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天空聖戦 ドローン.ストライク  作者: シマリス
動乱の幕開け。
2/34

開戦!、王都エマールへの空襲。03




ロイヤル三世、治世暦、三年 【AB-03】







《王都、エマール》






『ドローン.ミサイルだぁー!!』




漆黒の翼を輝かせ、王都の空を侵犯する帝国直接掩護機(ちょくせつえんごき)の空襲である。




三本の長い噴射口を持つその容姿から、通称、三足鴉(さんそくがらす)と呼ばれ、王都の民から恐れられていた。




『助けてー!』




『おー!、……神よ我らを救いたまえ!』




空を覆い襲い掛かる三足鴉の群れに逃げ惑う人々が、口々に救いを求めて叫び声を上げる。




王都エマールは大陸の北端に勃興した真理の言葉(ロゴス)帝国の侵攻を受けていた。




王国を二分する戦いの発端(ほったん)はエマール国の先王、ガリウスの崩御(ほうぎょ)に伴う世継ぎ争いだった。




シャベリア家、第二王子ブロウを推す現体制と、黒子爵こと、第一王子ノィアを王座に着けようと反旗を(ひるがえ)した革新派との間で起こった争乱である。




両者の確執は日を追うごとに深まってゆき、双方とも一歩も譲らない姿勢を崩すことなく、最悪の事態、武力衝突という解決策へ進んだのである。





《《カーン カーン カーン》》





時計台が空襲警報の鐘を鳴らす。





(((ドドドドーーーン!!)))




王都のモニュメントから黒煙が上がる。




シンボルマーク である高い時計台に、ドローン.ミサイルが発射された。




時計台守(とけいだいもり)の老人が叫ぶ。




『おのれー! 』




『帝国の手先め!』




『神の住まわれる、神聖な王都に、なんたることを!』




『必ず神罰が下るぞー!!』





老人は時計台の一角から三足鴉を目掛けてライフル銃を構えた。。。。。




《《カチッ カチッ》》




(しき)りに トリガーを引くが弾が出ない。



『えーい!』




『なんじゃ、これは?』




『ドンキーとかいう、闇商人に(まが)い物を(つか)まされたわい!』




老人はその場で地団駄(じだんだ)踏んで(くや)しがり、使い物にならないライフル銃を時計台の窓から外へ放り投げた。



時計台の下を偶然、通り掛かった女砲術士パピヨン.ハート。




彼女の前にライフル銃が空から落ちて来た。




『これは……天からの恵み!』




『太陽神に感謝いたします…パロール』




彼女は天を仰ぎ祈りを捧げてから、ライフル銃の安全装置を外し、空を滑空する三足鴉、目掛けてトリガーを引いた。




《《バキューーーーーン》》




『おー!』




『グッジョブ!』




彼女は親指を立て、それからライフル銃を背中に回して王城の方に視線を移した。




『肉屋の大将から、もらった仕官の話し、今度こそ、物にしなくては!』




『あー!』




『遅刻、遅刻、急がなきゃ!』





『ドンキーの親父、もう王城に着いてるかな…?』



『これで、海賊家業とも、お別れだ……』




時計台の横を走り抜けるパピヨンが二人の兄妹(きようだい)に声を掛けた。




『こんな所にいちゃ、危ないよー!』




『早く、安全な場所へ避難しな!』





横目でパピヨンを見送る兄妹(きょうだい)




『じっちゃーん!! 』




『早く逃げるよー!!』




『危ないからー!』




『降りてきてー!!』





老人の2人の孫が、時計台の下から叫び声を上げる。




幼い少女、(アミ)が、希望(エスポアール)の肩から、ぶら下がっているリュックを(つか)んで離さない。




震える声で彼に、しがみつく。




『おにーちゃん!』




『こわいよー!』




時計台守の老人が、2人の孫に叫ぶ。




希望(エスポアール)よ!』




(アミ)を連れ、(プランタン)橋を渡り、(ふくろう)の森を抜け、桃源郷(とうげんきょう)へと逃げるのじゃー!』




『わしは、この時計台を離れる訳にはいかん!!』




『早く、行くのじゃー!!』





希望(エスポアール)は、(アミ)の手をしっかりと()ぎり、妹の視線の高さまで姿勢を低くした。




(アミ)、絶対にボクの手を離しちゃダメだよ!』




『おにーちゃん!』




『 こわいよー!』





希望(エスポアール)は妹、(アミ)の手が、恐怖で小刻みに震えているのを感じていた。




『だいじょーぶ!』



『 さぁ! …… 行くよ!』




彼は妹を気遣い、自分自身の不安を払拭(ふっしょく)して、頼りがいのある兄を演じていた。



それが、今の希望(エスポアール)に出来る最大限の勇気だった。



時計台が次第に(きし)む音を()てながら、傾き始めた。



そこへ更に追い討ちを掛けるように、ドローンミサイルが数発、命中した。





(((ドドドドーーーン!!)))





時計台が、ゆっくりと(かたわ)らを流れるオリゾン河へ倒れ込んでゆく。



最上階の窓から、老人が最後の力を振り絞って叫ぶ。




『桃源郷へ着いたら、救世主(マスター)を探すのじゃー!!』



『決して、忘れるでないぞー!!』



『王都を必ずや、救ってくださるー!!』




時計台は轟音(ごうおん)を発てて海面に叩きつけられた。



高い波しぶきがあがり砕け散つた。



やがて海底へと沈んでいった。



その後、老人はオリゾン河に呑み込まれ、その姿は見えなくなった。



その光景を涙ながらに見る兄妹(きょうだい)




(アミ)! 』





『急ぐよ!』





兄妹(きょうだい)は一路、(プランタン)橋を目指し駆け出した。



その時、オリゾン河から、幾つもの砲弾が、帝国直掩機=三足鴉、目掛けて、撃ち放たれた。



次々、墜ちていく三足鴉の群れ。



何が起きているのか、今の状況を全く把握(はあく)できない希望(エスポアール)



彼は妹、(アミ)の手を引き桃源郷へ続く道を走った。




瓦礫(がれき)の山を、かき分けて進むと、太陽の光を受けて(きら)めくオリゾン河と、大きく対岸へ架かる(プランタン)橋が、遠くに見えて来た。



希望(エスポアール)の視線の先、オリゾン河の沖合いにエマール王国艦隊の勇姿が映る。




更に、その先に視線を移すと真理の言葉(ロゴス)帝国の巨大空母プロパガンダから三足鴉が次から次へと飛び立つていた。



オレンジ色の噴煙を引きながら自由自在に青い空を飛ぶ赤い戦闘機の姿が王国民の視線を集める。



『火の鳥、カナリアだー!』



『頼むぞ!』



『隻眼のガリバー!』




老人から幼子まで王国民すべてが、カナリアを見上げ、空に向かい、(こぶし)を上げる。



火の鳥、カナリアを目掛けて、襲いかかる三足鴉の群れ。




火の鳥は空高く舞い上がり雲間へ姿を消した。



これを追う三足鴉もまた、雲の中へ入ってゆく。



三足鴉の3倍の飛行速度を誇るカナリア号は次々に敵の背後を取る。





《《ヒユーーーン ヒューーーン》》




火の鳥、奥義




【炎の矢】




《《ガガガガガーーーン》》




三足鴉を粉微塵(こなみじん)に撃ち落とす。



撃ち落とされた三足鴉は、オリゾン河へと、高い水しぶきを上げ消えてゆく。




『何者だ…………』




『新手の援軍かと思われます。』




帝国空母プロパガンダの艦橋から、この様子を伺う二つの影。



黒子爵ロィヤこと真理の言葉(ロゴス)と紅の魔導師ルージュリアンである。



『敵の士気が高い……ルージュリアン、何故(なぜ)だかお前に分かるか。』



『我らの動きが先に読まれているようです。』



『敵にも、お前に匹敵するような、かなりの切れ者がおるようだな。』



『帝王様…この戦、勝算がありません。』



『撤退命令を、お出しください。』




軍師であり伴侶(はんりょ)でもある紅の魔導師ルージュリアンの進言に真理の言葉(ロゴス)が応えた。




『全軍!、理想郷(アルカディア)へ撤退せよ!』




三足鴉は撤退命令を受け、空母プロパガンダへと帰艦してゆく。




この機を逃すまいと、王国艦隊の若き指揮官、プリンス.アランドール王子が追撃を開始した。




帝国空母プロパガンダに向けて、王国艦隊から大砲が放たれる。




『三列砲火!!』




(ほのお)の槍!!』




『撃てーーーー!!』





《《ドドドドドーーーン》》





指揮官アランドール王子の命令一下、王国艦隊から、次々に赤く燃える弾頭が帝国空母へ放たれる。





《《ドドドドドーーーン》》





空母プロパガンダの船体が(ほのお)の槍の砲弾を受け、大きく揺れ黒煙を上げる。




紅の魔導師ルージュリアンが手に持つ紅杖(トマホーク)(かざ)し叫ぶ。




大跳躍(クオンタム.リープ) !!』




帝国空母プロパガンダは、一瞬にしてその場から姿を消した。




民の歓喜の声がエマール王国の空に響く。




『王様と妃に、永久(とわ)の栄光あれーー!!』





王城の窓から、この様子を見ていたロイヤル三世と妃のフランソワが顔を見合せ微笑む。




『妃の気転で、私の王国は危機から救われた……』




優しく妃の手を取りロイヤル三世が(つぶや)いた。



フランソワ妃は、王室のドアの向こうで控えている側近、疾風の山猫(ローズ.リンメル)に王の背中越しに手を上げた。



リンメルは故郷を帝国により滅ぼされた仇を打つために妃の側近として仕えていた。



彼女の名声は真理郷(セオクラ)の三勇士として、大陸全土に響き渡っていため妃の信頼も大いに厚かった。



真理の言葉(ロゴス)帝国(エンパィヤー)との初戦はエマール王国の大勝利で幕を閉じた。




しかし、これは、これから訪れようとしている悪夢の前触れでしかなかった…………



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