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天空聖戦 ドローン.ストライク  作者: シマリス
集い寄る星々。
15/34

ブァンの受難~ミニヨンの奇跡。04


ロイヤル三世、治世暦、一年【AB-04】





《桃源郷》



ミニヨンは桃源の丘から裾野の村まで延びる緩やかな細い坂道を下り


遠くに見えてきた光の教会をを指差して、車椅子を押すエスポアールに嬉しそうに呟いた。


『見えてきた~♪』


『あそこが、わたしと、おにーちゃんの、お家ー!』


屋根に十字架と太陽の円が重なる紋章を見て、エスポアールは笑顔で答えた。


『光の教会だね…』


ミニヨンは手を後ろに組みながら、前屈みの姿勢で微笑んだ。


『そうだよ~♪』




ブァンと車椅子を押すエスポアール、そしてミニヨンの三人が、笑いながら村の入り口に差し掛かった時


路地から、五人の少年たちが躍り出てきた。


リーダー格の大柄な少年が三人の行く手を遮( さえぎ)る。


『ブァン! 見つけたぞ!!』


『お前の、父親のせいで、俺たちの父ちゃんは戦争に駆り出されたんだ!』


『噂では、誰も生きて帰れないて言ってたぞ!』


少年たちは手に持つていた小石を、ブァンの車椅子目掛けて投げた。


その中の、ひとつが真っ直ぐにブァンのところへ飛んできて、彼の額に当たった。


エスポアールはブァンを、少年達が投げる小石が届かない安全な場所まで遠ざけた。


気性の荒いミニヨンが、この状況を黙って見ているはずはなく、彼女は大きな声で叫んだ。


『あんたたちー! 何するのよー!!』


『おにーちゃんを、いじめる子は、わたしが、ゆるさなーい!!』


少年達はミニヨンを指差して、お腹を抱え笑い出した。


『こんなチビに何ができるー!』


少年達は再び、小石を拾いブァン目掛けて投げる。


ミニヨンは少年達を睨み付け、片手を高く(かざ)して叫んだ。


『悪魔のこども! いなくなれー!!』


すると、少年達が投げた小石は途中から方向を変えた。


『うぁー! 石が 、こっちに、向かってくるー!』


慌てて逃げたす少年達の背中を幾つも石が追い掛ける。


『あのチビ! 化け物だぁー!!』


『覚えてろー!』


捨て台詞を残し、少年達は蜘蛛の子を散らすように逃げ去った。


ミニヨンは車椅子の兄の元へ走り寄り、心配そうに額の傷を見て


(わず)かに(にじ)み出ている血を、ハンカチで優しく拭き取った。


『おにーちゃんは、わたしが守るよ!!』


ブァンはエスポアールの方を向き直り、話し掛けた。


『今、見たことは、誰にも話さないでください。』


『妹は太陽神から祝福を受けた少女なんです。』


エスポアールは、深く頷いて答えた。


『わかったよ。ボクと君、そして妹さんだけの秘密にしておこう。』


ミニヨンは、王都から来たエスポアール事を母の美空に知らせるため、一足先に光の教会へ入って行った。


エスポアールは、足が不自由で思うように行動の取れないブァンの心の内を察して遠慮がちに話し掛けた。


『君の、その足、歩けるようになるかもしれないよ…』


『梟の森に癒しの湖という所がある。』


『この湖の水に浸ると、すべての病は癒されると言われているよ。』


『君さえ、よかったら、連れて行ってあげられるんだけど…』


『訳あって梟の森にある修道院に妹を置いてきているんだ。』


『救世主を見付けた後、王都へ帰る途中、梟の森へ立ち寄るつもりでいるよ。』


ブァンは、エスポアールの気遣いに感謝の言葉を返した。


『ありがとう』


『とりあえず、今は、光の教会にいる、母に王都の様子を話してください。』


『父の事を気に掛けている母を、少しでも安心させてあげたいのです。』



エスポアールは軽く頷いて、車椅子を押し、光の教会へと入って行った。



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