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天空聖戦 ドローン.ストライク  作者: シマリス
集い寄る星々。
18/34

双剣のバロンと隻眼のガリバー。03


ロイヤル三世、治世暦、三年【AB-03】




テラ大陸、北の端、長閑(のどか)な漁村。


《シャンソニア領. ロレンソ》



透き通った海面に珊瑚礁帯(エメラルドリーフ)(まぶ)しく映える。



『今日の海風は、気持ちがいいな~♪』


岸壁に腰を下ろし、遠くの水平線へ視線を送る隻眼の武骨な男が呟いた。


王都からの使い、国王の側近、マジョロダムが隻眼の男と話しを終えて馬車に乗り帰って行く。


それと入れ替わるように、長いブロンドの髪を海風に靡かせた、年若い乙女が彼の元へ走り寄ってきた。



『ガリバー♪』


元気に手を振る彼の婚約者(フィアンセ)、クレマチス。


息を弾ませながら嬉しそうにガリバーに話しかける。


『シャーマン牧師様が、今度の新月の日に私たちの、式を挙げてくださるそうよ~♪』


ガリバーは、満面の笑みを浮かべるクレマチスの腰の辺りを両手で(つか)んで、持ち上げ喜びの声を上げた。


『そうかー!、これで俺たちも晴れて夫婦ということだなぁー♪』


堤防の上から 、この様子を伺っていた、背中に長い二本の剣を差した長身の若い男が、二人に声を掛けた。


『ガリバー、カナリア号を近々、降りるそうだな…』


『この村は、まだ平和になったわけではないのに、お気楽なことだ。 』


『ドローン帝国が、この村にも迫っている、このご時世に、空を離れて漁師にでもなるつもりか!』


ガリバーは、優しく婚約者のクレマチスを下ろして呟いた。


『俺はもう、戦いはたくさんだ…傭兵家業も今回の仕事で終いにするつもりだ。』


『これからは、こいつと、一緒になって幸せな家庭を築くつもりでいる。』


バロンはクレマチスの方を向き直り話し掛けた。


『クレマチス……お前を怒らせたことは謝る。』


『シャンソニア王国の姫、美人姉妹の一人が、なぜ、こんな男を選ぶのか、俺には理解できない!』


『もう一度、俺とやり直せないか?』


バロンは懐から、たくさんの金貨が入った袋を取り出してクレマチスに手渡した。


『こんな漁師に着いていったら、一生、苦労するのは目に見えている…』


クレマチスは金貨の入った袋をバロンに投げつけた。


金貨が辺り一面に散らばる。


この様子を見ていた、通りがかりの少年達が急いで金貨を拾い集め、逃げ去った。



クレマチスが首を横に大きく振って叫ぶ。


『バロン! あなたは、いつもお金、お金の事しか頭にないのね!』


『私は、お金や家柄より、この私自身を愛してくれた、このガリバーに着いていくことに決めたの!』


『それに、あなたの悪い噂も聞いているわ!』


『帝国のスパイだって!』


『そうやって、お金をたくさん、稼いでいるんでしょう!』


………………………………


暫くの沈黙の後、バロンが重い口を開いた。


『わかったぜ!、お二人さん』


『帝国がこの村を滅ぼす迄の

短い春を、精々幸せに暮らすんだな!』


バロンは、捨て台詞を残して、その場を立ち去った。


クレマチスはガリバーの方を向き直り、彼の首の辺りに両手を回して微笑んだ。


『二人で、幸せな家庭を作りましょうねー♪』


『子供も、たくさん欲しいわ~♪』


クレマチスの、眩しい笑顔にガリバーが答えた。


『おう!勿論(もちろん)だぜー!』


クレマチスが視線を堤防の方へ移し呟いた。


『あ、牧師様だわ~♪』


馬車を堤防脇に停めて、シャーマンが笑顔で二人に手を振って挨拶した。


『これから、桃源郷へ巡礼に行くところです。』


『式の前日迄には、ロレンソに帰る予定でいます。』


『また、式でお会いしまししょう!』


牧師のシャーマンは、そう言うと馬に(むち)を入れて馬車を走らせた。


ガリバーは、クレマチスの方を見て話し掛けた。


『お前と楽しく暮らすために、最後の大仕事を終わらせてくる!』


『ロイヤル国王様、直々のお達しなんだ。』


『お前の姉さん、フランソワ妃の進言もあったそうだ。』


『直ぐに終わらせて、お前の元へ帰ってくるので、暫く待つていてくれるな。』


クレマチスは、ガリバーの瞳を真っ直ぐに見て答えた。


『ガリバー、あなたのこと、待っているわ。』


『姉さんには、私のこと、何も心配しないでと伝えてね。』



二人は暫しの別れを惜しみ、軽くキスを交わした。


その後、 ガリバーは、カナリア号、通称( 火の鳥)が格納されている嘶鳴の滝へと向かった。


一方、 クレマチスは、シャンソニア王国の離宮が立つ見晴らしの丘へ戻って行った。



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