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VOL.04:幼なじみ姉妹の秘密

「峻佑ーっ! くそ、アイツどこ行きやがったんだ? おい、そっちはいたか?」

 耕太郎率いる男子一同は峻佑を追って校内を走り回っていたが、完全に見失っていた。と、教室を出たときには耕太郎を入れても6人しかいなかった集団が、いつの間にか数十人にまで膨れ上がっていた。

「いや、こっちにはいねえ。これだけ探していないとなると、もうすでに学校を出たとしか考えられないな」

 集団の中の1人が一つの可能性を提示し、「仕方ない、手分けして探すぞ。まだそう遠くへは行ってないはずだ」などと言い合いながら学校を飛び出していった。



「ふう、どうやら撒いたようだな」

 峻佑は耕太郎たちの足音が聞こえなくなったのを確認すると、階段の陰の隠し部屋――もとい機械室から出てきた。

「ケホッ……さて、ちひろちゃんとみちるちゃんが待ってるはずだし、行くかな」

 ホコリっぽい機械室から出てきた峻佑は制服についたホコリを払い落としながら校舎を出て裏に回った。

「遅かったね〜? なんかあったの〜?」

 約束の場所、校舎裏に着くと、もうちひろとみちるはそこにある大木に寄りかかって待っていた。

「ああ、ちょっとヤボ用でな。それで、今朝のことを説明してくれるんだろ?」

 峻佑は遅くなった理由を話す必要はないと判断し、ヤボ用とごまかして本題に入った。

「うん、ここならあまり人も来ないみたいね。これから話すことはあんまり人に聞かれたくない内容なんだ。だから、峻佑くんもできるだけ他のひとには言わないでいてくれるかな?」

 ちひろは辺りを伺い、誰もいないのを確かめると、峻佑に念を押した。

「ああ、大丈夫だ。あまり人から聞いた内緒話を他のヤツに話すようなことはしないからな。で、そこまで秘密にしたがる話の内容と今朝の落下事件は繋がってるのか?」

 峻佑は誰にも言わないと約束し、いろいろと考えを巡らしては首を傾げていた。

「うん、繋がってるよ。あのね、驚かないで聞いて。あたしたち姉妹は普通の人間じゃないの」

 ちひろは峻佑にいきなりそう話した。

「へ? 普通の人間じゃないって、どういうことなんだ?」

 峻佑は目の前の幼なじみから‘自分たちは普通の人間じゃない’と告げられ、プチパニック状態だった。

「落ち着いて、峻佑くん。別にあたしたちは化け物っていうわけじゃないから。あたしたち姉妹は魔法使いの血を引いてるの」

 ちひろはパニックに陥ってうろたえる峻佑の肩を押さえてそう話した。

「魔法使いの血……? すまん、もう少し詳しく説明してくれるか?」

 峻佑は頭の上にクエスチョンマークが見えるのではと思うくらい考えを巡らしていた。

「あのね、私たちの母方の家系は中世の魔女狩りで処刑されそうになってこの日本に逃げ延びてきた魔法使いの一族なの」

 みちるが自分たちの家系のことをゆっくりと話し出した。

「普通は世代を経るごとに力は薄まり弱くなっていくはずなんだけど、あたしたちの母親が何世代かに1人いるかいないかの強大な力を持っていたの」

 ちひろが後を継いで話を進めた。

「その高い能力を私たちも受け継いでいるおかげで色々な魔法が使えるってわけ。まあ、めったに使わないけどね」

 さらにみちるがその続きを話し、

「ここでようやく今朝のコトに繋がるんだけど、つまり今朝の落下事件は恥ずかしながら入学式の朝に寝坊したあたしが学校の裏門まで瞬間移動(テレポート)しようとしたら寝ぼけていたせいでミスって峻佑くんの真上に出ちゃったの。そのまま落ちたら大変だから慌てて少し宙に浮かんで、周りから見てあまり不自然にならないように峻佑くんの上に着地したの。まあ、上から落ちてくる時点で不自然なことは承知の上よ。重力を無視して着地したから重くはなかったよね?」

 ちひろが今朝の事故の真相をまとめた。

「ああ、不思議と押しつぶされた痛みや重さはなかったからな。ところで、立ち上がったときにオレの名を知っていたのはなんでだ?」

 落下事件の真相を知った峻佑が次に気になったのは、10年間会っていなかったのにちひろがすぐに峻佑のことを識別できたことだった。

「それは、そのブレスレットに魔法がかけてあって、再会できたらこっちにだけわかる光を放つようになってたの。まあ、峻佑くんがブレスレットを今もつけていてくれることが前提条件だったわけだけれど……」

 ちひろははにかみながら説明した。

「ふーん、なるほどね。でもオレにそれを話しちゃってよかったのか? まだ完全に話を信じた訳じゃないけど、たいていそういう類の物語だと能力のことは秘密にされてるんじゃないのか?」

 峻佑が納得したようなしてないような微妙な表情でたずねると、

「別に私たちはよく物語にあるような別世界から来たとかそういうんじゃないし、仮にヤバくなったらその人の記憶を消すこともできるから大丈夫よ」

 みちるがにっこりと笑いながら大丈夫だと話した、そのとき。

「しっ、誰かがここに近づいてくる気配がするわ」

 ちひろが急に表情を引き締めて峻佑とみちるに言った。

入学式の朝の真相が明かされ、ちひろたちの秘密も知った峻佑。果たして、どうなる?


今週も読んでいただきありがとうございました。

また来週、お会いしましょう。

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