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天空聖戦 ドローン.ストライク  作者: シマリス
集い寄る星々。
19/34

ルージュリアン、リンメル、ガリバー、バロン、絡み合う運命の糸04






ロイヤル三世、治世暦、四年【AB-04】





《王都、エマール》






『この雨は、きっとアランドール王子の涙の(しずく)でしょう。』



詩人ヘンリーが、馬を連れて城の門の横に立ち呟いた。



傘を差し、何やら長い手荷物を馬の鞍に乗せて、(むち)を入れ走り出す。



『国母ソフィア様のお使いで、何処かへ出掛けるのかな?』



慌てた様子で馬で走り去るヘンリーの姿に視線を送る門番兵士の二人。



『国母ソフィア様も、とにかく人使いが荒いよなぁ~』



『まったく、同感だぜ!、何年、門番兵士やらせる気だろうなぁ~』



『城の内は、国母ソフィア様の、お気持ち次第でコロコロ変わるから、下の者はたまらんよ……』



門番兵士の話を、門の影で聞き耳を立てる、フランソワ妃の侍女ジューネが、コホンとひとつ咳払いをした。



『しまった!、俺たち、終わったなぁ~トホホ…』



門の前に、しやがみこみ、肩を落として頭を垂れる兄弟。



彼らの前に 綺羅びやな金の装飾が施された鞍を着けた黒馬が止まる。



毛並みの良い馬に股がる妖艶な美女。



そぼふる小雨に濡れた彼女の姿は男たちの視線を集めていた。



ポルト、ポルカの兄弟門番兵が美女に歩み寄り訊ねた。



『アランドール王子の葬儀に来られたのですか?』



『失礼ですが、名前をお聞かせください。』



沈黙している美女に、戸惑う門番兵。



そこへ、後ろから近付いて来た、ガロン将軍の恫喝の声が響いた。



『おぬしら! 下がっておれ!』



ガロンが美女に声を掛けた。



『これは、(くれない)の魔導師、ルージュリアン殿。』



『定刻通りのお越しとは、恐れ入ります…』



ガロンは、手のひらを上に向け、千年杉の大木の下にあるテラスへ、ルージュリアンを案内した。



ルージュリアンは、手に持っていた金塊の袋をテラスのテーブルへ放り投げた。



『お前の希望(のぞみ)の品だ! 受けとれ!』



『今回の手腕は見事であった……』



『アランドールの奴め、天国で、さぞかし我らの策謀に()まった事を悔しがっておろうな。』



ルージュリアンの高笑いが響く。



ガロンは、辺りを見回して人影の無いことを確認した。



『ルージュリアン殿、声が大き過ぎます…他の者に聞かれたら、事が露見してしまいますぞ。』



ガロンが小声で呟いた。



『そのように、萎縮しておっては、大事も成せぬ。』



ルージュリアンはガロンの襟首を掴んで、更に言葉を続けた。



『艦隊の指揮権を得た気分はどうかな……ガロン将軍殿。』



『近いうちに、再度、王都へドローン爆撃を行う。』



『今回のお前の役目は、艦隊をオリゾン河へ沈めることだ。』



『事が成就した暁には、山ほどの、金塊をお前にやろう。』



『どうだ……悪い取り引きではなかろう。』



ガロンは愛想笑いをして答えた。



『も、勿論でございますよ~』



『流石は、錬金術に通じておられる魔導師様』



『これからも、良しなに、お取り計らいください。』



ルージュリアンは、高笑いをして、黒馬に乗り鞭を入れた。



『ガロン、期待しているぞ!』


『今度の戦が楽しみだ!』



黒馬に鞭を入れて走り出すルージュリアンの後に、少し遅れて駆け出す茶色の馬があった。



『あれは……妃の側近、ローズ.リンメル!』



『今の話しを、聞かれたのでは……』



ガロンは走り抜けるリンメルの姿を横目に城の中へと消えた。



しかし、この話しを大木の影で聞いていたもう一人の男がいた。



傭兵の身でありながら、正規軍以上の華々しい戦果の持ち主。



隻眼の火の鳥、ガリバーが木陰で呟く。



『これは、国王陛下に、高く買ってもらえそうだ!』






…………………………………………………………☆






《オリゾン河岬》




ルージュリアンは、オリゾン岬の影に停めてあった蒼燕(ブルースワロー)のところまで馬を跳ばして来た。



馬を降り、沖合いに停泊している巨大帝国空母プロパガンダに視線を移した。



ルージュリアンは、蒼燕(ブルースワロー)の方まで歩き出してピタッと足を止めた。



『誰だ!』



『翼の影に隠れているのは!』



ルージュリアンの、その声に姿を現した人影。



彼女は、持っている紅杖を構えた。



『疾風の山猫!』



『ローズ.リンメル!』




『生きていたのか!』




その言葉も終わらぬ内に、ローズ.リメルの体が宙を舞いルージュリアンが手に持つ紅杖を短剣で払い落とした。



慌てて紅杖を拾おうするルージュリアンの先手を打って紅杖に足を乗せるリンメル。



『あなたも、この杖が無かったら、ただの弱い女!』



大跳躍(クオンタム.リープ)で逃げることも、戦うこともできない!』



リンメルは、紅杖を足で払い、ルージュリアンの手の届かない所まで跳ばした。



『我の運命も、山猫の牙に、掛かり、ここで尽きるか!!』



ルージュリアンは覚悟を決めて、その場で目を閉じた。



『山猫村、そして義理姉カサブランカ、同士モンテニューの恨みの刃!』



『ここで、果たす!!』



『覚悟ーーー!!』



疾風の山猫ローズ.リンメルの体が宙を舞い氷の刃がルージュリアンの喉元、目掛けて迫った。



《《カキーーーーーン》》



リンメルの短剣を払い()ける二つ剣を持つ男。



リンメルは、体をのけ反らせて体勢を整えた。



『邪魔をするな!』



『お前は誰だ!』



リンメルが男に叫ぶ。



両手に異様に長い剣を持ち銀色の胸当てはシャンソニアの将軍の紋章が刻まれていた。



『済まない!、双剣のバロンよ!』



バロンから、紅杖を受け取りルージュリアンは、バロンを盾にして蒼燕(ブルースワローに乗り込んだ。



『お前を、用心の為に、呼んでおいて命拾いをしたぞ!』



『バロンよ!、お前を今日より我の側近とする!』



ルージュリアンを追いかけようと、駆け出すリンメルを双剣が(さえぎ)る。



『知ってるぜ…あんたのこと!』



『亡国の三勇士、ローズ.リンメル!』



バロンの2本の剣が行く手を阻む先で蒼燕(ブルースワロー)が沖合いの巨大帝国空母プロパガンダへ飛び立って行った。



その場で、ガックリと肩を落とし座り込むリンメル。



『あと少しで……仇を取れたものを。』



バロンは双剣を収めて、黒馬に乗り鞭を入れ走り出した。



『あんたには、何の恨みも無いが(あるじ)を守るのが家臣の努めだ。』



『あんたも、宮勤めなら分かるはずだ』




『悪く思わないでくれ!』




その後、バロンはオリゾン岬を越えて姿を消した。







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