解説。終結付録章(ファイナル.エピローグ)十一話~十六話。
《本編》
〈11話~20話〉
【ストーリー要約】
蒼き水 龍こと、プリンス、アランドール第三王子。
彼の目を見張るような、活躍により王都エマールの守りは磐石と思われた。
しかし、ロゴス帝王の腹心、紅の魔導師ルージュリアンの策謀により、彼は命を落とす。
代わりに、王国艦隊の指揮を執るのは副官のガロン将軍であった。
帝国側に通じている彼の指揮下に入った 王国艦隊の行く末は、まさに風雲の灯火となった。
弱体化してゆくエマール王国に、歯止めを掛けようとロイヤル国王は
同盟国シャンソニア領、ロレンソに住むフランソワ王妃の妹、クレマチスの婚約者ガリバーを召喚する。
彼は歴戦の勇者でもあり、敵からは、隻眼の火の鳥と恐れられる人物であった。
彼が王都へ召喚されている間、婚約者のクレマチスはロレンソの離宮で帝国側に通じる双剣のバロンの急襲を受け命を落とす。
そんな中、桃源郷に住む救世主ブァンの情報を掴んだエスポアールは、王都へ向かう 足掛かりを固めつつあった。
救世主を守る加護聖たちも、煌星の如く各地に現れ始め、天空決戦の舞台は徐々に整いつつあった。
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ここでは、主な登場人物と地名、そして様々な物や品について、ご紹介します。
ストーリーの世界観や展開などの理解に、お役立てください。
年齢は、ロイヤル三世、治世暦、元年の【AB-00】を基準としています。
BB=ビフォア.ブロウ【治世前】
AB=アフター.ブロウ【治世後】
【主な登場人物】
※第一章の解説で紹介した人物は、省略しています。
蒼き水龍=シャベリア.アランドール子爵[第三王子]
性別[男]年齢[22]
ガロン将軍
同盟国シャンソニアから派遣された軍事顧問。
アランドール王子の副官。
性別[男]年齢 [45]
ホーミン
王宮御抱え医師
性別[男]年齢[70]
隻眼の火の鳥=ガリバー
傭兵
シャンソニア王国、第二姫君クレマチスの婚約者。
性別[男]年齢[27]
銀翼の双剣=バロン
ロゴス帝国の斥候
クレマチスに恋心を寄せるが、断られた後に彼女の命を奪う。
性別[男]年齢[28]
ポルト、ポルカ
エマール王城の門番兵士
双子の兄弟。
性別[男] 年齢[25]
パピヨン..ハート
海賊の孫娘。
砲術士。
性別[女] 年齢[18]
ドンキー.ハート
パピヨンの祖父。
海賊&義賊。
性別[男] 年齢[60]
ヘンリー。
美少年。
王宮詩人、
性別[男] 年齢 [12]
【主な地名】
ロレンソ
エマール王国の同盟国、シャンソニア領地、漁村。
シャンソニア離宮
ロレンソにあるクレマチス姫の離宮。
父親のシャンソニア国王、ドンデンから疎まれ僻地に送られた 悲運の姫君の住まい。
嘶鳴の大滝
グラシャス。
ガリバーの戦闘機、カナリアの格納庫。
【物や品】
アスピラスィオン
クレマチスの壮麗で優美な竪琴。
聖なる石
ホーリロック。
七色に輝く 聖宝石。
加護聖の証。
※本編を選択された方は、ここを閉じて次話へ。
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この先は
終結付録章です。
《終結付録章》
……★
《第十一話》
〈壊滅!マジョリア郷~ガリバーとカサブランカの契約。〉
第三次 オリゾン河大戦と経済崩壊 により世界を自らの手に掌握 しょうと野望に燃える影の組織 。
言葉帝国。
その中にあって、中心的存在。
帝王の右腕でもある人物。
その名はトリィタァ ー.ブロミナティ。
ロゴス .エンパィヤー の帝王の間にまった三人の近隣の領主はトリィタァー の言葉を待った 。
『この、血の契約を、破りし者に は死あるのみ 』
『帝王ロゴス様の庇護のもとに 入るか、 それと も、偽りの妄想を 信じ救世主の救いを待 のか ……』
『返答を聞こう!』
大陸で唯一の女領主。
西の端に位置する地域。
マジョリア郷から来たカサブラ ンカが口を開いた。
『世の中、金次第です。』
『通貨発行権を譲ってくださるのであれば喜んでお味方しょう! 』
トリィタァー が、いぶかるよう に、首を傾げて カサブランカに答 えた。
『女! 』
『金が軍隊より、恐いこと を良く心得てておるようだな! 』
『その装い、マジョリカ(練金術士)であろう 。』
『錬金術を使われては、我らてと都合が悪 い!』
『それは、聞けぬ相談だな。』
カサブランカは、微かに笑いを浮 か て語り出 した。
『交渉決裂ということですね……』
『 それ では私は救世主に、おすがりいたしましょう。』
背を向け帝王の間を出ていくカ サブランカにトリィタァーが声を 掛けた。
『後顧の憂いを絶つために先ず は、そなたの 郷……』
『マジョリアを血 祭りにしてくれる!』
『覚悟して、待っていることだな!』
トリィタァーは、王国側から寝返った官のガロン目配せをした。
そそくさと、帝王の間を出る副官のガロン。
カサブランカは後ろ向きのまま右手を頭上 に翳して答えた。
『さて……泣きを見るのは、どちらになる やら楽しみに待っております。 』
『マジョリアは、い つでもお相手いたします!』
『我らの力が、お分かり頂けると思います!』
『驚いたぜ!』
『短いした、短歌を切ったもんだ ! 』
宮殿の柱に もたれていた傭兵の ガリバー が通 りがかったカサブラ ンカに声を掛けた。
『あなたは誰?』
カサブランカは足を止めて、その男に訊ねた。
ガリバ ーが長い髪をかき分けて顔を上げた。
『ただの片目の傭兵ですよ……女領主様』
『隻眼の火の鳥、ガ リバ ー! 』
驚いた表情を見せるカサブランカに言葉を続けるガリバー。
『俺のことをご存知とは、これはまた光栄です。』
『戦が始まるんなら俺を雇わ ねぇか…… 』
『損は させねえよ!』
カサブランカはコートのポケットに手をやった。
『相当、腕に自信があるようね…』
彼女は金塊の入った袋をガリバー に前に投げた。
『前金です…… 後の半分は、仕事が終 わった後に。 』
金塊を拾い喜ぶ仕草でポケットにしまいこむガリバー。
『流石は錬金術を使うマジョリカ!』
『この仕事、引き受けたぜ!』
『これで、当分は楽をして暮らせそうだ。』
ガリバ ーはカサブランカをカナ リア号に乗せ て、マジョリアシ ティを目指した。
『久し振りの大仕事、腕が鳴るぜ !』
『おや ?』
『ご丁寧に、お見送りが、いらっしゃいましたか!』
カナリア号の背後から十数機の三 足鴉がミサイ ルを発射しながら追 尾してた。
カナリア号は切りもみ回転しながら、ミサイル を回避し急上昇し た。
それを、追う三足鴉、戦闘機の群 れ。
カナリア号は雲の中に隠れて見え なくなった。
しかしその後、再び姿を現し、あっとい う間に、三足鴉の後部に付 いた。
『いゃ ほぅー!』
『火の鳥乱舞!』
《《ヒュンヒュンヒュン》》
隻眼の火の鳥と言わしめた炎の槍が三足鴉の群れに乱れ飛ぶ。
黒い爆炎を吹き上げて次々に墜落す る鴉の群れ。
『流石だわね…… 良い買いものしたかも しれない。』
『 ー騎当千の強者、頼りにしてい るわ 』
カナリア号は 白煙を靡かせ魔法の郷マジョ リアの上空まで来た。
窓から郷の城壁を見下ろす二人の目に両肩に ケットランチャー持った太った男が城壁 に立っている姿が写った。
《《ドドドドーーーーーン》》
ロケットランチャーが放たれた。
それを見たガリバーが、思わず叫ぶ。
『あいつ、撃ちやがっ た! 』
城壁の上から放たれたロケット弾はカナリア号をかすめて後ろの三足 鴉を撃墜した。
『フゥ …何だ?』
『 こっちを狙ってたんじゃなかったの か……』
ガリバーはカナリア号を城壁の広い踊り場に降ろした。
機内からカサブランカが降り太った男の 方へ歩み寄る。
男は彼女の抜群のプロポーションと美形に圧倒 され、おもわず、怯んだ。
『この辺では、見掛けぬ顔だけど、どこから来たのかしら?』
カサブランカの問いに男が頭を掻きなが ら答えた。
『東の方……??』
重ねてカサブランカが訊ねた。
『目的は何? 』
『 名前は? 』
ロケットランチャーを傍らの壁に下ろして彼は答えた。
『名前はポルカ。』
『マジョリアには金塊があると聞いてきた。』
『俺の腕を買ってくれないか。』
困惑の表情を見せるカサブランカ。
ポルカが地平線の彼方を指差し呟 いた。
『敵が来たよ!』
帝国陸戦戦車部隊の列が砂煙を上げて近づいてくる。
カサブランカとガリバーが驚いた表情で呟いた 。
『どこに、隠れていやがった!』
ガリバ ーは素早くカナリア号に 乗り込み戦車部隊の迎撃に向 かった。
しかし戦車部隊はマジョリア を横目に次 第に遠ざかっていっ た。
カサブランカとポルカは東の方 に視線を移した 。
『王都エマールが狙いか!』
カナリア号はマジョリアの危機 が去ったことを 確認して帰還し た。
『王都に救世主はいるというのは本当か否か……確かめてみる価値がありそうだ。』
『一山、もうけ話がありそうな予感がする。』
『王都エマールへ援軍を頼みにゆくわ』
『急いで!』
カサブランカを乗せたカナリア号は、王都エマールを目指し白煙を吹き飛び立った。
しばらくした後、戦車隊の最後尾から核弾頭を積んだドローン.ロケット車両が姿を現した。
『帝王 ロゴス様にに逆らった者の!最後だ! 』
トリィタァーの指示を受けた副官ガリバーが叫ぶ。
『目標 マジョリア!』
『撃て!!』
《《《ドドドドーーーーーン》》》
ドローン.ロケットは、紅蓮の炎を吹きマジョリアの郷へ近づく。
眩い光が大地を包む。
《《《ピカーーーーーーーーッ》》》
凄まじい爆風の後……
マジョリアの空に、モクモクとキノコ 雲が現れた。。。
初めて大陸に落とされた核爆弾に世 界が震撼した。
カナリア号の窓から、この様子を食い入る様に見て抑えることの出来ない涙を流すカサブランカ。
『この借りは必ず返す!!』
ガリバ ーがマジョリアに手 を合わせて 祈る。
『ポルト、すまねぇ……』
…………★★
《十二話》
〈鉄槌のモンテニュー参戦!~ダイナロックの英雄ポルト。〉
マジョリア郷は、核弾頭の投下により壊滅した。
多くの人々が、大切な家族、友人、恋人、住み慣れた我が家を失い悲嘆に暮れている。
残された住民も、日々の食料にも困窮し、餓死する者も現れた。
戦意喪失した、マジョリア郷へ更なる帝国の陸戦ドローン戦車部隊が掃討作戦にでた。
『我らの恐ろしさを、骨の髄まで、教えてやるのだ!』
逃げ惑う無抵抗な市民に銃弾が乱れ飛ぶ。
ダダダダダ……倒れ込み、息絶える。
建物の影で震える、少年少女が両手を合わせて太陽神に祈る。
『神様……この、悪魔たちを私たちから遠ざけてください。救いの手を差し伸べてください。』
少年たちが、見上げる太陽の輝きの中から次第に光の玉が大きさを増して降りてきた。
光の玉は、目も眩む、閃光を発した。
陸戦ドローン戦車部隊の、激しい砲撃が一点に集中した。
硝煙が、辺りを包み込み、やがて、強い北風が煙を掃らつた。
そこには、青いオーラを全身に帯びた、巨人の姿をがあった。
少年の一人が、叫ぶ。
『マジョリアの守り神、モンテニューウ!!』
モンテニューウは右手に持つ鉄槌で、ドローン戦車部隊を、まるで積み木を崩すように粉砕した。
この様子を見ていた帝国戦車部隊指揮官ガロンが叫んだ。
『撤退せよーー!!』
『山の巨人、鉄槌のモンテニュー、現れたか!』
モンテニューに恐れをなし、反転撤退しる戦車群。
『起て!!、自由と平和を取り戻すのだ!!』
モンテニューウの、咆哮の声が四方に響く。
近隣の村々や郷から集まった人々の群れがモンテニューウを囲む。
彼らの手には玉切れしたライフ銃、鉄パイプ、ブロックの破片しかなかった。
しかし、それは彼らの平和と自由を求める証であり彼らの思いはひとつ。
モンテニューウを旗頭として帝国支配からの自由を勝ち取るその一点で心ががっていた。
マジョリア郷は核弾頭の後、荒廃と呼ばれ、かっての郷のモニュメントは巨大な一枚岩と化していた。
太った大柄の男が英雄の巨大岩、ダイナロックに登り旗を振り叫ぶ。
『ここに、ランチェスター民兵軍、ありーー!!』
『オーーーー!!』
それに、呼応して、兵士たちが雄叫びを揚げた。
大柄の男の名前は……ポルト、人は彼をダイナロックの英雄ポルトと呼んで慕った。
…………★★★
《第十三話》
〈北風の天使、ミストラル〉
幾つもの高い塔が連立する独裁政 府の中枢都市 。
その中央に偉容な姿を見せる巨 大な力の象徴 悪名高き、ロゴスエンパィヤーが
天を目指せとばかりに、未だに奴 隷となった人 々が強制的に労働を 強いられている。
監視役人が、弱り果て 思うように働かなくなっ た老人奴 隷の背中に容赦のない鞭を入れ る。
ビシッ ビシッ 老人奴隷は、空を見上げて祈る。
『救世主よ !我らをお助けくださ れ! 』
『この忌まわしき悪魔に!』
『御手の業で、裁きを!』
再び鞭を入れようとする監視役 人。
『まて 』その時、若い女の声 が、その手を制す る。
『ロゴ ス様が、そこの老人に問い 訊ねたき儀 がおありだ。
すると傍らから、黄金の冠を頭に戴くこの塔の 主が現れた。
『トリィタァー …』
『その者が預言者、ヨブか……』
威厳のある声が辺りに響き渡った。
老人に歩み寄る帝王ロゴ ス。
『太陽と月、十二の星、そして女神、その意味 を聞こう!』
預言者ヨブは帝王ロゴスを睨み付けた。
『お前なんぞに、話すことなど何もない!』
『悪魔よ!』
『救世主の裁きを受けよ! 』
帝王ロゴスはタワーから下を見下ろした。
『ほぅ…… 救世主とやらがドローン.ストライクからの救済をもたらすと信じておるのか。』
『その、救世主とやらに、今直ぐ救済を求めるとよい!』
帝王ロゴ スは表情ひとつ変えずに呟いた。
『この者の魂をハーデスへ』
トリィタァーの目配せにより、側近の 兵士たち が、ヨブを塔の縁に立たせた。
ロゴスは右手を上げてクルリと 背を向け、その 場から姿を消し た。
兵士の ひとりが ヨブを塔の縁から突き 落とす 。
『滅びよー!』
『悪魔よー!』
ヨブの声が辺りに響き渡る。
彼は塔の上から真っ逆さまに落ちる。
その時、ヨブの体が力強い手の中へ吸い込まれていった。
光輝く瞳、背中に大きな翼。
ヨブは震える声で呟いた
『あなた様は! 』
………………★★★★
《第十四話》
〈預言者ヨブ、地に立つ。〉
ドドーン ドドーン……ドドーン
立て続けにドローン爆弾の炸裂音が響く。
王都、 ロゴスエンパイヤの足元に仁王立ちする大男。
城門の衛兵がバタバタと薙ぎ倒されていく。
彼の名はモンテニューウ(その力、山の如し)
ヘラクレスを思わせる筋肉質、肩まで伸びた髪が
風に靡く様は、まさに荒ぶる若き獅子。
雷の如く、大きな声がロゴスエンパイヤに響く。
『悪魔の化身!ロゴスよ!』
『 堅牢な城壁の中で、身を潜めておらず、我の前に姿を現せ!』
塔の中程にある、中継基地から再び
ドローン爆弾がモンテニューウ目掛けて発射された。
微動だにせず、ドローン爆弾を全身に受けるモンテニューウ。
白い爆煙が、辺り一面に広がる。
やがて、爆煙が風に運ばれ、モンテニューウの姿が見えてきた。
かすり傷ひとつない、その姿が明け方の陽に眩しい。
付き従う、ランチェスター義勇軍が雄叫びを揚げる。
『エマールの守り神! 山の聖人!モンテニューウに栄光あれ!』
その時、ロゴスエンパイヤの上部から人が投げ落とされた。
義勇軍の中に北風が吹いたと、思うと
たちまち、白い光が塔の上まで昇って行き落ちた人を両手で抱えた。
『北風の天使! ミストラル様だー!』
義勇軍の民兵が口々に叫んだ。
落ちてきたのは預言者ヨブという老人だった 。
ヨブを地上に、ゆっくりと、下ろしたミストラルは義勇軍の中へ姿を消した。
預言者ヨブはランチェスター義勇軍を前に話始めた。
『 聞け! 賢き者よ!』
『 我が言葉は真実なり!』
『アスピラスィオンの竪琴の音』
『 天より響き渡りし時神の審判下らん!
』
『 悪魔とその軍勢が、空を覆い尽し』
『 太陽の光も遮りし時』
『 月よりの使者現れ、時を乱す。』
『 聞け!』
『賢き者よ!』
『 星を戴く、聖人現れ』
『救世主の玉座を守る!』
『女神は、右手を高く翳し』
『 悪魔と、その使いを滅ぼし』
『 最後の審判の言葉を告げん!』
『 我、最後の裁きを、汝に与えん!』
『 塵より取られし者よ!』
『塵に帰れ!』
《《《ドローンストライク》》》
預言者ヨブはロゴスエンパイヤを、しばらく見上げ、その後、何処ともなく、姿を消した。
…………………………★★★★★
《第十五話》
〈時を操る大祭司、月の出現。〉
ザワザワと木立を涼風が通り抜ける。
木漏れ日が揺れる、小さなテラス。
カーンカーンと、白い壁の教会の鐘が鳴る。
円いテーブルに、立て肘を付き冷めた紅茶を片手に遠くを見つめる夫人の姿。
気苦労のせいか髪に白いものが目立ち始めていた。
『お母さん、また、翔兄さんのことを考えてるのね……』
あれから、もう十年、エスポさんに連れられて行ったきり帰って来ない…』
『村の人たちと総出で梟の森を探したけど見っからなかった…』
『なかには、魔物にでも食われたのだろう、なんて言う人もいるくらいよ』
『ひどい話よね…他人事だと思って…思い出すと涙が今でも出てくるわ…』
十八歳の誕生日、花は美しい乙女になっていた。
『今日は花の誕生日だから村の人たちが、たくさん、お祝いに来てくださるそうよ♪』
『花の誕生日と翔がいなくなった日が同じなんて、皮肉な話ね…』
花の母、美空はそう呟くと桃源郷へ続く一本道に方に視線を移した。
その時、何処からともなく、馬の蹄の音が聞こえてきた…
品格のある乗馬服に身を包んだ凛々しく目元の涼しげな若者の姿。
腰の辺りに、男の子が掴まっている。
『あそこが、翔の光の教会です。』
男の子の言葉に若者は光の教会の庭先で手綱を強く引くて馬を止めた。
(((ヒヒーン!!)))
辺り一面に白馬の嘶が響き渡った。
母親は持っていたティーカップを倒し、駆け寄る…
『翔なの!』
『あなた翔なのね!』
若者は男の子を馬から下ろし被っていた帽子を取り美空と花の方へ歩み寄った。
傍らには帽子を深く被った男の子が寄り添っている。
『初めまして…わたくしはシャーマンのラビと申します。』
『こちらのご子息、翔君の御母上様と妹君が、こちらにおられると、このエスポ君から聞いて参りました。』
『この子がエスポ君なわけないよ!』
『あの時、私と余り歳の差がなかったし、もう十年も経って今は大人になっているはずよ!』
いぶかしげに花が横から口を挟んだ。
エスポは帽子を取り顔を上げた。
銀貨30枚の袋をポケットから取り出しテーブルに、そつと置いた。
驚く美空と花。
『あなた、希望君なのね!』
『ぼくは三日間で、この光の教会へ帰ってきました。』
『美空さんと、花ちゃんの様子を見て驚いたところです。』
美空は声を詰まらせながら瞳に涙を浮かべて翔の事を希望に訊ねた。
『翔は今、どこで何をしているのかしら…』
『どうして家に帰って来ないの』
希望君、わたしに分かるように話してくださる………』
希望は唇を噛み締めながらその場に塞ぎ(ふさ)込んだ。
『美空のおば様』
『本当にごめんなさい』
『ボクは取り返しの付かないことを、してしまいました………』
みかねたシャーマンのラビが、そこで口を挟んだ。
『その事について、お話しするために私はここへ来ました。』
『どうぞ、気をしっかりと持って、落ち着いてお聞きください。』
『わたくしの時計では三日前、こちらの世界では十年前の事となります…』
………………………………★★★★★★
《第十六話》
〈女神テラ、降臨の予兆。〉
『花、今日は、あなたの誕生日なのよ』
『サァ、笑顔で村の皆さんをお迎えしましょう♪』
母の美空は不機嫌そうな花の表情を見て呟いた。
『村のみんなは、どうせ、私じゃなくてパン目当てなのよ!』
『お母さんも、人が良すぎるのよ!』
『 あんな人たちに愛想笑いなんかて!』
『花、声が大きいですよ。』
『皆さんに聞こえます…』
『お母さん!』
『私、みんなに聞こえるように言ってるのー!』
花はテラスのテーブルの前に立ち、お祝いに来た人々に手作りのパンを分けた。
『皆さんに、失礼のないようにね…』
母の美空は、そう言うと紅茶を取りに部屋に入って行った。
『十八歳のお誕生日、おめでとうございます~♪』
老夫婦がパンを受けとりながら、花に祝いの言葉を掛けた。
ペコリと頭を下げる花。
『花ちゃんは、この村の女神様じゃ♪』
花は機嫌を良くし、おばぁちゃんに、余分にパンを渡した。
『花ちゃん……ありがとう』
老婆は花の手を取り感謝の言葉を述べた。
『おばぁちゃん、この布にパンを繰るんで持っていってね…』
花の細かな気遣いに涙する老婆。
その後ろから小走りで走り寄る三人の少年少女。
『花お姉ちゃん!』
『お誕生日おめでとうございます~☆』
『僕たちにも、パン、たくさん、もらえるのかなぁ~♪』
『あなたたち、今の見てたのね!』
鼻を啜りながら屈託のない笑顔で花を見つめる少年たち。
『もう、あと2本しかないわ…』
『仕方ないわね…チョツト待っててくれる。』
花は、そう言うと、2本のパンをクルリと二度回して軽く叩いた。
すると、2本のパンが4本になった。
花は、三人の子供たちにパンを渡して残りのパンをクルリと回して更に本数を増やしていった。
バスケットの中は、出来立てのパンでいっぱいになった。
『花お姉ちゃんは、手品師ダァ!』
『すごいー!』
『みんな、みんな!』
『聞いて、聞いて!』
少女が近くにいる村人に、花の奇跡を話して回った。
花の周りは村人で、人だかりとなった。
騒ぎに気付いた母の美空は、紅茶を運び終えると花の所へ駆け寄った。
花のバスケットに溢れるパンを見る美空。
『もう、隠してはおけないわね、全てを話す時だわ。』
ロッキングチェアに腰掛け紅茶を飲みながら、その様子を伺うシャーマンのラビがポッリと呟く。
『女神の降臨も近し!』
桃源郷の一本道を光の教会の方へ長い柏ノ木の杖を付き歩く老人の姿に目を止めるシャーマンのラビ。
『預言者……ヨブ』




