中庸付遍~マナトリア王朝滅亡~神像の丘に立つ老人。MH-995~AB-03
《☆作者からの一言アドバイス♪》
【中庸付偏】を最初に、ご覧、頂く事をお薦めします。
時間をタップリと掛けて内容を楽しみながら読破したい方にお薦めです。
一方、速く読了したい皆さんは、解説だけを追ってみて下さい。
物語りの概要を短時間でスピーディーに走り抜けることができます。
※また、第七部からは、本編と終結付録章の二つにストーリーが分岐しております。
本編を読み進める方は終結付録章を外してお読みください。
さぁ、この世界の扉を、ご一緒に開き物語りの旅へと歩みを進めましょう!
【中庸付編】
この付編では、物語りの舞台であるテラ大陸について、細かく説明を加えています。
三次元的な視点を文字に落とし込むことにより、読者である、あなたの疑問を腑に落とすことが目的となっています。
ご一読下さるならば、更に物語りに深みが加わることでしょう。
テラ大陸の面積 - 約762000平方km
テラ大陸の海岸線の長さ - 約2000km
デリアサス荒野の面積 - 約300平方㎞
テラ大陸の平均標高 - 約300m
テラ大陸の最高峰..暗黒山
標高-2222m
マナトリア山脈に 降った雨は大陸の大河オリゾンへ流れ出る。
大陸の 北西部は大半が乾燥した荒野。
人々は比較的、雨 の多い海岸部やオリゾン河流域周辺に居住し ている
。
テラ大陸には マナトリア連山や桃源郷、梟の森、更に真理郷といった山地や深い森林地帯も広がっている。
北部からは南部にかけて荒れ地が分布する。
この地では、デリアサス決戦が繰り広げられた。
ガリウスの丘にある神像の石は10 億年以上も前の岩石。
ロレンソ沿岸には大きなサンゴ礁帯「エメラルド.リーフ」
デリアサス荒野には浸食によって形成 された巨大な一枚岩、ダイナ. ロック等が見られる。
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【第一章】
〈動乱の幕開け。〉
《マナトリア暦.995年》(MH-995)
マナトリア王朝.十五代、ホーミン治世。
時は夏冬時代。
広大なテラ大陸の東に位置するマナトリア王朝。
かっては、強大な領土を有して全土にその威光を輝かせていた王朝。
諸侯は、その権威の前にひれ伏し媚を売り、保身に明け暮れていた時代もあった。
しかし、時を経るにつれ、国王ホーミンの専横により、家臣の中から離反する者や国を出て独立の道を歩む重臣も現れ国力は次第に衰退して行った。
マナトリア王朝は内部分裂により三分割された。
各々(おのおの)に新たな王を立て大陸を我ものにせんと立ち上がったのである。
やがてテラ大陸は、力ある者による群雄割拠の時代へと移行して行く。
そんに中、衰退の一途を辿っていたマナトリア王朝の本拠、緑葉城を囲む軍勢が現れた。
マナトリアから離反した、かつての家臣シヤンソニアの領主ドンデンが、この機に乗じて反旗を翻したのである。
シヤンソニア領のドンデンは、近隣の諸侯を次々と併合して、今や緑葉城に籠る兵士の10倍の兵力を有していた。
彼は圧倒的な兵力に、ものを言わせて
、かっての主人ホーミンに降伏を促した。
ホーミンは戦わずして城をドンデンに明け渡し娘のサフランを彼の妃として差し出した。
さらに始祖から代々マナトリア王朝に受け継がれてきた至宝
聖剣エメダリオンと空の箱を貢ぎ物として娘サフランに持たせ嫁がせたのである。
ホーミンは、その見返りとして己の保身と小さな城を与えられ僻地のロレンソへと流された。
ここに、栄華を誇ったマナトリア王朝は滅んだのである。
その後、ホーミンの行方を知る者はなかった……
しかし彼が人並み外れた医学と科学の天才的識者であることは全土に知られていた。
その後、聖剣エメダリオンを手に入れたドンデンはシヤンソニアの王を号した。
彼は更なる野心を抱き自らの王朝を大陸に建てようと領土を広げる方針に出た。
かって共にマナトリア王朝で重臣として肩を並べていたガリウスが治める独立国エマール。
この地を手に入れ全土に威光を示し皇帝の座に着くと豪語した彼は意気揚々と進軍を開始した。
しかし、遠征に次ぐ遠征で兵士は疲弊し、また慣れない土地での戦いを強いられ逃走する者まで現れた。
ドンデン王はオリゾン河の大戦で大敗をを期した。
ガリウス王の巧みな戦術と懐柔策が効を奏しシヤンソニア軍は多くの兵を失い敗走した。
そんな最中、ドンデン王は捕らえられた。
エマールの王ガリウスはドンデンに情けを掛けて属領として使えるならば、国へ還すと約束した。
シヤンソニア国は、都と隣の漁村ロレンソを残して、全ての領土をエマール国へ割譲した。
時代はシヤンソニア王国の時代からエマール王国の全盛期へと移った。
ガリウス王は、テラ大陸の都を金が大量に産出されるエマールに定めた。
そして暦歴も、マナトリア暦からロイヤル暦へと改号したのである。
彼は妃の父、神聖シャベリア家の老師を始祖とし、ガリウス自信はロイヤル二世と称した。
遷都を記念しオリゾン河を望む丘をガリウスの丘と命名した。
そして、国教である太陽神の象徴して国民から信仰を集める救世主と女神の神像を建てた。
ガリウスは、神聖シャベリア家からソフィアを妃として迎え入れていたため、太陽神の地上に於ける代理者としての立場を得たのである。
故に(ゆえ)に、その父.老師から国主の剣.サザンクロスを受け継いだ。
これで名実とも彼の威信が全土に伝わり晴れてテラ大陸の主となった。
この物語りは、そんな時代の変遷期から始まる………………
【 天、 空、 地】
【太陽神の、愛から、出でし】
【輝かしい、光を、享受せんことを】
【万物の創造主、叡知の源に、栄光が】
【永久に、あらんことを】
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ロイヤル三世、治世暦、三年【AB-03】
《王都、エマール》
オリゾン河を見下ろす、ガリウスの丘にある神像。
そこに嵌め込まれた、十二の加護聖の装飾が施された、 宝石板。
刻印された文字を読む、ひとりの青年がポッリと呟いた。
『この神像は、いつから此処に、あるのだろう……』
『そして、誰が何のために、創ったのだろう……』
神像に魅せられた、 青年の興味は尽きない。
玉座に鎮座する救世主と 、その傍らに立ち、右手を高く翳す女神。
テラ大陸の都、エマール王国を見守る守護神であり、国民の精神的支柱でもあった。
青年が、神像に見入っていると、背中を杖のような物で軽く突っく、長い白髪と髭を蓄えた老人が立っていた。
『名は何と言う……』
老人が青年に訊ねた。
『希望です。』
老人は彼の目を真っ直ぐに見て微笑んだ。
『良い名じゃ……気に入った。』
そう言うと彼は、神像に嵌め込また 宝石板を外した。
途端に宝石板は、光輝く剣エメダリオンへと形を変えた。
その後、十二の小さな輝く石が現れ蒼天の空へと舞い上がり八方へと飛び去った。
老人は希望の手を取り、聖剣エメダリオンを渡して、除に語り出した。
【蔭、極まれば陽となり、陽、極まれば蔭となる。】
【全てのものは、二者一対、闇は光を呑み込み、光は闇を祓う。】
【地の神像に光を、空の月に闇を置く。】
【これを天より見守る。】
『希望よ! 』
『 万民が塗炭の苦しみに喘ぐ時、そなたが国民を導く旗印となれ!』
『国民の希望となるのだ!!』
老人は、そう彼に言い残すと神像の丘を下り、遠くに見える梟の森の方へと姿を消した。
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『お兄ちゃん~』
芝生の上で、いつの間にか寝てしまっていた希望に、声を掛ける妹の友。
彼女の高い声に希望は目を覚ました。
『友、……』
『お兄ちゃん、お爺ちゃんが、早く、帰って来い、だって。』
『あれ…………何?』
友がオリゾン河の沖合いを指差して希望に訊ねた。
希望は、額に手を翳して、太陽の光を遮り、友が指差す方角に視線を移した。
『マストの旗はドクロに牛の角のマーク…』
『あの船は義賊、ドンキー.ハートだね。』
友が、希望の顔を覗き込んで言った。
『お爺ちゃんは、海賊船だって、言ってたよー』
『お爺ちゃんが、心配するから、早く、帰ろうよー』
妹の友が希望の腕を頻りに振る。
『あ!……』
希望は、神像の足元に嵌込まれていた宝石板が無いことに気が付いた。
『あれは、夢ではなかったんだ……』
彼は沖合いから港へ近付く義賊、ドンキー.ハートの船を遠目で見ていた。
小走りに帰宅を急ぐ妹の友。
彼女の手招きに急かされて希望は神像の丘を下った。




