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風が運ぶもの~閉じた世界からの風景~
誰もが知っていて
その内部を知らない場所
祈りの時計塔の秘密
誰とも言葉を交わすことなく
空を眺め過ごす少女
鳥のさえずりと風を友として
語りかけている
見えるのは建ち並ぶ家の風景
豆粒のようにうごめく人形達
少女は知らない
それが街であること
それが人の営みの姿で在ることを
ただ感じているのは違和感と淋しさを
無意識で感じとっている
少女は形に出来ない心を囁く
風は囁きを遠くに運んでゆく
その行き先は風しか知らない
遥かな場所に拡散された声 は
誰かの耳に届いたけれど
そのことを少女は知らずに
今日も空を見上げ
近くて遠い別世界を
小さな窓際から見ている
世界を知らずに少女は祈り続ける
世界を守る礎という生け贄であることを知らずに
自身の声が確かに誰かに届いたことを知らずに
孤独を友にし続ける
いつか扉が破られる日まで