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君と出会う仮想世界  作者: にほしそ
プロローグ
2/3

第2話 ― バグ

第1~2話は一年前に書いたものを改変せずそのまま載せております。

 ゲームスタートしムービーが流れた後、俺は浮遊感を感じた。

 そして気が付くと町の中へ移動していた。


【右手首に装着されているコンソールのボタンを押してください。】


 画面の下部にそのようにガイダンスが表示されていたので、俺は右手首を確認した。

 右手首には腕時計のようなコンソールが付いており、時間も確認できる。そのコンソールの時間表示されている下部に大きくボタンが1つあり、それを押した。

 ブンッと言う効果音と共に、コンソールの外周部に備えられている各種ボタンについて説明が出た。ステータスや装備、スキルや所持アイテムなど一通りのボタンがあるようだ。


「(とりあえずステータスの確認からだな)」


 俺はコンソールのステータスを押した。


+---------------------------------+


シンヤ Lv1

Honester  0 スピル


HP[60/60] MP[5/5]

攻撃力 8+0 防御力 4+8

魔法力 2+0 抵抗力 2+3


装備

  ショートソード

  ダガー

E レザーアーマー


スキル[2/8]

【短剣Lv0】【片手剣Lv0】


+---------------------------------+


 シンヤは俺のキャラクターネームだ。そしてLvやステータスはそのまんまだろう。 Honesterについては分からないが、直訳すると誠実な人だ。

 0スピルについては恐らく通貨だろう。スピルは単位だろうから、0スピル――すなわち無一文と言うことだ。

 装備については、武器の場合は手に持つと【E】の印が付くみたいだ。試しに腰に備えられていたショートソードを手に持つと、攻撃力が8+0から8+12になった。防具はどうやら装着させるだけで自動的に装備されるようだ。

 武器には装着と装備の2種類があって、装着することで体に身に着け、そして手に持つことで初めて武器を装備できる。つまり戦闘中でも気軽に武器が変更できるのだろう。

 ただし身に付けている武器はそれぞれに重さがあって嵩張る為、色んな武器をたくさん装着して戦闘に挑むのは理想的ではない。素早さ重視にしたければ、短剣一本と言うのも良いかもしれない。素早さについては完全に本人の反射速度と敏捷性に影響するため、ステータスには載っていない。


「まさか、友人の薀蓄が役に立つ日が来るとはなぁ……」


 俺はステータス画面を見ながらボソッと呟いた。友人は俺を誘うため事ある毎にVRMMOの薀蓄を話していたので、そこら一般プレイヤーと比べても遜色がない程に情報だけは知っていた。


 次に装備アイテムの情報を見ることにした。


+---------------------------------+


 ショートソード

攻撃力 12

ランク [■□□□□□□□]


ゲーム開始時から所持している貧弱な片手剣。

安定したリーチと威力からして初心者にはお勧め。



 ダガー

攻撃力 6

ランク [■□□□□□□□]


ゲーム開始時から所持している貧弱な短剣。

素早い攻撃を可能としている。リーチが短く熟練者向き。



 レザーアーマー

防御力 8/3

ランク [■□□□□□□□]


ゲーム開始時から所持している貧弱な鎧。

頑丈な皮の鎧のため、軽くて動きやすい。


+---------------------------------+


 ざっと調べてみたが、他には特に所持していないようだ。スキルについては後ほど調べることにしよう。

 今はそれよりも調べてる間に、かなりの時間が経ったにも関わらず花梨からの連絡が一切無いことが心配になった。

 こちらから連絡を取るために俺はコンソールからエレクトロダイブの操作画面を表示させ、内線通話を選んだ。


【ゲームプレイ中に内線通話は使用できません】


 エラー音と共にメッセージが現れた。どうやらゲーム開始するとエレクトロダイブ内部の内線通話は使用できないそうだ。だから花梨からの連絡も無いのだろう。先ほどのキャラクター作成画面までは利用できるのは、内輪の仲間で遊ぶときにお互い名前を確認したりするための配慮だろう。

 俺は周囲を見渡して、花梨を探すことにした。お互い顔はリアルフェイスなので、視界に入ればすぐにでも気が付くことだろう。

 しかし――


「(やたらハゲマッチョが多いな……。そもそもハゲなんて選べたっけ?)」


 周囲にはちらほらハゲのマッチョなプレイヤーが複数居た。比率的には少ないのであろうが、あまりにも独特なので目立つ。そもそも後ろ髪以外の髪の毛はスキャニングによって設定されているので、リアルでスキンヘッドじゃなければあんな風貌にはならない。

 俺は「(リアルでスキンヘッドのプレイヤーがVRMMOでは結構居るんだな)」と納得し、とりあえず花梨をその場で待つこと数分後、ようやく花梨から連絡が来た。


トオル>シンヤ『お兄ちゃんどこー?』


 コンソールの通話ボタンが点滅すると、相手の名前が表示され声が聞こえた。どうやらゲーム上での通話機能らしい。顔は表示されず音声だけ聞こえる。花梨の音声と俺のリアルネームなので花梨で間違いないだろう。

 俺は通話ボタンを押して、コンソールへ向かって声を出した。ボタンを押しながら声を出すことでコンソール自体がマイクの役割をするようだ。


シンヤ>トオル『ゲーム始めてからまだ一歩も歩いてない』

トオル>シンヤ『あ、見つけた!!』


 ちなみにこちらから掛ける場合は、通話していない状態で通話ボタンを押すとネーム入力のウィンドウが開くので、相手のキャラクターネームを入力して通話を開始できる。と説明に書かれてあった。

 俺は花梨が俺を見つけたと言うので周囲を見渡したが、花梨の姿は見えない。

 先ほどから1人のハゲマッチョが手を振りながら俺に近づいて来てるのは気のせいだろうか。

 そしてそのハゲマッチョが俺の目の前まで来た。


「お兄ちゃん、やっと見つけたー!」

「だ、誰だお前は!?」

「えーっ、自分の家族のことも覚えてないの?」

「お前みたいな弟を持った覚えはない!!」


 俺の前には明らかに俺より年上である巨体のハゲマッチョが現れた。もしかしてあっち系の人なのだろうか。そのハゲマッチョから「お兄ちゃん」と呼ばれて俺はゾッとする寒気を感じた。早く逃げなければ「アッーー!!」と、言うようなまずいことになりそうだ。


「お、俺そう言う趣味持ってないんで!」

「お兄ちゃんったら、何を言ってるの?」

「俺はお前に何を言ってるのか、逆に聞きたいぐらいだよ!」

「あははっ、変なお兄ちゃん」

「俺か!? 俺だけがおかしいのか!?」


 このハゲマッチョの声が女なのが更に気持ち悪くしている。

 しかしこの声は聞き覚えがあるような……。


「お兄ちゃん、まさか妹の事も忘れたの?」

「いやいや、妹の事って女にすら見えないから! それに俺の妹はもっと可愛いから!!」

「やだっ、お兄ちゃんったら」


 イヤンイヤンと気色悪く腰をクネクネとするハゲマッチョ。とても気色悪いがいくら俺でもここまでくれば分かった。何が起こってるかさっぱりだが目の前の人物について誰かは分かった。


「ま、まさか。花梨か……?」

「そうだよ? 何を言ってるの?」

「そうか、俺のデバイス(エレクトロダイブ)がイカレてたのか!」

「あっ! もしかして、この姿? なんかバグだってさ」

「バグ?」


 花梨から説明されると俺は右手首のコンソールから運営からの連絡を開いた。バグならばきっとここに書かれているはずだ。

 そして、その記事があった。


+---------------------------------+


【女性プレイヤーが男性アバターになる】


 Glorious Battlers Onlineをプレイ

して頂き誠にありがとうございます。


 現在、ゲーム内にて女性プレイヤーの

アバターが男性になる不具合が生じております。

 ただいま不具合の原因を調査して

おりますので今しばらくお待ちください。


 ご利用のお客様にはご不便を

おかけしまして大変申し訳ございません。


+---------------------------------+


 運営からの連絡には、確かにそう書かれていた。


「マ、マジか……」


 俺はチラリと横に居る妹の姿を確認する。どこをどう見ても立派なハゲマッチョだ。悪いがとても妹なんて呼べない。それと俺のリアルネームでハゲマッチョは止めて欲しい。


「でも何でそんなにマッチョなんだ…?」

「オッパイのサイズが筋肉に変換されたからとかスレに書いてあったかな」

「どんだけ巨乳にしたんだよ!!」


 花梨は「えへへ」と可愛く言うが、その図体はとても可愛いとは思えない。むしろクリーチャーそのものだ。

 町中にハゲマッチョが居るのはそれら全て女性プレイヤーなのだろう。

 女性のアバターが男性に変換された不具合で、髪の毛も顔の輪郭も正常に表示されないのだろう。


「あーあ、せっかくお兄ちゃんのために大きくしたのに残念」

「ああ……。色んな意味で残念過ぎるな」

「お兄ちゃんと結婚とかしてみたかったのにね」

「それ以前に妹と結婚とかないわ」

「あ、そうだっ! この格好で結婚すればいいんだ!」

「断る! 断じて断る!! 無理無理っ、絶対に無理!!」


 クネクネとハゲマッチョが襲い掛かってきたので俺は強引に引き剥がす。気持ち悪いったらありゃしない。

 そもそもこの妹様は、VRMMOでの結婚と言うものをちゃんと分かっているのか?

 多くのVRMMOには結婚機能が存在しており、更には同性結婚も可能だ。そして結婚した後ならばセクシャル行為が強制的ではなく合意的へ自動的に変換される。これも友人の薀蓄の賜物だ。

 どちらにしてもハゲマッチョとそんな男と男の関係を結ぶなんて絶望としか思えない。


「それじゃあ、お兄ちゃん! モンスターとか倒しに行こ!」

「その図体でお兄ちゃんとか。それと女言葉はマジ止めて欲しい」

「えーとじゃあ――、兄貴! 俺と一緒に新世界へ飛び立とうぜ!」

「なお気持ち悪いわ!! すまん、俺が悪かったから止めてくれ!!」


 ギャーギャーと騒ぐ俺はハゲマッチョの花梨に引っ張られ、俺は強引に町の外へ連れ出された。


シンヤ Lv1

Honester  0 スピル


HP[60/60] MP[5/5]

攻撃力 8+12 防御力 4+8

魔法力 2+0 抵抗力 2+3


装備

E ショートソード

  ダガー

E レザーアーマー


スキル[2/8]

【短剣Lv0】【片手剣Lv0】

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