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VOL.38:期末試験近づく

 ――翌日。

「うーん……頭が痛い……」

 ちひろとみちるは揃って無理やり酒を飲まされたことによる二日酔いで完全にダウンしていた。

 峻佑もかなりの量を飲まされたものの、2人に比べると回復が早く、どうにか動けていた。

「やれやれ……動けるのはオレだけか。酔いつぶれたみんなの看病をしないとな」

 部屋で寝込んでいるちひろとみちる、それと客間で寝ているさとみと一樹の看病のために峻佑は奔走していた。

「さとみさーん、大丈夫ですか……って、ええ!?」

 客間の扉を開けてさとみの様子を見ようとした峻佑は、開けた瞬間に絶句した。

「んー? なぁに〜?」

 そう答えたさとみの服装はなぜか半裸だった。どうやら酔って寝ているうちに脱いでしまったらしい。

「なぁに? じゃないですよ! 服を着てください、服!」

 峻佑は慌てて回れ右して客間の扉を閉めると、ドア越しに呼びかけた。

「あはは、ゴメンゴメン。わたしってどうも寝ているときに服を脱ぐクセがあるみたいなんだよね」

 さとみは笑いながら部屋から出てきて弁解したが、まだ半裸だった。

「だから服を着てください! 一応、オレも年頃の男子高校生なんで……」

 峻佑は顔を真っ赤にして、後半を少し口ごもりながらさとみに言った。

「ふ〜ん、峻佑くんも大きくなったねぇ……ふふっ」

 さとみは軽く笑うと、半裸を見ないように顔をそらしている峻佑の手を掴んで自分の胸に触らせた。

「うわっ! 何するんですかさとみさん! ってか、一応結婚してて人妻なんですよね!? 何やって……」

 峻佑は焦って手を振り払いながらさとみに文句を言いかけたのだが、途中でその表情が恐怖に歪んだ。

「どうしたの、峻佑くん?」

 さとみは首を傾げて峻佑にたずねたが、峻佑はただ震えながらさとみの後方を指差すだけだった。そこでさとみが首を傾げつつも振り向くと――

「姉さん……峻佑くんも、いったい何をやってるの? そんな格好で……」

 ――そこには、修羅と化したちひろとみちるがいた。いつもはちひろに比べると穏やかなみちるでさえもその表情は怒りによって引きつっている。

「いやあのこれは……」

 必死に言い訳を考えようとするさとみを尻目に、

「これはさとみさんがいきなり迫ってきたんだ! オレは何にもやましいことはない!」

 峻佑が早口でそう言い訳して逃亡を図る――が、逃げ道を見えない壁でふさがれ、峻佑はひっくり返った。

「やましいことがないなら逃げる必要ないよね? なんで逃げようとしたの?」

 みちるがゆっくりと峻佑に近づく。その目はいつものみちるではなかった。完全に怒りでトリップしている。

 2人の表情が怖いからだ、と峻佑は言いかけたが、それを言うとさらに事態が悪化しそうなので言わないでいた。

「何も言わないで。何を言っても言い訳にしか聞こえないから、問答無用でぶっ飛ばすよ♪」

 峻佑とさとみを挟み撃ちする形で囲んだ2人は、何かの魔法を使ったのか、手に光るものを構えてその包囲網を徐々に狭めてきた。

「さとみさん、どうにか逃げられないんですか、これ?」

 峻佑は最後の望みをかけてさとみに問いかけたが、

「2人のほうがはるかにチカラが強いからわたしじゃ逃げ出すこともできないわよ。昨日みたいに封じるためには使う前にこっちが使わないとならなかったし。峻佑くんこそずっと2人と一緒にいたんだから止められないの?」

 さとみはさとみで首を振って否定し、峻佑に望みをつなごうとする。

「ああなったらオレでも止められない――」

「――何をボソボソ内緒話してるの? お仕置きを受ける覚悟はできた? まあ、出来てないって言ってもやるけれど」

 いつのまにかちひろたちは峻佑たちの目の前にまで接近していて、ニヤリと笑うと、その手の魔法をぶっ放した。

「ぎゃあああ――――っ! オレは悪くねえ――っ!」

「きゃああ――――っ! ちひろ、みちる、ごめんってば――っ! もうやめてぇ――――!」

 ――その日、市原家の窓から激しい光が発せられるのが目撃され、近所の話題の的になったのは言うまでもない。




 週明けの月曜。期末試験が近づいてきたということで、峻佑たちは生徒会の緊急会議に呼び出された。

「――というわけで、中間試験の際の神楽一派の悪事を繰り返させないために、先生方から依頼を受けて我々生徒会で警備及びパトロールを実施することになった。これが各自のシフトだ。各々、気を引き締めて当たってほしい」

 一条はプリントを回しながら役員たちに告げた。

「なお、基本的に2人1組だが、1年生の市原君たちは加入してから間がなくて不慣れなこともあるし、何より姉妹と一緒にいたほうがやりやすいだろうと言うことでそこだけ3人1組にしてある。頑張ってくれ」

 全員にプリントが行き渡ったところで、一条は思い出したようにつけ加えた。

「警備か……神楽先輩たちはまたやるつもりなのかな?」

 峻佑は警備シフトが書かれたプリントを見ながらボソッとつぶやいた。

「前回捕まえたときに、次はないって警告したはずだけど、たぶん懲りてないと思う。あたしたちはまだ“アンチ生徒会”の全貌を知ってる訳じゃないから、どこに連中の仲間が潜んでるかもわからないし、連中の能力も未知数だから、もしかするとあたしらに捕まらない方法を研究しているかもしれない。とにかく、しっかり警備しましょ。――生徒会治安対策チームの威信にかけて。まあ、加入して1ヵ月のあたしらが言っても説得力に欠けるけど」

 峻佑のつぶやきに応えるように、ちひろが峻佑に話しかけた。

「あ、ああ。この表を見る限り、警備の主力(メイン)はオレたち3人だ。やっぱ会長をはじめとして先輩たちは忙しいみたいだから、オレたちが頑張らないとな」

 峻佑は自分たちに割り当てられたシフトの多さに、驚き戸惑いながらも、やる気を見せていた。

「主に警備に当たるのは朝の始業前、昼休み、放課後ね。このうち、放課後はほぼ毎日私たちの担当、朝も半分くらいは私たちね。そのぶん昼休みはゆっくりできるみたい。でも、あの先輩たちに立ち向かうには、私や姉さんの魔法が必須になるよね……」

 みちるが自分たちのシフトを確認しつつ、求められてるのは魔法なんだと推測し、少し落ち込んだ。

「そうかもしれないけど、グチっても始まらないわよ。文句は神楽先輩たちにぶつけましょ」

 すでに開き直れているのか、ちひろがみちるを励ました。

「姉さん……そうね。でも、相手は魔法使いじゃない一般人だし、どこまでやるかは考えないといけないよね……?」

 みちるは変なところでマジメなのか、相手を気遣っていた。

「悪人に情けは無用よ、みちる。特に神楽先輩みたいな学校の絶対悪には優しさなんかいらない。二度と悪事を働こうなんて思わないくらい叩きのめすわよ」

 ちひろはニヤリと笑って、気合いを入れるために片方の拳でもう片方の手を叩き、峻佑はそれを見て苦笑していた。



 翌朝、早めに登校した3人は、早速職員室周辺を中心にパトロールを始めた。期末試験は次の月曜からなので、残すところあと6日、会長によるとそろそろ問題を作り始めているらしい。

「会長が言ってたけど、基本的に試験問題のデータは先生方のパソコンにパスをかけて入れてあるみたいだから、安全だとは思う。でも、相手はあの神楽先輩だから100%の安心はない。まあ、職員室に出入りする人をチェックしていけばかなり防げるはずだよな」

 峻佑は職員室周辺の壁を丹念に調べて扉以外の侵入経路がないか調べながら、そうつぶやいた。

 と、予鈴が鳴り響き、HRに向かう教師たちが出てきた。

「これで今朝の見回りは終わりだな。2人とも、戻ろうか」

 峻佑がそう声をかけると、

「そうね。一応、裏をかかれないために、扉に不審人物チェッカーをかけとくわ」

 ちひろは辺りを見渡して、誰もいないのを確認すると、教職員以外の人物が通ったらすぐにわかる魔法をかけた。

「これで私たちが警備に当たってない時間でもしっかり守れるね」

 みちるが笑いながら話し、3人は教室に戻っていった。


 ――約30分ほど時間は戻って、‘アンチ生徒会’アジト。

「くっそー、生徒会がパトロールに当たってる上にあっちには例の魔法使い姉妹がいるんだよな。こんな状態でどうやっていつものアレをやるつもりだ、神楽?」

 観月がやられた、といった表情をして神楽にたずねた。アレとは無論、試験前に問題データを盗み出すことである。

「我々の目的は連中の目を欺き、職員室に潜入し試験問題のデータを盗み出すこと。いつもであれば誰もいなくなる時間を狙って職員室に侵入しパソコンをクラックしてデータを盗み出していたが、今回は生徒会が警備に当たる以上それは難しいだろう。そこでだ……」

 神楽には何か秘策があるらしく、ヒソヒソ話で作戦を伝えた。

「なるほど、それは行けるぞ。だけど、ここまで来るともう完全な悪役(ヒール)だよな、おれら」

 観月が苦笑しながら言うと、

「何を今さら。我々は退屈な学校を楽しくするために、悪役(ヒール)になるのを覚悟で‘アンチ生徒会’を結成したんじゃないか」

 神楽はそんな観月を諭すように改めて‘アンチ生徒会’の理念を語った。

「そうだったな。そんじゃま、パーッと派手にやらかしますか!」

 観月が気合いの一声を上げ、今回の作戦を実行する神楽と2人だけでアジトを出ていったのだった。

神楽と観月が取る作戦とは? 果たして、試験問題の行方は?

次回、生徒会治安対策チームvsアンチ生徒会、激突!

VOL.39:決戦(仮)


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