、ペタンとその場に座り込むパピヨン。



蒼燕(ブルースワロー)の窓から漁船を見下ろす(くれない)の魔導師ルージュリアンが、その姿に目を止めた。



『伏兵がいる……急ぎ空母へ帰投する!』



メタボリックら三人の頭上を過ぎて蒼燕(ブルースワロー)は、やがて水平線の彼方へ姿を消した。




『船長~、今日は、やけに漁船がたくさん出てますねー?』



パピヨンが蒼燕(ブルースワロー)が水平線に消えた辺りを指差してメタボリックに訊ねた。



メタボリックは額に手を充てて、日差しを遮りながら、パピヨンが指差す沖合いの辺りに視線を移した。



『ほんとだなー』



『1、2、3、4、5……まだいそうだな~』



『オリゾン河は、魚がたくさん捕れるから、ロレンソからも漁船が入ってきておるのかもしれんなー』



メタボリックは、漁船の群れを気にすることもなく、エマール岬の港へ帰港した。






…………………………………………………………☆







《オリゾン河、沖合い》





真理の言葉帝国(ロゴスエンパィヤー)巨大空母プロパガンダの艦上に立つ二つの影。




『お前の秘策、この戦局を打開できるかもしれんな…話してみよ!』



紅の魔導師ルージュリアンが、腹心となった双剣のバロンに語りかけた。



『俺は、漁村ロレンソの生まれだから、漁船の扱いにはなれてます。』



『船底は、かなりスペースがあり、伏兵を忍ばせるには持ってこいですよ!』



ルージュリアンは、遠くの小高い丘に建つ王城を眺めて、紅杖を指した。



『王城はシールドで防御されておる……』



『我らの得意とする航空戦力では、歯が立たない……』



『俺が、漁船団に集結させた紅蠍(べにさそり)帝国兵士(ボトムソルダ)を率いて王城に奇襲を仕掛けます!』



ルージュリアンは、含み笑いを浮かべてバロンに指揮護符を手渡した。



『漁船師団の指揮を預ける!』



『存分に暴れてこい!』



『私は、お前に、ここを任せて、デリアサス荒野におる多国籍義勇軍(ランチェスター)と対峙しておられるロゴス帝王の援軍に向かうとする!』



『大きな戦果を上げた暁には、お前を私の右腕として将軍に推挙する!』



バロンは、深々と頭を下げて、その後、空母からボートで漁船に乗り移った。



『今日は、闇夜……奇襲には最適な夜だ。』



『この作戦を成功させて、俺は必ず帝国の将軍に成り上がる!』



王国艦隊の指揮官を辞任し帝国側に寝返ったガロンが甲板の隅から、その様子を見ていた。



後ろから、ポンと彼の肩を叩くルージュリアン。



『王国艦隊の始末、よくやってくれた!』



『お前の働き大いに評価しているぞ。』



『あの、バロンも、やがてお前と肩を並べる将軍になるであろう……』



『足下を、すくわれぬように気を付けることだな。』



『お前と、あのバロン、どちらが先に帝国の支柱となるか楽しみにしておるぞ。』



『私は、これより荒野デリアサスへ向かう。』



『副官のお前に、空母の指揮を預ける。』



『バロンとの連携を密にして、この戦いを勝利へと導くのだ!』



カサブランカは、そう言うとクルリと背を向け、艦橋の中へと姿を消した。



しばらくすると、空母の後部甲板が開き大型長距離爆撃機ゴルドバロンが姿を現した。



大きな轟音ともに、甲板走り抜ける大鷹の(ゴルドバロン)



北の空へと高々の舞い上がり、やがて雲の中へと吸い込まれていった。









………………………………………………☆






《エマール王城、宮殿の間》





王座に座る、ロイヤル三世。



左に座る妃のフランソワ。



右に座る国母のソフィア。




三人の王族の前に、召喚された切れ者達の姿が並ぶ。



隻眼の火の鳥、ガリバー。



蒼天の(ストーム.スピア)のカサブランカ。


疾風の山猫、ローズ.リンメル。



無敵の砲術士、パピヨン.ハート。



元、門番兵士、ポルカ.ホーテ。



ポルカは、王宮詩人ヘンリーが疾走した折りに、悲しむ国母ソフィアへ綺羅びやなドレスを献上した。



昔取った杵柄の裁縫の腕を見込まれ今や

その功で部屋付き服職人となり、国母の寵愛を受けていた。



フランソワ妃がロイヤル三世に、小声で耳打ちをした。



『わたくしが、岬へ偵察に出しておりました、リンメルが陛下に是非とも、緊急にお伝えしたいことがあると申しております…』



ロイヤル三世が、リンメルに語りかけた。



『リンメルよ……申してみよ。』



リンメルは頭を上げて王に応えた。



『お伝えします!』



『岬の沖合いに、多数のシャンソニア漁船が停泊しております。』



『丘に昇り、水平線の彼方に目を凝らしておりましたら、わずかながら、帝国空母の船影を発見いたしました!』



そこで、国母ソフィアが口を開いた。



『なんと!』



『ならば、ポルカ、ポルト兄弟に代わる門番兵士を早く決め、敵の進入に備えねばー』



国母ソフィアは、カサブランカとパピヨンに視線を向けた。



『槍の女!、そして、鉄砲使いの娘!』



『今日より、門番兵士として、仕えよ!』



カサブランカとパピヨンが顔を合わせて叫んだ。



『えーー!!!』



『門番兵士て……………………なんで、わたしが』



『大切なお役目です。』



フランソワ妃が、二人に優しく声を掛けた。


『身命を、賭して、お仕えいたします……』



カサブランカとパピヨンは、渋々、答えた。




隻眼のガリバーが、アランドール王子の葬儀で、ルージュリアンとガロンが密談をしていた件を話した。



王は、少しの沈黙の後に、ガリバーのもとへ金の入った箱を側近のマジョロダム持頼みって来させた。



『これで、(わが)国の強い(イージス)となり、帝国の刃を折って欲しい!』



隻眼のガリバーは、深く敬服して、王に答えた。



『この、ガリバーがいるかぎり、王国の空は、必ず守ってみせます!』




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